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『この世界の片隅に』韓国全土で公開へ 片渕監督「『知っていたつもりの戦争』に違和感を持ってほしい」

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『この世界の片隅に』の片渕須直監督が現地でインタビューに応じた

 韓国で開催された第19回プチョン国際アニメーション映画祭で、戦時中に広島・呉にいた一人の少女の姿を描いた映画『この世界の片隅に』が韓国初上映された。現地の観客と上映を鑑賞した片渕須直監督は上映後のインタビューに応じると、「映画の上映中は固唾をのんだり、笑うところでは笑う。日本と同じ反応でした」と明かしつつ、各人が観念的に捉える「イメージの中での戦争」に違和感を与えることができればと語る。その真意について聞いた。

【画像】映画祭での大賞受賞を喜ぶ片渕監督

 映画を観た観客からの評価は上々であったが、韓国ならではの違和感を与えた部分もあったという。10月22日の映画祭での上映後のQ&Aで片渕監督は、観客から「天皇が敗戦を告げるラジオ放送の後に韓国の国旗である太極旗が掲げられる意味」について問われる場面があった。その際に片渕監督は「当時の韓国と日本の間には不幸な歴史があった。彼女の日常は日々の家事に追われることであり、世の中の色んなことを知らないまま来てしまっていた。それでも彼女が料理していたお米の一部は韓半島から来たものであると気づくことができたはずだと思います。だから、彼女はいろいろなものを失う中で、いつか本来自分がそうだったはずの『ふつうの人』であることから次第に戦争に加担する気持ちを高めてしまっていた。頭から冷水を浴びせられたように、そんな自分に気がついて彼女は泣いたのだと思います」と説明していた。

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 今回の映画祭参加を振り返り、「事前にはある程度不安に思わないわけでもなかったのだけれど、何よりたくさんの観客や映画祭スタッフが自分たちを支持してくれるのに直に接することができた」という片渕監督。そして「この映画は、世界のほんの小さな片隅に住む一人の人物から見える範囲の世界が映し出されているに過ぎないもの」と話す。

 「その外側に広がる大きな世界は実に捉えどころがない。だからこそ、一個人の体験をまず自分のものとしていただけるとよいのだけれど。そこで、これまで映画やドラマなどで知っていたつもりになっていた『戦争』のイメージにまず違和感を抱き、そして、次第に世界そのものに今までとは違う視点からの視野を広げ直していってもらえるといいのだけど。日本の観客に対しては、そうしたつもりでこの映画を作りました」。

 「戦争が始まったときも、日本から遠く離れた場所で行われているわけで実感がない。幼なじみの水原哲がすずさんに『おまえは戦争から遠いところにいてくれ』と話すシーンがある。しなしながら、すずさんは空襲で大切なものを失い、いつしか平穏でいられなくなっていたことに気づいて泣いているんです」。

 また『この世界の片隅に』が、11月16日より韓国全土で劇場公開されることも決まった。「そこでどのように受け止められるのか、期待していきたいです」と片渕監督は述べる。

 「1996年のザグレブ国際アニメーション映画祭では映画の上映中に空襲警報が鳴ったそうです。今回の国際アニメーション映画祭が開かれたプチョンも、実は南北軍事境界線の中にある板門店まではすぐの距離です。そんなところであってもアニメーションは世界中からの人々を招き入れ、発信している。すずさんがそうあろうとした『ふつうに生きること』そのものであるアニメーションの力を信じたいです」。

 なお『この世界の片隅に』は、同映画祭の長編コンペ部門に出品されており、見事に最高賞である大賞を受賞した。受賞のあいさつで片渕監督は「長編アニメーションを作るということは大変なことで心が折れそうになります。22年間のつきあいがある韓国のDRムービーが一番最後には助けてくれると信じていました。彼らとこの受賞の喜びを分かち合いたい」と製作に参加した韓国のアニメーションスタジオとの信頼に言及し、受賞の弁としていた。(取材・文:土田真樹)

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