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『ムカデ人間』監督、再び強烈な一撃!新作『オナニア・クラブ』が暴く人の残虐性

快楽のために超ド級の不幸を演出してくハンナ
快楽のために超ド級の不幸を演出してくハンナ

 人間の肛門と口をつなげる狂気の実験を描いた『ムカデ人間』で、一大センセーションを巻き起こした映画監督トム・シックスの新作『ジ・オナニア・クラブ(原題) / The Onania Club』。スマッシュヒットとなった『ムカデ人間』の監督の新作でありながら、いまだに日本公開が決まっていない過激で挑戦的な本作を観る機会が得られた。

【映像】『ジ・オナニア・クラブ(原題)』ティーザー映像

 本作の主人公は、ロサンゼルスで平和に暮らす女性ハンナ。良き夫と子供に恵まれ、他人からすれば、何不自由なく生きているように見える彼女はある日、教会の懺悔室を訪れ、司祭に罪を告白する。実は彼女には、他人の不幸や悲惨な出来事に、抑えきれないほどの興奮を覚えてしまう性癖があった。難病に苦しむ夫に興奮を覚え、親密な友人から夫が事故で取り返しのつかない重傷を負ったと相談されると、トイレに駆け込み自慰にふける……。そんな彼女が出会ったのが、やはり他人の不幸で快楽を得る女性たちの集まり "オナニアクラブ "だった。

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オナニア・クラブの面々。まさに超ハードコアな「セックス・アンド・ザ・シティ」

 『ムカデ人間』で、凶悪でありながら、好奇心を刺激してやまない過激なアイデアを次々と映像化してみせたシックス監督は、本作においても、遠慮なく観客のモラルに挑戦している。本作のティーザー予告には、"オナニアクラブ "のメンバーが9.11の映像を観ながら自慰にふける場面が登場するが、本編では、より想像を絶する方法で快楽を味わおうとする彼女たちの姿が描かれる。かつて「過激で政治的に不適切な映画製作に生命を懸けている」と語ったシックス監督の信念は少しも揺るいでおらず、ユーモアにあふれながらも常軌を逸した描写には、本気で怒りを覚える観客もいるだろう。

 しかしシックス監督は、クレイジーで不道徳な表現を愛しながらも、常に世界に疑問を投げかけてきた。過激すぎる暴力描写で一部の国では上映禁止となった『ムカデ人間2』では、前作に対する「観客が映画を模倣する」という批判に強烈なアンサーを突きつけ、500人の囚人の口と肛門をつなげる『ムカデ人間3』は、アメリカの産獄複合体(刑務所産業複合体)(民間の刑務所が受刑者を安価な労働力とすること)を揶揄(やゆ)したブラックコメディーでもあったとシネマトゥデイのインタビューで語っている。

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本気で怒る観客もいるかもしれない挑戦的な一本

 そして『ジ・オナニア・クラブ(原題)』だ。刺激的な不幸で極上の快楽を得るオナニアクラブのメンバーたちと、日々刺激的なニュースを発信し続けるメディア、そして、それをスマホで検索し続ける人々のどこに違いがあるというのか。その欲求の行きつく先は、彼女たちがもたらす信じられない悲劇ではないのか。シックス監督は、誰のなかにも存在し得る残虐性に目を向けさせようとしているかのようにも思える。

 こんな描写が許されるのか? と不安になる瞬間が次々に登場する本作。しかしシックス監督は、ポリティカル・コレクトネス(政治的・社会的に公正・中立な言葉や表現を使用すること)が叫ばれる世の中のおいて、万人に受け入れられる「安全な映画」を作ることを真っ向から否定。本作に寄せた声明でも「偉大な芸術(映画)とは、刺激的で、挑戦的で、危険なものでなければならない」とつづっている。『ジ・オナニア・クラブ(原題)』は、そんなシックス監督の思いがストレートにぶつけられた有言実行の一本と言えるだろう。他人の不幸を求め続けたオナニアクラブがたどる運命を目にした観客はどんな反応を見せるのか。日本でも劇場で観られる日が来ることを楽しみに待ちたい。(編集部・入倉功一)

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