鬼才フランソワ・オゾン、双子モチーフのサスペンスで新境地「誰もが二面性を持っている」

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双子の男性に翻弄されていくクロエ(マリーヌ・ヴァクト) - (C) 2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU

 『スイミング・プール』『8人の女たち』などのフランソワ・オゾン監督が手掛けた心理サスペンス『2重螺旋の恋人』(公開中)。サスペンスの名手として知られるオゾン監督が双子と精神分析をテーマに、新境地に挑んだ意欲作だ。

映画『2重螺旋の恋人』予告編【動画】

 同じ容姿を持ちながら性格は正反対の双子の精神科分析医との禁断の関係に陥っていく女性の姿を、鮮烈な映像美で描き出した本作。その重要なモチーフとなる双子の存在についてオゾン監督は「私がかねてから双子に関心を持っていたのは、彼らが自然の生み出した驚異であり、傑作だと思うからです」と語る。そんななか小説家ジョイス・キャロル・オーツの短編が着想を与えてくれたのだという。「彼女はオーツのほかにロザモンド・スミスというペンネームを持っていて、異なる作風の作品を手掛けています。2つのアイデンティティーを使い分けている彼女が双子についての小説を書いていたことを知って、このテーマを展開するのにふさわしいと思ったんです」。

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 本作のヒロインは原因不明の腹痛に悩む25歳のパリジェンヌ、クロエ(マリーヌ・ヴァクト)。婦人科医に紹介された精神分析医ポール(ジェレミー・レニエ)を訪ね、診察を重ねるうちに二人は恋人関係に発展するが、あるとき彼女はポールとそっくりなルイ(ジェレミー・レニエ)を見かけ、彼も同じく精神分析医だと知る。そして新たにルイの診察を受けるうちにクロエは、ポールとは似て非なるルイとも肉体関係を持つようになっていく……。

『2重螺旋の恋人』- (C) 2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU

 双子の男性の間で揺れ動く女性を主人公にすえる本作だが、この“双子”には比喩的なニュアンスも込められており、彼女が自分の中に隠し持っていた二面性を発見する物語でもある。「このスリラーは、彼女が自身のミステリーを解く物語でもあるんです。精神分析を通じて最終的に彼女は自身の問題の原因を発見するわけですが、彼女の持っている二面性というのは普遍的なものなのだと思います。誰しも心と身体が離れているような両面性を抱えているわけですね」。

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『2重螺旋の恋人』- (C) 2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU

 そんな複雑な内面を抱えるヒロインのクロエを演じたのは、『17歳』(2013)で売春に手を染める名門高校に通う女子学生を演じて、その年のカンヌ国際映画祭で注目を浴びたマリーヌ・ヴァクト。2014年に子どもを出産し、母親になった彼女についてオゾン監督は「当時、彼女自身がミステリアスな少女であり、『17歳』では彼女のそのままの姿を撮るというドキュメンタリー的な要素もあったのですが、この作品が成功を収めたことで、彼女は本物の女優になったのだと思います。今回、彼女は自らで役を作り上げてくれました」と称賛する。

 その彼女の演技が、オゾン監督の過去作に登場したヒロインとは異なる女性像を描くことにも成功させたようだ。「これまでの私の映画とは異なり、クロエというヒロインが狂気の間際にいるということが特徴ですね。私が描くヒロインは、さまざまな探索を経てポジティブに何かを学んで終わるということが多いのですが、彼女は苦しんで、自分のアイデンティティーを探し求めている。そして最後に、衝撃的な事実を知るわけですが、その意味合いはあいまいなままです」。彼女の姿には、オゾン監督がこれまでも取り組んできたセクシュアリティーの問題やアイデンティティーについての問いかけが新たな形で表れているといえるだろう。

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『2重螺旋の恋人』- (C) 2017 - MANDARIN PRODUCTION - FOZ - MARS FILMS - PLAYTIME - FRANCE 2 CINEMA - SCOPE PICTURES / JEAN-CLAUDE MOIREAU

 また本作では、美術が物語に対して重要な役割を果たす。鏡や反射、シンメトリーを重視した構図など、あらゆる視覚的な要素が人物の内面を表しており、1920年代~30年代のアール・デコのシンメトリックな建築物などが印象的に登場する。クロエが学芸員として働く美術館の展示物も映画のために作ったものだという。「美術館で働く設定も原作にはなかったのですが、展示物はすべてクロエの無意識を反映しているものを作りました。双子が自然の驚異的な創造物であるという認識で、造形的な要素を脚色として加えたんです」。

 そのような小説からの脚色について、オゾン監督はこう語る。「脚色というのは『ちょっとした裏切り』なのだと思います。小説はそのままでは映画にはできない。よい映画になる小説は傑作でないことが多くて、ヒッチコックが典型なように、無名なミステリーがおもしろいサスペンス映画になるわけです」。本作では、双子をめぐる短編小説に視覚的な要素やヒロインの内面描写などが加えられ、巧みに謎が随所に仕掛けられている。「私はすべてを説明しきらない映画が好きなんです。作品は開かれた扉であり、観客はその中へ入っていき、そして観終わった後も頭の中で映画は続いていくものですからね」。

フランソワ・オゾン監督

 次回作もすでに撮影が終わって編集に入っているというオゾン監督。本作と打って変わって、フランスで実際に起きた事件を題材に、登場人物はほとんどが男性という作品になるという。作品ごとに作風を大きく変化させるオゾン監督だが、新作『2重螺旋の恋人』と共に次回作でも、その新境地に期待ができそうだ。(編集部・大内啓輔)

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