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カンヌ映画祭コンペ出品の『ルノワール』に約6分間に及ぶスタンディングオベーション

第78回カンヌ国際映画祭

上映後の様子(リリー・フランキー、鈴木唯、早川千絵監督、石田ひかり)
上映後の様子(リリー・フランキー、鈴木唯、早川千絵監督、石田ひかり) - (C)Kazuko WAKAYAMA

 現在開催中の第78回カンヌ国際映画祭で最高賞「パルム・ドール」を競うコンペティション部門に選出された、早川千絵監督の映画『ルノワール』(6月20日公開)のワールドプレミア上映が現地時間17日に行われ、約6分間に及ぶスタンディングオベーションが巻き起こった。上映後に日本メディア向けの囲み取材が行われ、早川監督、キャストの鈴木唯石田ひかりリリー・フランキーが登壇し、初めての国際映画祭への参加となる12歳の鈴木は「俳優を始めてたった2年でカンヌに行けてしまい、びっくりしています」と喜んだ。

石田ひかりは和服で登壇!レッドカーペットの様子

 『ルノワール』は、1980年代後半の日本を舞台にした家族ドラマ。闘病中の父を抱え、仕事に追われる母と暮らす11歳の少女・フキが、大人の世界を垣間見ながらすごす夏を描く。主人公のフキを演じるのはオーディションで抜擢された鈴木唯。フキの母・詩子に石田ひかり、父・圭司にリリー・フランキーがふんする。

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 同映画祭のコンペティション部門に選出された唯一の日本映画である本作。ワールドプレミア上映が行われたパレ・デ・フェスティバル・エ・デ・コングレのシアター・リュミエールの約2,300席は満席。本編の終盤、エンドロールに差し掛かるやいなや場内から拍手と歓声が巻き起こり、約6分間のスタンディングオベーションが。監督、キャストが場内を出ると多くの海外のファンが集まり、サインを求める様子も見られた。

 第75回カンヌ国際映画祭では『PLAN 75』が「ある視点」部門に出品され、新人監督賞にあたるカメラドールのスペシャル・メンション(特別表彰)を受けた早川監督。公式上映後の日本メディア向けの囲み取材でタイトルについて質問が及ぶと、早川監督は「『PLAN 75』が割と作品の説明になるタイトルだったので、今回はそういうところから離れたいなと思い、作品の意味をタイトルに持たせたくなかったんです」と回答。また、「海外のメディアの取材を受けた中で、“この映画はいろいろなエピソードがあって、点がどんどん繋がっていき、全体像が見えてくる。そういったところが、印象派の絵画のようだ”と仰っていただいた。面白いなと感じましたね」と観客からの見解を伝えた。

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 撮影時、役柄と同様に11歳だった鈴木。鈴木は、「私は、俳優を始めてたった2年でカンヌに行けてしまい、びっくりしています。自分が想像していた以上に、観客の皆さんがワァーと反応してくれたり、“ユイ”って声を掛けてくれたり、(今までに自分が)見たことがないぐらいの数の人に映画を観てもらえて、すごく嬉しかったです」と答え、「経験したことがないことばかりでびっくりしたけど、あ~めっちゃくちゃ嬉しいなぁって身体の底から感じました」とはにかんだ。

 また、石田は「海外の映画祭に参加するのは35 年の俳優人生で初めての体験。海外の観客の映画を観てやるぞという意気込み、クレジットひとつひとつに拍手が起こることに驚きました。映画に対する真摯さと温かさを感じました」と感慨深げ。リリーも「この映画のすばらしさが前評判として観客に伝わっていたと思うが、真剣に映画を観ていることがひしひしと感じられました」と上映中の様子を述べ、「スタンディングオベーションをいただけるのは嬉しいのですが、いつも座持ちがしないなと思っていたんです。でも、唯ちゃんが居ると何分でもできるなって、楽しかったです」と茶目っ気たっぷりに振り返った。

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 鈴木の魅力について尋ねられると、石田は「唯ちゃんはまだ幼いので、深いところで本作のことを理解することはできない部分もあるでしょうが、ただただ自転車を漕ぐとかそこに存在するということができるというところがとっても素敵だと思います」と答え、リリーは「撮影当時11歳で、何かになりかけている、その一瞬の夏を監督が切り取ったからこその生々しさと彼女の演技力がすごくマッチしている」と語った。早川監督は、「子どもに演出をするのは難しいだろうなと覚悟を持って挑んだのですが、唯ちゃん何も言わなくても演技をしてくれて、監督としては非常に楽でした。どうやったらこんな風にできるんだろうなって思うことばかり。唯ちゃん様々でした」と惜しみない賛辞を贈った。

 レッドカーペットを歩く直前、鈴木は高揚感をおさえきれず飛び跳ねる、子供らしい一面も。その後、満面の笑顔で両手を振りながら歩き始めると、次々呼びかけるメディアの声に堂々と対応。声を掛けられる度に大きく手を上げて、ポーズを決めた。上映会場の入り口に続く階段を昇る際には、リリーにエスコートしてもらい、本編さながらの仲睦まじい様子も垣間見えた。

 過去、日本映画が最高賞にあたるパルム・ドールを受賞したのは、衣笠貞之助監督の『地獄門』(1953)、黒澤明監督の『影武者』(1980)、今村昌平の『楢山節考』(1983)と『うなぎ』(1997)、是枝裕和監督の『万引き家族』(2018年)の5作品。鈴木が主演女優賞に輝いた場合、かつて主演男優賞を獲得した『誰も知らない』(2004/是枝裕和監督)の柳楽優弥(当時14歳)より若く、最年少受賞、日本人初の主演女優賞となる。(石川友里恵)

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