元赤軍の映画監督・足立正生が語る中東、3本のフィルムを通して

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パレスチナ解放のために戦った経験のある足立監督

 山形県山形市内で開催中の「山形国際ドキュメンタリー映画祭2015」では今年、混迷する中東情勢を見据えるべく特集上映「アラブをみる-ほどけゆく世界を生きるために」を実施している。9日には、日本赤軍元メンバーで、レバノンで逮捕拘留された過去を持つ足立正生監督の解説付きで、フランス独立直後からレバノン内戦までの変貌が分かる記録映画3本が上映された。

 冒頭、足立監督は「知っている方も多いかと思いますが、長い間“海外出張”していました」と笑いで場を和ませつつ、「1970年代半ばから2000年まで、その大半をレバノンで過ごしました。ですから(内戦を描いた)2本は、わたしの気持ちをかき乱すものであり、同時に『(現地の惨状は)こんなものじゃないな』と思う、二面性を持って観ざるを得ない内容でした」と複雑な心境を覗かせた。

 まず上映されたのは、メキシコに移住した映画館を営む一家が、里帰りした際の旅日記『レバノン1949』(1949)。当時“中東のパリ”と称されていたベイルートの美しい街並みや、貴重なレバノン国会内部も映し出されている。足立監督により「登場する一家は、マロン派(レバノン国内のカトリック系キリスト教徒)の裕福な家族」との補足がなされた。

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 また『レバノン内戦』(1976)はパレスチナ解放人民戦線とレバノンの民族派組織ムラビトゥーン製作で、『ベイルート1982 PLO撤退からパレスティナ大虐殺まで』(1982)は、ドキュメンタリストの故・布川徹郎監督の布川プロダクションの作品。成り立ちは違えど、多数の市民が犠牲となった戦争の悲惨さが伝わってくる。

 レバノン戦争は1975年に起こったキリスト教勢力とPLO(パレスチナ解放機構)を中心とした民族・宗教対立だが、足立監督は「劇中で主張しているコメントも、事実もそうですが、レバノンの政治経済の実権を握っていたマロン派の一部がイスラエルと手を組んで事件を起こした。それが続いている」など、記録映画の背景を解説した。

 内戦は1990年に終結したが「抜本的な問題は何も解決されていない。(民族・宗派の)おしくらまんじゅうのような状態が続いている。この間、第1次湾岸戦争やイラク戦争など、もともと欧米諸国が描いていた中東地図実現の進行が続いています。さらに米国、あるいは欧州・湾岸諸国が育てた“飼い犬”ISIS(イスラム国)が、アラブ一帯を焼け野原にしようとしている」と指摘した。

 解説はさらに熱を帯び「戦争を企み、実行する者がいて、そこから問題が派生しているという普遍的なテーマが映画に描かれていたと思います。従ってレバノンで始まった戦争が方々へ拡大して今に至っている。何も変わっていないのは、米国とイスラエルと欧米諸国の野望。さらにそこに与した湾岸諸国の、アラブの大義であるパレスチナ解放を捨てた姿。これらが一体となって、戦争を起こしては利用していると思います」と持論を展開した。

 最後に「今回の映画祭では、アラブの新しい作家による映画を上映します。彼らが描いているであろう、問題の構図、実情はどうなのか? 今日の3本の古いフィルムから問題の片りんを見られたと思うので、それを踏まえてわたしも特集上映で映画を観て、新しいテーマを勉強したいと思います」と語り、集まった観客に、この機会に特集上映を観賞することを呼びかけていた。(取材・文:中山治美)

山形国際ドキュメンタリー映画祭2015は10月15日まで開催

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