トランプ政権下への危機感から製作!?人種差別の実態を暴いた『ブラック・クランズマン』

第91回アカデミー賞

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ブラック・クランズマン
アメリカの白人至上主義団体に潜入したアフリカ系アメリカ人警官の実話を基にした『ブラック・クランズマン』より - (C) 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

 今年のアカデミー賞で、作品賞、監督賞、助演男優賞など6部門にノミネートされたスパイク・リーの新作『ブラック・クランズマン』。1986年にインディー映画『シーズ・ガッタ・ハヴ・イット』で一躍脚光を浴びて以来、長年アメリカの映画界に大きな影響を与えてきたリーだが、なんと、オスカーで監督賞ノミネートというのは今回が初めて。新作は、作品的な評価だけでなく、低予算にもかかわらず全世界で約8,900万ドル(約97億9,000万円)を超える大ヒットを記録しており、リーにとって今後、『ドゥ・ザ・ライト・シング』(1989)と並ぶ代表作になるのは間違いない。(文・細谷佳史)

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ジョン・デヴィッド・ワシントン
黒人警官なのに電話だけで白人至上主義結社の懐に入るストールワース(右・ジョン・デヴィッド・ワシントン)。『ブラック・クランズマン』より - (C) 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

 本作は、1970年代に、アメリカ・コロラド州のコロラドスプリングスの警察署で、初めて黒人刑事として採用されたロン・ストールワースが、同僚のユダヤ系白人刑事フリップ・ジマーマンと組んで、クー・クラックス・クラン(略称KKK、白人至上主義者の秘密結社)の内部に潜入するという実話を基にしたドラマだ。黒人のストールワースは、電話だけでKKKメンバーとやり取りし、実際にメンバーたちと会うときは、白人のジマーマンがストールワースを名乗っておとり捜査する、という展開が面白い。そして映画の後半、ジマーマンふんするストールワースのKKK入団式のために、カリスマ的教祖デビッド・デュークがコロラドスプリングスにやってきたとき、ストールワース自身が警官としてデュークの護衛につくことになり、映画は一気にサスペンスフルなクライマックスに突入する。

アダム・ドライヴァー
ストールワースの代わりに実際に潜入捜査をするのは白人のジマーマン(右・アダム・ドライヴァー)。『ブラック・クランズマン』より - (C) 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

 人種差別というヘビーな題材を扱いながらも、時折ユーモアを感じさせるリーの円熟した語り口のおかげで、映画は娯楽作としても申し分ない。助演男優賞にノミネートされたアダム・ドライヴァーはもちろんだが、主人公のストールワースを演じたジョン・デヴィッド・ワシントンが抜群にいい。元NFL選手というユニークな経歴を持つワシントンが、名優デンゼル・ワシントンを父親に持つというプレッシャーをはねのけ、彼自身の個性を生かして役者としての才能を開花させたのは見事だ。今回主演男優賞にノミネートされなかったのは残念だが、今後の活躍が大いに期待出来る新人と言っていいだろう。また、トファー・グレイスがデューク役をやっていたり、人気テレビシリーズ「ニュー・アムステルダム(原題) / New Amsterdam」の主役ライアン・エッゴールドがKKKメンバーを演じていたりと、善人のイメージの俳優をあえて悪人に使う配役もさすがだ。

白人至上主義結社KKK
過激な白人至上主義者の秘密結社KKK。『ブラック・クランズマン』より - (C) 2018 FOCUS FEATURES LLC, ALL RIGHTS RESERVED.

 そして、本作を映画としてより際立ったものにしているのは、この作品が持つ時代精神だ。2017年にアメリカ・バージニア州シャーロッツビルで行われた白人至上主義者たちの集会で、それに反対するグループの女性が、白人至上主義の若者の車にはねられて殺される事件が起きた。本編の最後にその事件の映像が流れるのだが、アメリカでは、その事件の一周年に合わせて昨年、映画が公開された。これまで何度も人種差別をテーマに映画を作ってきたリーが、トランプ政権下の今、白人至上主義者たちが表舞台に出やすくなったことに強い危機感を感じて今作を製作したのは明らかだ。(数字は Box Office Mojo 調べ、1ドル110円計算)

映画『ブラック・クランズマン』予告編

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