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セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター (2014):映画短評

セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター (2014)

2015年8月1日公開 110分

セバスチャン・サルガド/地球へのラブレター
(C) Sebastiao Salgado (C) Donata Wenders (C) Sara Rangel (C) Juliano Ribeiro Salgado

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4

なかざわひでゆき

強烈なイメージの数々が芸術家の心の軌跡を物語る

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 世界的な写真家セバスチャン・サルガドの半生と活動の歴史を、主にその作品および本人のモノローグを手がかりに紐解いていく。つまり、本編の半分くらいはスチール写真なわけだが、その神々しいまでに強烈なインパクトを持つイメージの数々に圧倒され、一気に引き込まれてしまう。
 世界中の貧困や紛争の現場を映し出してきた彼が、なぜ老いてエコロジーの世界へと作風を変えたのか。その背景には、貧しさと暴力と雄大な自然が混在する母国ブラジルへの強い想いがあるように感じる。
 製作者ヴェンダースの名前ばかり全面に出ているが、監督はサルガドの実子。これは親子の対話を通して、1人の芸術家の深い心の軌跡を辿った作品だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

写真から映画へと伸びる柔らかな肯定の光

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

ヴェンダースのドキュメンタリーは慎ましい。『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』も『Pina』も被写体への澄明な愛の眼差しがあり、現前する世界を丁重に引き受けようとする。本作でもまずサルガドの写真の凄さが提示され、そこから彼の人生、創作の裏側に叙述が美しく伸びていく。

結果、本作は重層的なロードムービーになった。サルガドの旅は戦争や虐殺などの報道写真から、エコロジカルなプロジェクト“GENESIS”(創世)へと旋回していくが、世界の過酷さを柔らかな肯定の光で包み、希望に繋げる試みは一貫している。

妻や共同監督を務めた長男ジュリアーノとの家族のドラマにも心揺さぶられる。静かだが猛烈な感動作だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
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