中山 治美

中山 治美

略歴: 茨城県出身。スポーツ紙記者を経てフリーの映画ジャーナリストに。全国商工新聞、月刊スカパー!(ぴあ)、時事通信などに執筆中。

近況: 映画祭で国内外を飛び回っているうちに”乗り鉄”であることに気づき、全国商工新聞で「乗りテツおはるの全国漫遊記」を連載。旅ブログ(ちょこっと映画)もぼちぼち書いてます。

サイト: https://tabisutekaisyu.amebaownd.com

中山 治美 さんの映画短評

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  • ザ・ファブル 殺さない殺し屋
    ”続編の方が良い映画”の仲間入り決定
    ★★★★

    ヒット作の続編には賛否が付き物だが、本作は間違いなく賛の方。岡田准一のアクションがウリの本作で、前作はほぼ屋内で展開されてダイナミックさに欠け、おまけに早い動きに映像が対応しきれておらず不完全燃焼極まりなかったが、その両方を見事に改善。しかもアクションは規模が敵わないにも関わらずハリウッドの模倣をしがちだが、今回の団地や建物の隙間という日本特有の住環境を生かしたバトルはまさに日本オリジナル。本作と「るろうに剣心」シリーズが同時期に生まれたことに、日本のエンタメ映画の新たな夜明けをも感じさせてくれる。物語も、原作の黒い部分をギリギリまで取り込んでおり、特に平手友梨奈の俳優としての覚悟を感じた。

  • ハチとパルマの物語
    ほぼパルマの物語
    ★★★★★

    タイトルにハチの名はあるが、ほぼ旧ソ連時代に実在した忠犬の話。現地タイトルも「パルマ」で、上映時間も中身も日本と若干異なるらしい。実際、惹句にある”意外なきっかけで結ばれるハチとパルマの絆”を期待すると描き込みが足りなく、取って付けた感は否めない。ただパルマの演技と当時を再現した美術や衣装は素晴らしく、現地でヒットしたのも頷ける。とりわけファミリー映画を謳いながら、美談に隠された”大人の事情”もさらりと描いてしまうあたりは日本も見習いたいところ。そこには”旧ソ連時代の話”を装いながら、常に政治や時代に翻弄され続けている人たちの批判が込められているように思え、本筋以上の感動すら覚えるのだ。

  • 時代が遡ることで、抗えない加齢とどう向き合うのか懸念していたが冒頭で邪念は吹き飛ばされた。佐藤健のアクションは俊敏さと凄味が増し、さらにまた新たなソードアクションの技を披露してくれるとは。そして物語は剣心の傷痕と不殺を誓った謎が明かされるが、そこに至る祇園祭のシーンが秀逸。巴が大義名分を掲げて殺戮を繰り返すことへの疑問の言葉を剣心に投げかけるのだが、それは武勇伝を持って語られることの多い歴史を捉え直す契機を与えてくれるだけでなく、戦が止まぬ現代社会へのメッセージも込められているのだろう。これを踏まえてシリーズを初めから見返してみたくなることを必至。類のない壮大なシリーズの完成だ。

  • 狼をさがして
    加害と向き合う
    ★★★★

    本作が韓国の監督によって制作されたことを重く受け止めるべきだろう。キム・ミレ監督は解雇された非正規社員がスーパーで泊まり込み闘争を行ったドキュメンタリー『外泊』で知られるが、労働問題を追っている中でこの連続企業爆破事件を知ったという。「狼」が攻撃対象とした日帝の侵略企業や植民者が国内外で行った強制労働や抑圧の事実。つまり我々の加害の歴史だ。しかし”不都合な真実”は歴史から抹消されがち。だがそこに向き合ってこなかったがために、藤元明緒監督『海辺の彼女たち』でも描かれているような外国人技能実習生とは名ばかりの労働の搾取が今も平然と行われているのではないか。”今”を読み解く為にも必見の力作である。

  • ゾッキ
    共同監督だけど漏れ出てしまう個性
    ★★★★

    余白の多い原作がクリエーターを刺激するのか。アニメ『音楽』に続いて大橋裕之漫画から快作の誕生だ。この手の企画は無難にオムニバスにするのが通例だが、短編を絶妙に絡ませた脚本と3監督のトーンを揃えて長編にまとめた新鮮さ。映画を知る3監督の知識と経験が生かされた実験的かつ挑戦的な企画だ。とはいえ監督が違えば個性が漏れ出ることもご存知。中でも「伴くん」で、牧田が使用済みパンツを偽装するシーンで見せる痴態は齊藤工監督ならでは。この牧田のように総じて”本人は真剣だけど側から見れば滑稽”というエピソードが連なる。3監督の人間を見つめる温かい目線が、はちゃめちゃなようでブレない本作の太い幹となっている。

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