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キャリア65年!石橋蓮司が見る令和の映画界

主演を務めた石橋蓮司
主演を務めた石橋蓮司

 近年は名バイプレーヤーとして活躍する俳優・石橋蓮司が、2002年公開の映画『弘兼憲史シネマ劇場「黄昏流星群」星のレストラン』以来、およそ18年ぶりの主演作となる新作映画『一度も撃ってません』や、自身が感じる時代の変化について語った。

『一度も撃ってません』完成報告会の様子【動画】

 石橋とは『団地』『半世界』などいくつもの作品でタッグを組んできた阪本順治監督がメガホンをとった本作は、伝説の殺し屋ではないかとウワサされる落ち目の作家が、思わぬ事件に巻き込まれるさまを描き出すハードボイルドコメディー。

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 映画で主演を務めるのはおよそ18年ぶりとなるが、「気負いは全然ないですね」と語る石橋。「1970年代のB級映画のような面白さを出せればいいかなと思ってやりました。ただ、新宿のゴールデン街も我々が感じていた雰囲気と変わってきているんで、その雰囲気をかもし出すのはものすごく難しいだろうなと思っていました。そこにいる人が入れ替わってしまえば、街の風景も全然変わってしまいますからね。だからロケ地も転々として。昔の雰囲気があるところを探して撮ったという感じですね」と振り返る。

一度も撃ってません
(C) 2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

 大楠道代岸部一徳桃井かおり柄本明ら石橋と同時代を生きた名優たちとの共演が話題となっている。石橋も含め、年を重ねてさらにチャーミングさが増してきた彼らの魅力が本作に色濃く反映されている。

 「年をとっても生き残っていかなきゃいけないんでね。俺たちだってまだ、表現できる人間であるんだ、ということを“装って”いかないといけないから。そのために我々の世代の本質をどう伝えるか、我々の世代の駄目さ加減をいかに出せるかということをいつも考えているんですよ」と切り出した石橋は、「だから(桃井)かおりやみんなと会うと、『お前みたいにはなりたくない』と言って。そうやってお互いをいじめ合いながら、競いあいながらやっています」と信頼関係の強さをのぞかせる。

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 映画デビューは1955年の『ふろたき大将』。あれから65年近くたち、78歳となった今でも映画、ドラマなどで活躍し続けている現役だ。「自分に飽きないようにするのが大変ですよね」という石橋は、「やろうと思えば、パッと台本を読んだだけであまり研究もせずにできてしまうかもしれないし、存在だけでやれることもあるかもしれない。でもそうなったら終わりだなと思っている。石橋蓮司が石橋蓮司との戦いをはじめて、違う役を作りあげようとしていくんです。そうするためにはそれだけのエネルギーがいるんだよね。でもそれに飽きちゃったら駄目だろうなと思ってやっていますよ」と力強く語る。

 その言葉通り、変質者的な役から厳格な役まで、長いキャリアの中でその役柄は幅広い。「例えば三池(崇史)なんかは、俺をおもちゃだと思っているからね。だから飽きることがないんですよ。俺は、三池から連絡が来たら、『何をやるんですか』と聞く前にやることになっちゃっているからね。そういう意味での信頼関係があるんですよ」と笑みを浮かべる。

一度も撃ってません
(C) 2019「一度も撃ってません」フィルムパートナーズ

 それは、本作のメガホンをとる阪本監督も同じだ。「俺の言葉をうれしいと思うか、嫌だと思うかわからないけど、阪本は還暦を過ぎて、すごく円熟してきたと思う。変に力みがなく、スッとやることが、非常に映画的になってきた」と目を細める。「阪本とはちょっと前に、一緒に映画の罪を犯してから、ずっと罪を犯している共犯者なわけなんだけど。犯罪の仕方が上手になったっていうかね。今はそういう感じだね。よく言うんだけど、『あんたの本を読むと、あまり面白くないのに、映画になるとビックリする』と。つまり映画というものをよく知っているということなんだろうね」

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 そんな石橋にとって、令和を迎えた日本の映画界はどのように映っているのだろうか。「若い人たちは映画もたくさん観ているし、よく勉強しているなと思いますよ」と語る石橋は、「(原田)芳雄や俺たちは、それまでの日本映画の基本的な作り方や定番を、少しずつ崩して。新しい映画をやってきたつもりだったんだけど、それがいつの間にか定番になってきて。若い人にとっては、俺たちがやってきたことはすでに古典になっているんだろうなと。俺は若い子たちの夢の持ち方というのがわからないんですけど、俺たちの時代にはパソコンもスマホもなかったから。生々しいものがあったというか、直接肉体と肉体でやりとりした時代だったなと思っているんです。だから今の時代なんかでは、俺は置き去りになっているんだなと思って生きている」とコメント。

 さらに、「例えば一つの映画を作るのでも、現場で大ディスカッションが行われていましたし、低予算の映画だったら、じゃ寝るのをやめて撮ろうじゃないかと、そういうのが平気で通じていた時代ですから。そういう意味では、今回の作品は寝かせない、朝は早い、メシは食わせないという、懐かしのアートシアターの映画ですよ。ただ今の俺はあの時と体力が違うから。根性はあるけど、足がヨタヨタしちゃっているんだから」と付け加え、笑ってみせた。(取材・文:壬生智裕)

映画『一度も撃ってません』は7月3日より全国公開

石橋蓮司、撮影移動中に職質⁉︎ 撮影での拳銃を「持ってきてないだろうな?」映画『一度も撃ってません』完成報告会 » 動画の詳細
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