略歴: アクションとスリラーが大好物のフリーライター。『DVD&ブルーレイでーた』『SCREEN』『Audition』『SPA!』等の雑誌や、ネット媒体、劇場パンフレット等でお仕事中。
近況: 『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』『探偵マーロウ』『ドラキュラ/デメテル号最期の航海』他の劇場パンフレットに寄稿。「シネマスクエア」誌にて、正門良規さんに映画とその音楽について話を聞く連載を開始。
米国人として初めてボリショイバレエ団への入団が認められたダンサーの実話に基づいており、『ブラック・スワン』のようなサイコ演出はない。それでもヒロインの凄まじい意志の強さは伝わってくる。
名門アカデミーでのレッスンは厳しく、お約束のようにライバルとの足の引っ張り合いもある。それより高い壁となるのが、ロシア人以外はボリショイに入れないという事実。乗り越える突破力は狂気というより執念に近い。
ひたすら芸を磨く自己鍛錬、舞台に立つことへの意欲や、それによって失うものにフォーカス。そういう意味ではサスペンスというより、壮絶なドラマだ。6月公開の邦画の話題作『国宝』と見比べるのも一興。
2015年時のN・ケイヴがシリアスなアーティストであったことは『~20,000デイズ・オン・アース』を観れば明らかだが、10~20代だった1980年前後から彼がブレていないことがよくわかる一作。
酒と麻薬で景気をつけ、荒々しく痛々しいパフォーマンスを披露するバンド。フロントマンであるケイヴの、のたうち回るようなアクション、それに応える演奏が、とにかく凄まじい。現在はアートに思考が結びついている彼だが、「考えるのではなく、体が勝手に動く」という若さの激情に圧倒される。
切り絵アニメ風の再現映像を除けば、ライブ映像もインタビューも貴重なフッテージで固められ、ファンにはそれだけで嬉しい。
ゲームと映画がリンクする点で、同じJ・ブラックも出演する2010年代版『ジュマンジ』シリーズを連想した。4月下旬の時点で2025年最大の全米ヒット作となっているが、それも納得のはじけ具合。
ゲーム版を踏まえたキューブ状のクリーチャーやアイテムあふれる異世界ビジュアルは、それだけでユーモラスだしアップテンポの展開にも目を見張る。想像力が世界を救うというテーマも生きた。
『ナポレオン・ダイナマイト』以降、やり過ぎたり、やらな過ぎたりでイマイチ煮え切らなかったヘス監督だが、J・ブラックと2度目のタッグとなるここで程よく振り切れた感。オタかつタフ気どりのキャラにふんするモモアの怪演もイイ。
1990年代にクィアフィルムの野心作を連打したG・アラキの、ある意味、分岐点。それまで描いてきた、尖った若者像を主人公たちに重ねつつ、悲痛なバックボーンをもえぐる。
幼少期に受けた性加害の記憶を消そうとした者と、記憶に殉じようとする者。かたやセックスから離れ、かたやセックスを貪る。彼らの闇は別のものだが、それがつながっている皮肉。心の中に迫るようなクローズアップが、彼らの痛みを如実に物語る。
性加害が取りざたされる現在の日本で、そのトラウマの深さを知るという意味ではタイムリー。ライドやスロウダイヴなど、アラキ作品ならではのインディーズロックの細やかな配置も光る。
ファンタジー風の作りだが、基本は上方ヒューマンドラマ。兄と妹の家族の絆を主軸にして、人情味のあるストーリーを展開させる。
クライマックスの結婚式は、わかっていても泣けるつくり。ベタを許容するだけの肉体性と個性を持つ鈴木亮平が、みごとに見せ場をさらってしまう。
冒頭の夢の場面でジェンダーうんぬんと言っていた少年が、後に家父長制を象徴するような主人公になっている。その意味を考えつつ観たりもしたが、最後は力技で押し切られたような。理屈はともかく、市井の人々のファンタジーに素直に涙したい。