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死体が描かれない戦争映画 第2次世界大戦中のウクライナを描いた映画とは?

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新作に自信をのぞかせたアモス・ギタイ監督
新作に自信をのぞかせたアモス・ギタイ監督

 映画『フリー・ゾーン ~明日が見える場所~』のイスラエル人監督アモス・ギタイが、新作『ツィリ(原題) / Tsili』について語った。

 本作の舞台は、第2次世界大戦中のウクライナ。収容所から逃亡してきた若いユダヤ人女性ツィリ(サラ・アドラー)は、近くの森に身を隠していたある日、同じく収容所から逃れてきた男マレクと出会い共に森で暮らし始める。しかし食料が足りず調達のために村へと向かったマレクが戻ってこなかったことで、ツィリはパレスチナに向かう避難民の後を追っていく。ホロコーストの生存者アハロン・アッペルフェルドの同名小説を映画化。当時の東欧のユダヤ人の間で話されていたイディッシュ語が映画内で使用されている。

 アッペルフェルドの原作について「彼が素晴らしい作家なのは、ホロコーストを政治的な目的として利用せず、起きた出来事として作品を執筆しているからだ。 よく政治家が国連で(政治活動のために)ホロコーストのスピーチを行うが、それはホロコーストの犠牲者に対して失礼だと思っていた。だがアッペルフェルドは、戦時下で(一度は)捕まった女性が、その後どうなったかを描きたかっただけなんだ」と語った。

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 実際にアッペルフェルドに会って「彼との会合の際に、僕はまず映画内で説明するようなことはしないと彼に伝えた。それは、真の文学(を伝える)には説明が必要ないと思ったからだ。そのため、観客の心情を(映画を通して)どのようにすれば揺さぶることができるかをあくまで追求した」と明かした。イディッシュ語の使用については「もちろん、イディッシュ語を話せる俳優を雇わなければいけなかった。実際にはそれはかなり困難で、なぜなら現在イディッシュ語は正統派(ユダヤ教)だけで話されているからだ。だが主要キャストのサラ・アドラー、メシ・オリンスキー、アダム・チェックマンらが見事にイディッシュ語を映画内に融合させた」と自信をのぞかせた。

 映画内の最後で当時の白黒のドキュメンタリー映像が使用されていることについて「原作者アッペルフェルドは、当時のホロコーストの悲惨さを体験してきた人々は、次々と亡くなってしまい、唯一残されたものがアート(映画)だと語っていたため、最後に収容所の映像を含めることにした」と明かした。

 映画は、銃撃や爆撃の音は聞こえても、死体が全く描かれない戦争を舞台にした作品として興味深い。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)

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