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「ウルトラマン」鬼才の原点は『市民ケーン』?実相寺マジックを撮り続けた名カメラマンが証言

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鬼才の原点となった作品とは? 貴重な作品群がブルーレイ化される実相寺昭雄監督
鬼才の原点となった作品とは? 貴重な作品群がブルーレイ化される実相寺昭雄監督

 2016年に没後10年となる「ウルトラマン」シリーズの実相寺昭雄監督が、1970年代前半に日本アート・シアター・ギルド(以下、ATG)で発表した『無常』『曼陀羅』『哥(うた)』『あさき夢みし』がブルーレイボックス化、テレシネ監修を務めたカメラマンの中堀正夫が思い出を語った。

 実相寺監督の芸術的な作品を多数取り扱ったATG作品を、撮影担当の稲垣涌三、中堀正夫監修によってテレシネした今回のブルーレイ。モノクロ作品では、「黒」のつや・深みや階調にこだわって調整を行ったという中堀は、「実相寺監督は黒にこだわっていた人で、画面も暗ければ暗いほどいいと言うんです。ラッシュ(確認試写)でも、自分では良かったなぁなんて思っていても、後ろから『まぶしくて見えねえや!』と(監督の)声だけが聞こえてきて。何を言っているんだと思うんだけど、完成した作品を観ると『やっぱりすげえよなぁ』と思ってしまう」と笑う。

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実相寺監督の思い出を語る中堀正夫

 独特のカメラアングルや移動ショットなど、奇妙な世界観を生み出す演出スタイルは「実相寺マジック」とも呼ばれた。しかし中堀は、「実相寺さんは、俺らスタッフには何も教えてくれなかった。これ(こんな映画)を参考にしろとも言わない。わからなくてもお前らが勝手に見つけろという人だった」と振り返る。

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 だが実相寺監督の死後、遺品の整理をしていて気づいたことがあったという。「書棚に背表紙が茶色いVHSがたくさん並んでいたんだけど、その中に1本だけ、新しい白いラベルがあった。そこには筆文字で(オーソン・ウェルズ監督の名作)『市民ケーン』と書いてある。ほかのVHSと違って、これだけは明らかに何回か張り直されていた」という中堀は、「何かあるなと思って、DVDを買ってきてとことん研究してみたら、いろいろなことが隠されていたんですよ。当然、他の映画も観ていたとは思うんだけど、おそらく困ったときに観ていたのは『市民ケーン』だったんじゃないか」と推察。「もしそうだとしたら、これを参考にしろと教えてくれればとても楽だったんだけどなぁ」と笑みを浮かべた。

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「atg 実相寺昭雄ブルーレイBOX」

 ボックスには映像特典として、137分に及ぶ『哥(うた)』の長尺版も収録。これは生前、保存用としてデジタル化されていた素材が奇跡的に発掘されたものだという。「彼は資料を異常に残している人だった」と切り出した中堀は、「小学校の音楽会から、映画のパンフレットまで。全く捨てていない。普通は写真のNGカットだって捨てるものなのに、彼はみんな残しているくらいですから」とその背景を説明した。

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 さらに「人は年をとると丸くなるというけど、彼は死ぬまでやりたい放題だった」と振り返った中堀。生前、実相寺監督から「お前と最後に一本だけ撮りたい作品があるんだ」と伝えられたことがあったという。「お前はカメラのセッティングだけやって。後はいなくなってもいいし、どこかで待っていてくれてもいいと。俺が『何それ?』と聞いたら、作品のタイトルは『誰も観なくて結構です』だと。ホントすごい人だよね」と懐かしそうな顔をみせた。(取材・文:壬生智裕)

「atg 実相寺昭雄ブルーレイBOX」は12月16日より発売(1万9,200円+税)

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