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2022年 第35回東京国際映画祭コンペティション部門15作品紹介

第35回東京国際映画祭

 2022年10月24日から11月2日までの10日間、日比谷・有楽町・銀座・丸の内地区で開催される東京国際映画祭。コンペティション部門の応募数は昨年を上回る1,695作品。その中から選ばれた3本の日本映画を含む15作品が、「東京グランプリ」と「観客賞」を目指して競い合う。審査委員長には、「ライオンキング」などの舞台演出のほか、『フリーダ』『アクロス・ザ・ユニバース』といった映画を監督するジュリー・テイモアが就任。芸術とエンターテインメントを極めた彼女をはじめとする審査委員たちが厳しい目で選ぶのはどの作品か!? (文:岩永めぐみ)

≫第35回東京国際映画祭公式サイト

第35回東京国際映画祭ポスター
コシノジュンコ監修の第35回東京国際映画祭ポスター -(C)Tokyo International Film Festival All Rights Reserved.
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<東京グランプリ/東京都知事賞><最優秀監督賞>ロドリゴ・ソロゴイェン<最優秀男優賞>ドゥニ・メノーシェ『ザ・ビースト』

製作国:スペイン、フランス
監督:ロドリゴ・ソロゴイェン
キャスト:ドゥニ・メノーシェマリナ・フォイス

【ストーリー】
フランス人カップルのアントワーヌとオルガはスペインのガリシア州にある小さな村に移住する。平穏な生活を始めた二人だったが、隣人のアンタ兄弟と衝突。村中に緊張感が走り、後に引けなくなってしまう。

【ここに注目】
短編『マドレ(原題) / Madre』がアカデミー賞短編実写映画賞にノミネートされ、その後を描いた『おもかげ』が日本でも公開されたスペインのロドリゴ・ソロゴイェン監督による心理スリラー。『ジュリアン』などのドゥニ・メノーシェと『私は確信する』などのマリナ・フォイスが、フランス人の中年カップルを演じる。ソロゴイェン監督によると、暴力や恐怖をテーマにし、一方にとって正義であることがもう一方にとってはそうではないことを掘り下げて描いたという。

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<観客賞>『窓辺にて』

製作国:日本
監督:今泉力哉
キャスト:稲垣吾郎中村ゆり

【ストーリー】
フリーライターの市川茂巳は、編集者である妻の紗衣が担当している有名小説家と浮気をしていることに気づいていたが、それを妻に言えずにいた。ある日、文学賞を受賞した高校生作家・久保留亜の小説の内容に引かれた市川は、久保に小説のモデルがいれば会わせてほしいと頼んでみる。

【ここに注目】
サッドティー』が東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門に、『愛がなんだ』が同映画祭コンペティション部門に選ばれた今泉力哉監督が描く大人の恋愛群像劇。主演に『半世界』や『ばるぼら』などの稲垣吾郎を迎え、妻の浮気を知って芽生えた感情に悩むフリーライターを軽やかに演じる。妻役の中村ゆりや高校生作家役の玉城ティナ、さらには若葉竜也志田未来といった共演陣との演技のアンサンブルに期待が高まる。

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<審査委員特別賞>『第三次世界大戦』

製作国:イラン
監督:ホウマン・セイエディ
キャスト:モーセン・タナバンデマーサ・ヘジャズィ

【ストーリー】
日雇い労働者のシャキブは、数年前の地震で妻と子供を失った悲しみを克服できずにいた。とある建設現場で働いていた彼は、そこで撮影中の第二次世界大戦を描く映画に、ヒトラー役を降板した俳優の代わりに出演することになる。

【ここに注目】
映画のヒトラー役に抜擢される日雇い労働者の姿を描いて、ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門の最優秀作品賞と最優秀男優賞を受賞したイランの風刺ドラマ。ホウマン・セイエディはイランでは監督としてだけでなく俳優として映画やテレビドラマに出演し、また映画学校を経営して後進を育てるなどマルチに活動しているという。主人公の労働者には、アスガー・ファルハディ監督作『英雄の証明』などに出演するモーセン・タナバンデがふんする。

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<最優秀女優賞>アリン・クッペンハイム『1976』

製作国:チリ、アルゼンチン、カタール
監督:マニュエラ・マルテッリ
キャスト:アリン・クッペンハイムニコラス・セプルベダ

【ストーリー】
1976年、独裁政権下のチリ。主婦のカルメンは改装中の海辺の別荘にやってくる。冬休みには家族も過ごすその家で、彼女は司祭がかくまう青年の面倒をみることになる。しかし、そのことが彼女の穏やかな暮らしを一変させる。

【ここに注目】
チリ出身のマニュエラ・マルテッリ監督の長編デビュー作で、カンヌ国際映画祭で新人監督作品を対象とするカメラドール部門に選出されたドラマ。女優としての活動歴もあり、短編映画を手掛けてきたマルテッリ監督。約16年間、独裁政権を敷いたアウグスト・ピノチェト大統領の時代を背景にした物語で、主人公のキャラクターは自殺した祖母をモデルにしているという。主人公である主婦を、『ナチュラルウーマン』などに出演しているアリン・クッペンハイムが演じる。

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<最優秀芸術貢献賞>『孔雀の嘆き』

製作国:スリランカ、イタリア
監督:サンジーワ・プシュパクマーラ
キャスト:アカランカ・プラバシュワーラサビータ・ペレラ

【ストーリー】
両親を亡くしたアミラは小さな村からコロンボに移り、建設現場で働きながら4人のきょうだいの面倒をみている。心臓病の妹にインドで手術を受けさせるため大金が必要になったアミラは、怪しい人物に誘われ、児童の人身売買組織にかかわってしまう。

【ここに注目】
児童の人身売買の闇に鋭く迫る社会派ドラマ。スリランカ出身のサンジーワ・プシュパクマーラ監督は、母国と韓国で映画を学び、本作が長編4作目。『バーニング・バード』は東京フィルメックスで審査員特別賞を受賞、昨年の東京国際映画祭アジアの未来部門では『ASU:日の出』が上映されている。

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『アシュカル』

製作国:チュニジア、フランス
監督:ユセフ・チェビ
キャスト:ファトマ・ウサイフィモハメド・フシン・グライヤ

【ストーリー】
チュニジアの首都チュニスの郊外。民主化運動が始まったころに工事が中断された建設現場で、焼死体が発見される。刑事のファトマとバタルが捜査を始めるが、さらに同様の死体が発見され、捜査は不可解な局面へと進んでいく。

【ここに注目】
謎に包まれた連続焼死体事件を追う刑事の姿を、チュニジアの民主化運動「ジャスミン革命」を背景に描き出すスリラー。監督は短編やドキュメンタリーなどを手掛けてきたチュニジア出身のユセフ・チェビ。タイトルの「アシュカル(Ashkal)」はアラビア語で形やパターンの意味で、形の多様さや豊富さを示唆しているという。なお、チェビ監督は本作の撮影に入る前、黒沢清監督の『CURE キュア』を観直したことを語っている。

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『エゴイスト』

製作国:日本
監督:松永大司
キャスト:鈴木亮平宮沢氷魚

【ストーリー】
ゲイであることを隠しながら思春期を過ごした浩輔は、東京に出てからは出版社で働きながら自由を謳歌(おうか)していた。ある日、浩輔はパーソナルトレーナーの龍太に出会う。龍太はシングルマザーの母を支えながら生きてきた。この出会いをきっかけに、二人は愛する喜びを知っていく。

【ここに注目】
大河ドラマ「西郷(せご)どん」などの鈴木亮平と連続テレビ小説「ちむどんどん」などの宮沢氷魚が、愛し合い葛藤する恋人同士を演じる恋愛ドラマ。原作はエッセイストでもある高山真の自伝的小説で、ジェンダーをテーマにしたドキュメンタリー『ピュ~ぴる』でデビューし、『トイレのピエタ』や『ハナレイ・ベイ』などを手掛けてきた松永大司監督が映画化した。中村優子柄本明阿川佐和子などが共演する。

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『ファビュラスな人たち』

製作国:イタリア
監督:ロベルタ・トーレ
キャスト:ポルポラ・マルカシャーノニコール・デ・レオ

【ストーリー】
トランスジェンダーのアントニアが亡くなり、彼女を恥ずかしく思った家族は彼女を男装の姿で埋葬する。とあるヴィラに暮らすアントニアの友人たちは、家族に否定されたアントニアのアイデンティティーを取り戻そうと立ち上がる。

【ここに注目】
死に際して自身のアイデンティティーを奪われるトランスジェンダーが少なくないという、これまで取り上げられることのなかった問題を提起するヒューマンドラマ。監督のロベルタ・トーレはドキュメンタリーや短編映画を始め、劇映画や舞台などで幅広く活動してきたイタリアの女性監督。東京国際映画祭では2002年に『アンジェラ』がコンペティション部門に選ばれ、主演のドナテッラ・フィノッキアーロに優秀女優賞をもたらした。

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『輝かしき灰』

輝かしき灰
『輝かしき灰』より

製作国:ベトナム、フランス、シンガポール
監督:ブイ・タク・チュエン
キャスト:レ・コン・ホアンバオ・ゴック・ゾリン

【ストーリー】
ベトナム南部の海沿いの村。火災で家屋が焼失する。そこにはたくさんの記憶や精神的な苦痛が潜んでいた。

【ここに注目】
ベネチア国際映画祭オリゾンティ部門に選出された『漂うがごとく』が、国際映画批評家連盟(FIPRESCI)賞を受賞したベトナム人監督ブイ・タク・チュエン。ベトナム映画が東京国際映画祭のコンペティション部門に選ばれたのは、本作が初だという。ベトナムの著名な作家グエン・ゴック・トゥの小説を原作とし、田舎に暮らす2組の家族を中心に描かれたドラマ。3人の女性とそれぞれのパートナーとの関係が映し出される。

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『カイマック』

製作国:北マケドニア、デンマーク、オランダ、クロアチア
監督:ミルチョ・マンチェフスキー
キャスト:サラ・クリモスカカムカ・トチノフスキ

【ストーリー】
若くして成功したエヴァとメトディの夫婦。エヴァはある計画を立て、知的障がいのある親戚と同居することにする。一方、二人の住まいのすぐそばにある、崩れかけた家に暮らすダンチェとカランバの中年夫婦。ダンチェはカランバがチーズ屋の女性と浮気していることを知る。

【ここに注目】
長編劇映画デビュー作『ビフォア・ザ・レイン』がベネチア国際映画祭の金獅子賞に輝き、アカデミー賞外国語映画賞(現・国際長編映画賞)にノミネートされたマケドニアのミルチョ・マンチェフスキー監督のコメディー。タイトルの「カイマック」はマケドニアやトルコなどで食される、クリームチーズに似た乳製品のこと。2組の夫婦の愛や幸福をテーマにしたストーリーに、人身売買や代理母出産、不倫、性の解放といった社会問題を絡めていくという。

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『ライフ』

製作国:カザフスタン
監督:エミール・バイガジン
キャスト:イェルケブラン・タシノフカリナ・クラムシナ

【ストーリー】
カザフスタン最大の都市アルマトイ。アルマンは物腰の柔らかい青年だが、アルコール依存症とうつを隠している。彼は記憶をデジタル化する企業のCEOだが、実は破産寸前で妊娠中の恋人に振り回されていた。ある日、会社でシステムの不具合が発生し、全てのデータが消えてしまう。

【ここに注目】
カザフスタンのエミール・バイガジン監督はデビュー作の『ハーモニー・レッスン』がベルリン国際映画祭のコンペティション部門で銀熊賞(芸術貢献賞)を受賞、前作の『ザ・リバー』は東京国際映画祭のコンペティション部門でも上映されている。長編5作目となる本作は、監督の特徴でもある圧倒的な映像美とともに、全てを失った主人公を通して人生を問う作品となっている。

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『マンティコア』

製作国:スペイン
監督:カルロス・ベルムト
キャスト:ナチョ・サンチェスゾーイ・ステイン

【ストーリー】
才能豊かなゲームデザイナーのジュリアンには暗い秘密があった。ダイアナと出会ったことで、彼の人生に幸せになれるチャンスが訪れる。

【ここに注目】
サンセバスチャン国際映画祭最優秀作品賞を受賞した『マジカル・ガール』が日本でも公開され、日本のサブカルチャーへの造詣の深さが話題となったスペインの鬼才、カルロス・ベルムト監督の衝撃作。主人公は、暗い衝動を抑え込もうと苦悩するゲームデザイナーの青年。想像上の生き物の名を題した本作についてベルムト監督は、「現代における愛と怪物の物語」と説明する。『SEVENTEEN/セブンティーン』でスペインのアカデミー賞、ゴヤ賞の新人男優賞部門にノミネートされたナチョ・サンチェスが主人公の青年を演じる。

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『山女』

製作国:日本、アメリカ
監督:福永壮志
キャスト:山田杏奈森山未來

【ストーリー】
18世紀後半の東北、冷害による飢饉(ききん)に苦しむ村。周りの人たちにさげすまれている少女・凛は、女神が住むと言い伝えられる早池峰山をよりどころとし、山で生きていくことを決意する。

【ここに注目】
リベリアの白い血』『アイヌモシリ』といった民族をテーマにした作品で、国際映画祭で高い評価を得ている福永壮志監督によるドラマ。舞台は江戸時代の東北。柳田國男の「遠野物語」に影響を受けたといい、岩手県の早池峰山に生きる少女を中心に、自然の脅威を前にした村社会の閉鎖性と集団性、さらには信仰の敬虔(けいけん)さと危うさを描き出す。過酷な境遇でたくましく生きる少女・凛を『ミスミソウ』などの山田杏奈、凛の父親を永瀬正敏、森に住む謎めいた山男を森山未來が演じる。

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『テルアビブ・ベイルート』

テルアビブ・ベイルート
『テルアビブ・ベイルート』より - (C)2021 MOBY DICK FILMS - LES FILMS DE LA CROISADE - TWENTY TWENTY VISION Filmproduktion - TEL AVIV BEIRUT AVC LTD - LA VOIE LACTEE

製作国:キプロス、フランス、ドイツ
監督:ミハル・ボガニム
キャスト:ザルファ・シウラートサラ・アドラー

【ストーリー】
2000年、イスラムシーア派組織ヒズボラが支配するレバノン。レバノン兵のヨッシは友人ファドの国外逃亡に協力する。数年後、ヨッシの妻ミリアムは行方のわからなくなった兵士である息子を捜すため、ファドと共にイスラエルに逃れたファドの娘ターニャに助けを求める。

【ここに注目】
1980年代から続くイスラエルとレバノンの紛争を背景に、国に翻弄された2人の女性の旅を描いたロードムービー。監督はイスラエル出身で、フランスで育った女性監督のミハル・ボガニム。ドキュメンタリーを主に手掛けてきたボガニム監督は、本作が長編劇映画2作目となる。チョルノービリ(チェルノブイリ)原子力発電所の事故を描いた前作は『失われた大地』というタイトルで東京国際映画祭 natural TIFF部門で上映され、『故郷よ』と改題されて劇場公開された。

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『This is What I Remember(英題)』

製作国:キルギス、日本、オランダ、フランス
監督:アクタン・アリム・クバト
キャスト:アクタン・アリム・クバト、ミルラン・アブディカリコフ

【ストーリー】
ロシアに出稼ぎに行ったまま消息を絶っていたアタンタイが、およそ20年ぶりにキルギスの故郷の村に戻る。アタンタイは記憶を完全に失っており、息子のクバトが彼を見つけて連れ帰ってきたのだが、アタンタイの行動は周囲の人を困惑させる。

【ここに注目】
キルギスの名匠、アクタン・アリム・クバト監督によるドラマ。ロカルノ国際映画祭コンペティション部門銀豹賞を受賞した『あの娘と自転車に乗って』や、ベルリン国際映画祭パノラマ部門国際アートシネマ連盟賞を獲得した『馬を放つ』などで知られるクバト監督。クバト監督が行方知れずになっていた主人公を、監督の実の息子で『あの娘と自転車に乗って』『旅立ちの汽笛』に出演しているミルラン・アブディカリコフが息子を演じている。

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