見どころ:1987年に熊本県の南阿蘇で行われた伝説のロックイベント「BEAT CHILD」を追った音楽ドキュメンタリー。ザ・ブルーハーツを筆頭に当時の若者たちに大きな影響を与えたアーティストたちが続々登場し、豪雨にも負けずに白熱の演奏を繰り広げる姿を映し出す。監督を務めるのは、数々の映像作品を手掛けてきた佐藤輝。今では考えられないほどぜいたくなメンバーによる、日本版ウッドストックフェスティバルともいえる野外フェス誕生の瞬間に酔いしれる。
あらすじ:1987年8月22日、熊本県野外劇場アスペクタで、日本で初めてのオールナイトロックフェスが開催される。ザ・ブルーハーツ、RED WARRIORS、BOOWYなどのバンドをはじめ、尾崎豊や佐野元春ら豪華ミュージシャンたちが阿蘇に結集。彼らのステージを一目見ようと7万人を超える観客が会場に詰めかけるものの、夕方から急な豪雨に見舞われる。
本作の直撃世代は筆者を含むアラフォーのはず。例えば『あまちゃん』の「春子の部屋」が80年代アイドル歌謡の世界なのに対し、少年・宮藤官九郎の部屋を埋めていたであろう『宝島』系ロックの延長ライン。ただし『少年メリケンサック』が取り上げたアーリー80sパンクではなく、時代は1987年。バンドブームと呼ばれるメジャー化現象が起き、BOØWYやブルーハーツが『夜のヒットスタジオ』に出演した頃前後の縮図がここにある。
当時の野外フェスではクドカンの地元・宮城でのロックンロールオリンピックが有名。87年のライブアクトはBEATCHILDともカブっているのだが、後者は豪雨に見舞われた不運により伝説化した。台風に直撃された第一回フジロックの10年前。しかし参加した7万2千人の“熱”は凄まじく、映画の前半は「主役は観客だ」とばかりに26年前の若者達を映す。
会場に足を運ばずとも“熱”を共有していた身としては、レッド・ウォーリアーズのシャケと岡村靖幸が舞台裏で話す姿だけで感涙。だが追体験世代による編集版も観てみたいと思った。ノスタルジーと切れてこそ、この記録は「今」と接続される「歴史」になるはずである。
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