轟 夕起夫

轟 夕起夫

略歴: 文筆稼業。1963年東京都生まれ。「キネマ旬報」「クイック・ジャパン」「DVD&動画配信でーた」「シネマスクエア」などで執筆中。近著(編著・執筆協力)に、『伝説の映画美術監督たち×種田陽平』(スペースシャワーブックス)、『寅さん語録』(ぴあ)、『冒険監督』(ぱる出版)など。

近況: またもやボチボチと。よろしくお願いいたします。

サイト: https://todorokiyukio.net

轟 夕起夫 さんの映画短評

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  • NO 選挙,NO LIFE
    “選挙ジャンキー”の、意想外のリアクションに胸熱くなる
    ★★★★★

    一篇の「映画」としてすこぶる面白い! カメラが捉えるのは密着対象、或る“かぶき者”とその眺めている世界、だ。長年、選挙取材を生業としている男――好きが高じて“選挙ジャンキー”になってしまったフリーランスライター・畠山理仁氏のヤバい熱情が、本作をぐいぐいと引っ張ってゆく。

    撮影も担当した前田亜紀監督の構成と編集(=宮島亜紀)が特に秀逸。密着人物ドキュメントというと『情熱大陸』を思い浮かべるが、あれは主人公がハッキリしている。こちらは、畠山氏の選挙取材の中で、(むろん演出など一切つけていないにもかかわらず)他者によって彼の「主役感」が揺らぐ瞬間があり、意想外のリアクションに胸熱くなるのであった。

  • マイマザーズアイズ
    『悪魔のはらわた』(73)みたいなブッ飛んだホラーコメディ
    ★★★★★

    自ら起こした交通事故で視力を失った母親と、半身不随となった娘。彼女に装着したコンタクトレンズ型デバイスを通して主観映像を転送、チェロ奏者であった二人は“一卵性母娘”となり、共依存のハーモニーを響かせ始める。その生体実験を司ったのはMADな父と息子で、ヘルタースケルター(しっちゃかめっちゃか)な展開にいっそう拍車をかけるのだ!

    これは本気なのか、冗談なのか。いや、真面目に観たらダメだ。かのアンディ・ウォーホル監修、監督ポール・モリセイの『悪魔のはらわた』(73)みたいなブッ飛んだホラーコメディの味わい。前作『写真の女』(20)もそうだったが“奇想の作り手”として、串田壮史監督は今後も期待大。

  • ヒッチコックの映画術
    ヒッチになりたいボーイズが作ったドキュメンタリー
    ★★★★

    全篇その声を模したナレーションからも分かるように、映画史家マーク・カズンズ先生による「ヒッチになりたいボーイズが作ったエッセ・クリティック」。堅苦しく学ぶのではなく作品をまさぐる分析のその“手つき”を楽しむべき。名著「定本 映画術 ヒッチコック/トリュフォー」(晶文社)を読了した人向けか。

    白眉だったのは、傑作『フレンジー』(72)の殺人場面からカメラが後ずさりしてゆく有名なトラッキング・ショットを取り上げ、続けて、友人の頼みで共同監督したTV用ドキュメンタリー『ナチスの強制収容所(Memory of the Camps)』(45)へと繋げるところ。現実の非人道的行為から逃げなかったヒッチ!

  • オオカミの家
    カルト教団作成の洗脳映画という設定がまたエグい
    ★★★★★

    一筆書きの夢魔的なストップモーション・アニメに折伏されてしまった。突飛な喩えなのを承知で記せばコレ、かのビートルズのヤバいミュジーク・コンクレート「レボリューション9」に感化されてチリの作家がこの映画を作った……としても信じる人がいるかも。「ヘルター・スケルター」の歌詞をハルマゲドンの予言と曲解し、妄想に駆られて凶行に及んだカルト指導者チャールズ・マンソンのように。

    そうしたヘンな勘違いをしないためにも、Netflixオリジナルドキュメンタリー『コロニア・ディグニダ:チリに隠された洗脳と拷問の楽園』(21)は本作のバックボーンを理解するための必見の教材。あわせて観て、打ちのめされたい。

  • コンフィデンシャル:国際共助捜査
    「そこまでやるかあ~!」が韓国映画の美点なり
    ★★★★

    韓国と北朝鮮の凸凹バディに今回FBI(米連邦捜査局)捜査官も加わった――荒唐無稽を倍加させた「続編」としてワザありの一篇だ。北のエリート特殊捜査員役、『愛の不時着』(19)のヒョンビンの“スター映画”にしてチーム戦を際立たせた、しっかりとしたプログラムピクチャーでもある。

    もはや韓国映画においては、行き届いた、至れり尽くせりのアクションシーンというのはスタンダード。それをいかに物語へ嵌め込んでみせるかが肝要なのだが、少々の「無理・無茶」は役者陣が補填してゆく(少女時代のイム・ユナも!)。韓国の名バイプレイヤー、ユ・ヘジンをスローモーションで捉え、笑いへと転化させる手法、ベタだが大好きです。

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