見どころ:初長編作『くじらのまち』が脚光を浴びた鶴岡慧子監督がメガホンを取り、喪失をテーマに描く青春ドラマ。お互いに大切な人を失った、21歳のヒロインと男子高校生が偶然出会い、心を通わせていく様子を静かに映し出す。『共喰い』などの木下美咲と『超能力研究部の3人』などの泉澤祐希が熱演。どこか懐かしい日本のたたずまいが残る風景を背景に紡がれる再生の物語に、心を揺さぶられる。
あらすじ:ある夏の晩、21歳の時子(木下美咲)はガールズバーの仕事を失い、目的もなく東京の街をさまよい歩く。ふと思い付きで長野行きの深夜バスに乗り込んだ彼女は、8歳まで父と住んでいた山間の田舎町を目指す。一方、時子のおぼろげな記憶に残る小さな町で成長した高校2年生の陽平(泉澤祐希)は、絵を描くことが好きで……。
田舎から都会へ出ていくことを夢見る少年と、都会から田舎へ舞い戻った女性が、奇妙な心の触れ合いを通して、お互いに愛する者を失った喪失感を癒す。
森の中に棲むとされる伝説のやまねこがストーリーの重要な鍵となっているのだが、ロケ地である信州の美しくも豊かな大自然がほどよい伝奇的ムードを醸し出し、どこか懐かしい日本の原風景を垣間見るような心地良い世界を作り上げていく。
また、変に田舎社会の閉塞感やら息苦しさやらを強調するのではなく、田舎だからこその時に面倒くさいけれど素朴で大らかな人々の営みをさらっと描いている点も好感が持てる。信州生まれの筆者だが、久しぶりに田舎へ帰りたくなった。
※数量や販売期間が限定されていたり、劇場によっては取扱が無い場合があります。