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議論を呼んだ話題作『戦争と一人の女』がニューヨークで上映、井上監督が思いを明かす!

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井上淳一監督
井上淳一監督

 現在ニューヨークのジャパン・ソサイエティで開催されているイベント、ジャパン・カッツで、新作『戦争と一人の女』が上映され、井上淳一監督が語った。

映画『戦争と一人の女』場面写真

 同作は、第2次世界大戦の末期から終戦後の東京を舞台にした作品で、戦争に絶望した作家野村(永瀬正敏)と、飲み屋を営んでいた元娼婦(江口のりこ)との体をむさぼるような同棲生活と、中国戦線で片腕を失い、妻との性交渉ができずに、見知らぬ女性にレイプをし始めていく帰還兵(村上淳)を交錯させながら、戦地を描かずに戦争中の人間の葛藤を描いた作品。作家坂口安吾の同名短編小説を映画化している。

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 坂口安吾が執筆した原作が出版された当時はGHQの検閲を受けていた。「全体の十分の一くらい削除され、そのため坂口安吾作品の中では比較的評価されていなかったんです。彼が同じ時間軸で男目線、女目線で書き、ここまで戦争をむき出しに書いている小説はこれだけだと思います」と原作の力強さに惹かれたようで、削除版の原作を先に読み、削除された部分を含めた「続戦争と一人の女」も後日読んだそうだ。

 坂口安吾はどの程度、この主人公野村に自分を投影していたのか。「原作も野村は坂口安吾自身なんです。実際、戦争中にこういう女性と暮らしていたらしいです。だから疑いようもなく、彼だと思っています。僕は坂口安吾は明るいニヒリズムを持った人だと思っていて、野村を演じた永瀬さんも、そのつもりで演じてくれていたと思います」。

 江口のりこのキャスティングについて「僕が監督が初めてで、オーディションで経験のない人たちを抜てきはできず、底上げの演出もできるかわかりませんでした。だから、名前のある女優さんで、濡れ場のシーンを経験した人や(ヌード)写真集を出したことのある人を探していたんです。でも、相当断られました。特に日本の場合は脱いでしまうと、CMに出られないなどいろいろな問題があるからです。最終的には、(出演している)柄本明さんが脚本を読んでくれて、彼の劇団に居る江口さんを推薦してくれました。彼女の、一見棒読みにも見えるハードボイルドなたたずまいが、女性として良かったんです。この映画は彼女に助けられました」と称賛した。

 最後に、今の日本映画で描かれる、わかりやすい涙や笑いや、テレビ番組から映画を製作するようなものには、できる限り加担したくない意思で映画を製作してきたいと、こだわりの言葉を残した。(取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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