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アカデミー賞監督賞は名匠と新たな才能が混在する多国籍な顔ぶれに!大本命はノーランだが…

第96回アカデミー賞

 クリストファー・ノーランマーティン・スコセッシヨルゴス・ランティモスといった実績と実力を兼ね備えた名匠たちの一方で、『落下の解剖学』のジュスティーヌ・トリエ、『関心領域』のジョナサン・グレイザーという新たな才能が混在する監督賞。スコセッシを除き、アメリカ以外の国の監督が顔を揃えた。前哨戦でも圧倒的な強さを見せており、興行的にも大成功を収めた『オッペンハイマー』のノーランが、2度目の同部門ノミネートで初の受賞となるかに関心が集まっている。スコセッシとランティモスの受賞の可能性もあるが、大穴で勢いのあるトリエとグレイザーのいずれかの受賞もあり得るか。(文・今祥枝)

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ジュスティーヌ・トリエ 『落下の解剖学』

ジュスティーヌ・トリエ
(C) 2023 L.F.P. - Les Films Pelleas / Les Films de Pierre / France 2 Cinema / Auvergne-Rhone-Alpes Cinema

 第76回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドールを受賞し、フランス映画としてアカデミー賞作品賞を含む全5部門にノミネートされた『落下の解剖学』。長編デビュー作『ソルフェリーノの戦い』から、続く『ヴィクトリア』『愛欲のセラピー』と、確かな手腕を発揮してきたトリエ監督だが、長編監督第4作にして、監督賞と脚本賞の候補になる快挙を成し遂げた。フランス語・英語・ドイツ語が混じる多言語映画にして、夫婦の複雑で微妙な関係性をミステリー仕立てで描く『落下の解剖学』は、早くも一つの到達点と言える完成度の高さで堂々の初ノミネートを果たした。

ジュスティーヌ・トリエ
1978年7月17日生まれ
フランス・フェカン出身
主な監督作
『愛欲のセラピー』(2019
『ヴィクトリア』(2016)
『ソルフェリーノの戦い』(2013)

マーティン・スコセッシ 『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』

マーティン・スコセッシ
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 スコセッシ組の顔であるレオナルド・ディカプリオロバート・デ・ニーロの黄金トリオが集結した『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』で、実に10度目のアカデミー賞監督賞にノミネートされた。2つの脚色賞を含む通算12個のノミネート数を誇るが、受賞を果たしたのは『ディパーテッド』のみ。アメリカ先住民連続殺人事件の実話に基づく『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』は、年齢を感じさせない野心と挑戦に満ちており、衰え知らずの創作意欲に圧倒される。

マーティン・スコセッシ
1942年11月17日生まれ
アメリカ・ニューヨーク州出身
主な監督作
アイリッシュマン』(2019)
沈黙 -サイレンス-』(2016)
ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)
アビエイター』(2004)

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クリストファー・ノーラン 『オッペンハイマー』

クリストファー・ノーラン
(C) Universal Pictures. All Rights Reserved.

 初の長編監督作『フォロウィング』で注目され、続く『メメント』で国際的に高い評価を得た。以後、『バットマン ビギンズ』に始まる3部作ほか、『インセプション』ではオリジナル脚本の大作を手がけ、批評と興行の双方で成功を収める独自の地位を築いている。原爆の父と呼ばれる科学者を描いた『オッペンハイマー』は、単なる伝記映画ではなく、最新の技術を駆使しながら複雑な主人公の内面を伝えて圧巻。『ダンケルク』に続く2度目の監督賞ノミネートで、初の受賞となる可能性は高いと見られている。

クリストファー・ノーラン
1970年7月30日生まれ
イギリス・ロンドン出身
主な監督作
TENET テネット』(2020)
『ダンケルク』(2017)
インターステラー』(2014)
ダークナイト ライジング』(2012)

ヨルゴス・ランティモス 『哀れなるものたち』

ヨルゴス・ランティモス
(C) 2024 20th Century Studios. All Rights Reserved.

 『籠の中の乙女』でアカデミー賞外国語映画賞にノミネートされたほか、国際的に高く評価されて一躍注目を浴びた。以後、初の英語作品『ロブスター』や『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』など、立て続けに有力な国際映画祭で受賞。『女王陛下のお気に入り』ではアカデミー賞9部門にノミネートされて、もはやオスカー常連の風格でハリウッドに独自の地位を築いている。映像化が困難と言われた原作を、独創的な世界観を構築して大胆に映像化した『哀れなるものたち』では、2度目の監督賞ノミネートを獲得して受賞をねらう。

ヨルゴス・ランティモス
1973年9月23日生まれ
ギリシャ・アテネ出身
主な監督作
『女王陛下のお気に入り』(2018)
『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)
『ロブスター』(2015)
『籠の中の乙女』(2009)

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ジョナサン・グレイザー 『関心領域』

ジョナサン・グレイザー
Photo by Stefania D'Alessandro/Getty Images

 1990年代に数多くのCMやミュージックビデオの監督を手掛け、1997年にはMTVのVMAで最優秀監督賞を受賞。長編監督映画デビュー作『セクシー・ビースト』で注目されたが、『記憶の棘』の発表後は再びミュージックビデオの世界へ。『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』を経て、アウシュビッツ強制収容所の隣で平和な日常を送る一家を描いた『関心領域』で国際的に称賛された。ドイツ語、ポーランド語、イディッシュ語が混在する独特の映像世界と痛烈なメッセージはインパクトがあり、アカデミー賞では初の監督賞と脚色賞候補となった。

ジョナサン・グレイザー
1965年3月26日生まれ
イギリス・ロンドン出身
主な監督作
『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(2013)
『記憶の棘』(2004)
『セクシー・ビースト』(2000)

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