市民じゃなくて銀行にすべてを握られている資本主義って何なんだ?-マイケル・ムーア×是枝裕和監督対談

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是枝裕和と来日中のマイケル・ムーア

 鋭い視点でアメリカの経済問題に切り込む映画『キャピタリズム マネーは踊る』のマイケル・ムーア監督が、来日時に『誰も知らない』『空気人形』の是枝裕和監督と都内で対談したときの模様をご紹介する。二人はともにカンヌ映画祭で会っていて面識があり、「お久しぶりです」の言葉から始まり、話は映画のことや政治のことにまでおよんだ。

映画『キャピタリズム マネーは踊る』写真ギャラリー

■本当の民主主義って何だ

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マイケル・ムーア(以下M)『誰も知らない』は本当に力強い作品だし、物語も出演者も素晴らしかった。

是枝監督(以下K) ありがとうございます。監督の新作『キャピタリズム マネーは踊る』も拝見しましたよ。

M 本当に? ありがとう。

K  先日、ちゃんと自分でチケット買って見ました(笑)。平日の13:20の回を観て、年配の方が多かったですが、大変面白かったです。経済の話ももちろん面白かったけれど、それ以上に「民主主義ってこういうことなんだ」って非常に的確に語っていて、それが興味深かったです。結局、日本もアメリカも「ちゃんとした民主主義」というのは機能していないんだなって。

M 市民が選んでいるんじゃなく、銀行にすべてを握られている資本主義体制っていうのは、民主的じゃないからね。

K  僕もそうだけど、少しでも弱者寄りのことを言うとすぐに左翼だって言われてしまう(笑)。映画の中でシュワルツェネッガーが「銀行を救うなって言うヤツは社会主義者だ」って言うけれど、資本主義を批判するとすぐに「共産主義者だ」「社会主義者」だと言われてしまうのは「正しい民主主義」を経験していなくて、「ナショナリズム」か「コミュニズム」しか判断基準がないんじゃないかと。アメリカ人も日本人も、そういう価値観の中にしか生きてこなかった。単に経済のことを描いた映画じゃなくて、実は民主主義の映画なんだなって気付かされました。

M まさにそのとおり。それこそこの映画で言いたかったことだ。自分の願いとしては、今の「完全じゃない民主主義」をもっと良くしたいと思っているんだ。

■日本の憲法はアメリカから与えられた

K  映画の中で日本のことにも触れているじゃないですか。日本の憲法はアメリカから与えられて非常にリベラルなものではあるけれど、ナショナリストからすれば、その「与えられた」ってことが非常に癪(しゃく)なわけですよね。しかも社会的弱者とされる人たちは、実は日本の憲法が自分たちの武器になることさえ知らない。学校教育の中でもちゃんと教えられてきたことがなくて、非常にもったいないことになっているんです。

M アメリカの中には日本国憲法を起草するときに好まない人もいたらしいけれどね。ルーズベルトも共産主義者扱いされたというし。ただアメリカでは実現できてない国民保険も含めて、日本やドイツやイタリアでは国民の最低限度の生活が憲法で保障されているからね。

K ただ日本でも徐々にそれが壊れ始めているんです。

M そう、それが問題だ。ブッシュにおもねった保守的な日本の政権が医療や教育費を削除していくことで、アメリカと同じように犯罪率が増加し、就学率は低下していってしまう。貧しい人はもっと貧しくなってしまう。

K  日本でもまぁどちらも保守ではあるけれど、ようやく政権交代が実現したので、アメリカがオバマ大統領を選んだほどではないにせよ、何か変わるんじゃないか、という期待が一時的にせよ高まってきているんじゃないかな。でも今の鳩山政権が一番つまずいているのは日米の関係だと思います。監督は今回沖縄には?

M いや、残念ながら時間がなくて。基地の問題があるので、この目で見たかったんだけれどね。

■日本の映画製作費はキビしい?

M アメリカは世界中のあらゆる国に膨大な「大使館」を作って世界を握ろうとしているからね。ただ中国の資産を当てにしているところがあるから、「今返せ」って言われたら、アメリカは完全に破産だよね(笑)。ところで、今は何をしている状態なのかな?

K 今ちょうど新作(『空気人形』)の公開が終わって、来年は、ちょっと1年映画は休もうかと。

M その新作はどんな映画?

K ビニールでできた性欲処理の人形が心を持つっていうファンタジーです。

M (笑)それは面白い。ぜひ観てみたい。

K 英語字幕版もあるのでぜひ。実は、今考えている企画があるけれど、戦争中の日系ブラジル人移民の話で時間とお金がかなりかかりそうなので、来年はそのリサーチに当てるつもりなんです。

M それは楽しみだ。障害はお金の問題? 日本ではいくらくらいで映画を作っているの?

K もちろん作品によりますけれど、インディペンデントの映画は2~3億円くらいあれば多いほうです。

M それじゃスタッフも大変でしょう。アメリカではユニオン(組合)もあるから、たとえば『キャピタリズム マネーは踊る』では、カメラマンに最低でも週給で6千ドル(約54万円・1ドル90円計算)は払わないといけないんだ。編集担当は?

K 僕は編集を自分でやるので、ギャラは監督代に含まれちゃっているんです(笑)。

M それは僕もそうだ(笑)。フィクションは「はじめに書いて、その後撮って、編集する」けど、ドキュメンタリーは「撮ってから、書く」つまり編集が書くことと同じだからね。

K  すごくわかります。ぼくはドキュメンタリーから始めたので、フィクションを初めてやろうとしたときに「書いてから撮る」っていうのがぜんぜんなじめなかった。『誰も知らない』のときは、もちろん大枠は書いているけれど、撮ってから編集して、次の季節の分を書くという作業でしたし。撮ってから書いて、という作業の反復、つまりある意味ではドキュメンタリーの制作の流れに近づけることで、初めて納得して撮影ができたんです。

映画『キャピタリズム マネーは踊る』は全国にて公開中

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