廣木隆一監督、故郷・福島に向き合い続ける作品づくり

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福島の元気が出るような映画をつくりたいと廣木隆一監督

 廣木隆一監督が東日本大震災と福島第一原発事故をテーマに描いた映画『彼女の人生は間違いじゃない』(2017)が第20回ウディネ・ファーイースト映画祭で現地時間21日、イタリア初上映された。翌日開催されたトークイベントで廣木監督は、故郷・福島の現状に作品を通して向き合い続ける心境を語った。

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 同作は福島の仮設住宅に暮らす区役所勤務のみゆきが、週末はそこから抜け出すように高速バス乗り、渋谷でデリバリーヘルス(以下、デリヘル)のアルバイトをするという二重生活を描きつつ、いまだに先の見えない被災者のやり場のない感情に迫った人間ドラマだ。廣木監督が2015年に発表した同名小説が原作だが、映画化に際しては「他人の目線で映画を捉えたい」と脚本を加藤正人に託している。  

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 廣木監督が震災後の故郷の風景を作品に収めたのは、『RIVER』(2011)、『海辺の町で』(2013)、『さよなら歌舞伎町』(2015)に続いて4作目。廣木監督は「震災後に福島を舞台にした映画がつくられていて自分もどこかで撮りたいと思ってました。よく聞かれるのはドキュメンタリーを考えなかったのか? と。僕はやはりフィクションの監督なので、絶対ドラマで撮りたかった。それこそデリヘルというのもドラマだからこそ描ける」と本作を手がけた理由を語った。

ファンからのサインに気さくに応じる廣木隆一監督

 被災者が性産業に関わるという設定は廣木監督の前作を含めた震災を題材にした作品で多く見られ、それが特に被災者の賛否を呼ぶ部分でもある。今回、デリヘル嬢にした理由について問われると、廣木監督は「実際に取材をさせてもらって、(被災者以外にも)性産業に流れている女性が多いと聞いています。でもお金が目的ではなく、なぜかはわからない。おそらく大きく何かが欠けてしまい、そのときに自分自身じゃないものに置き換えてみたくなるのかなと感じました」と説明した。

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 またイタリアの女性から「被害に遭った故郷と向き合い続けるのは決して楽ではないと思うが、どのような気持ちで撮影をし、どういうメッセージを伝えたいのでしょうか?」という質問もあった。

 これに対して廣木監督は「確かに実際に現地へ行くと映像で観るよりショックが大きくて、でもこの風景を画(え)で残したいと必死に撮影し、『RIVER』にも入れました。ただそれは今起こっていることを撮ったというだけで、観客が観ててどう思うかまでは考えていなかった」と、複雑だった胸の内を明かした。

 続けて「でも、ここに立って、どんな気持ちがしたか? という記憶は記録することができる。それが映画が持っている一つの武器だと思う。いつか風景も変わって、綺麗になると思うが、その映画を観たときに当時の記憶を思い出させてくれる」と作品に込めた思いを語った。

 なお同作は、第27回日本映画プロフェッショナル大賞で廣木監督が監督賞、主演の瀧内公美が新人女優賞を受賞し、26日に東京・テアトル新宿で授賞式が行われる。また廣木監督は27日に『ママレード・ボーイ』が公開し、今秋には橋本愛門脇麦成田凌出演『ここは退屈迎えに来て』の公開も控えており、さらに新作も準備中だという。

 さすがは日本で1、2位を争う多忙な監督らしいスケジュールだが、今後も福島を撮り続けるのか? と問われると「福島にこだわるというよりは、他にテーマがあれば撮ると思う。ただ福島に関しては、今は気持ち的に、元気が出るような映画をつくりたいと思っています」と語り、福島を撮り続けることはライフワークとなりそうだ。(取材・文:中山治美)

第20回ウディネ・ファーイースト映画祭は28日まで開催。

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