医療拒否の現実を問う手持ちカメラのプロテストソング

2013年12月23日 森 直人 鉄くず拾いの物語 ★★★★★ ★★★★★

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鉄くず拾いの物語

『ノー・マンズ・ランド』でボスニア紛争の狂気を98分に凝縮したタノヴィッチ監督が、今度は74分の重い一撃を放った。保険証を持っていないロマの貧しい夫婦が医療拒否に遭った顛末を描く内容だが、なんとモデルになった事件の当事者が本人役を演じている。

形式としてはダルデンヌ兄弟系のドキュドラマだが、映画表現の持つ力がフルに活かされた例だ。社会への怒りを事後的に訴えたい時、ドキュメンタリーなら「説明」にはなるが、こちらは生々しい感情を喚起して胸の奥に届く。

かつて従軍した夫は「戦争中の方がまだマシだった」とこぼす。庶民の日常生活を死の淵まで抑圧するシステムの軋み。むろん日本の我々にも他人事ではない。

森 直人

森 直人

略歴:映画評論家、ライター。1971年和歌山生まれ。著書に『シネマ・ガレージ~廃墟のなかの子供たち~』(フィルムアート社)、編著に『21世紀/シネマX』『シネ・アーティスト伝説』『日本発 映画ゼロ世代』(フィルムアート社)『ゼロ年代+の映画』(河出書房新社)ほか。「週刊文春」「朝日新聞」「キネマ旬報」「メンズノンノ」「Numero TOKYO 」「映画秘宝」などでも定期的に執筆中。※illustrated by トチハラユミ画伯。

近況:YouTubeチャンネル『活弁シネマ倶楽部』でMC担当中。9月19日より、原一男監督&島野千尋プロデューサー(『れいわ一揆』)の回を配信中。ほか、行定勲監督 feat.東紗友美さん(『窮鼠はチーズの夢を見る』)、足立紳監督(『喜劇 愛妻物語』)、荒木伸二監督 feat.SYOさん(『人数の町』)、城定秀夫監督&平井珠生さん(『アルプススタンドのはしの方』)、田中圭監督(『島にて』)、内藤瑛亮監督(『許された子どもたち』)、諏訪敦彦監督(『風の電話』)、想田和弘監督(『精神0』)、深田晃司監督(『本気のしるし』)、豊島圭介監督(『三島由起夫vs東大全共闘』)、入江悠監督(『AI崩壊』)、タナダユキ監督(『ロマンスドール』)、岩井澤健治監督&大橋裕之さん(『音楽』)、片山慎三監督(『岬の兄妹』)と『パラサイト 半地下の家族』を語り尽くす特番、森達也監督&河村光庸プロデューサー(『i 新聞記者ドキュメント』)、小林啓一監督(『殺さない彼と死なない彼女』)、竹内洋介監督(『種をまく人』)、渡辺紘文監督&雄司さん(『普通は走り出す』など大田原愚豚舎の世界)、瀬々敬久監督(『楽園』)、今泉力哉監督(『アイネクライネナハトムジーク』)、二ノ宮隆太郎監督(『お嬢ちゃん』)、大森立嗣監督(『タロウのバカ』)等々を配信中。アーカイブ動画は全ていつでも観れます。

サイト: https://morinao.blog.so-net.ne.jp/

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