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イギリスの黒い歴史と言われた「児童移民制度」における虐待や強制労働を、政府相手に告発した社会福祉士、マーガレット・ハンフリーズを直撃!

イギリスの黒い歴史と言われた「児童移民制度」における虐待や強制労働を、政府相手に告発した社会福祉士、マーガレット・ハンフリーズを直撃!
ジム・ローチ監督とマーガレット・ハンフリーズ

 イギリスの黒い歴史と言われ、世界中でもヘッドラインの記事として扱われてきた英国の「児童移民制度」。この制度を題材にし、英国からオーストラリアなどの連邦諸国に移住させられた孤児たちが過酷な環境で働かされた実態を告発した社会福祉士のマーガレット・ハンフリーズの実話を描いた新作『オレンジズ・アンド・サンシャイン(原題) / Oranges and Sunshine』について、ジム・ローチ監督とマーガレット・ハンフリーズが語った。

 同作は、イギリスのノッティンガムに住む社会福祉士として働くマーガレット・ハンフリーズ(エミリー・ワトソン)は、英国政府が1896年から1970年代にかけて、13万人もの貧困家庭や親の麻薬依存症、そしてアルコール中毒などを理由に親から引き離された児童や孤児が、福祉の名のもとにオーストラリアやニュージーランドの施設に送り込まれていた「児童移民制度」を告発し、後に英国の首相を正式に謝罪させていく過程を描いた衝撃の実話作品。監督はイギリスの巨匠ケン・ローチの息子、ジム・ローチがメガホンを取っている。

 マーガレット・ハンフリーズが執筆した「児童移民制度」での虐待を明らかにした本「からのゆりかご(邦題) / Empty Cradles」を出版したのが1994年だが、映画化されることにマーガレットは抵抗があったようだ。「確かにそれは心配だったわね。フィルムメイカーにアプローチされ、あなたの回想録を映画にしたいと言われても、(これまでの)歴史を扱った映画は失敗作がゴミのように山積みだもの。(過去の)犠牲者はそんな映画に苦しめられてきてもいるわ。したがって、この映画を誰が製作するのかが問題で、それだけは明確にわかっていたの」と語り、さらに「その製作する人物は、社会的な認識、良識、同情を持ち合わせ、それらの価値が彼ら(フィルムメイカーたち)が働く映画界での価値よりも重要であることを、まず理解していなければならないと思っていたわ」と述べた後、このほかに彼女が気にしていたこととして「わたしはこれまで、人生を通してひどい裏切られ方をした人々(過去に児童移民だった人々)と仕事をしてきたわ。だからわたしが映画にかかわれば、彼らはわたしが裏切ったと思わないようにもしなければいけなかった」と語った。さらにマーガレットは、ジム・ローチ監督がアプローチするまで、数多くのフィルムメイカーが彼女に映画化のオファーをしてきたそうだが、すべて断ってきたそうだ。

 オーストラリアやニュージーランドの施設に送り込まれた児童たちの多くは、ろくな教育を受けない環境下で育ったようだ。「僕らが会った児童移民を強いられた人々のほとんどが、わずかな教育か全く教育を受けていなかった。そのため、その多く児童たちは、大人になって手作業の仕事や肉体労働に従事している人が多かったんだ。そして、彼らのほとんどは独学で勉強した人ばかりで、しかも送られた里親のもとを離れてから、ようやく勉強できた人たちも結構居たんだよ……」と抑圧された環境で多くの児童が暮らしていたことをジム・ローチ監督が明かした。

 どのようにして、過去に児童移民だった人々たちの信頼を得て、マーガレットは彼らからプライベートな話を聞き出したのか。「わたしのように、25年間もソーシャルワーカーとして同じ人(過去に児童移民だった人)たちをお世話してきたようなケースは稀なの。現実では、そういうことはまずないわ。彼らとの仕事で何が重要かと言うと、信頼を得ながら(彼らを)理解していくこと、だから、わたしのこのプロジェクトは“チャイルド・マイグランツ・トラスト”と言うの。特にこのプロジェクトを始めた当初は、信頼を確立しなければ何も進まないとも思っていたわ。だから、わたしは実際にわたしの夫や子どもをイギリスに残してまで、オーストラリアに長い間滞在しなければいけなかったの。つまりそのジェスチャーは、わたしも一人でここ(オーストラリア)に来て、彼らとお互いに信頼しあえるまで、長い間ともに暮らすことになるということを彼ら(過去に児童移民だった人々)に示していたの」と相当な決意と覚悟で信頼を得た彼女は、イギリス政府と対立し、英国首相の謝罪までこぎつけていく。

 最後にジム・ローチ監督は、父親ケン・ローチ監督が携帯でテキストを送ってアドバイスをしてくれていたことを告げ、さらに父親もこの作品に満足しているとも話した。今回マーガレット・ハンフリーズとのインタビューを通して、その節々に強固な意志と繊細な内面を感じた。いまだ損害賠償を含めたいろいろな問題をイギリスは抱えているが、それよりも過去に児童移民だった人々の精神的なダメージは複雑で、大人になった児童移民の人たちは、その後の結婚生活、仕事仲間や友人関係にもその影響を及ぼしていた現実がある。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)


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