「日本沈没2020」極限状況下で生まれる希望 湯浅政明監督が普通の家族を描いた理由

「日本沈没2020」より主人公の武藤家と近所に住むパーソナルトレーナー(最右)
「日本沈没2020」より主人公の武藤家と近所に住むパーソナルトレーナー(最右)

 地殻変動によって日本列島が沈没する……1973年に発行され爆発的なブームを巻き起こした小松左京のベストセラー小説「日本沈没」が、ストーリーを一新しNetflixオリジナルアニメシリーズ「日本沈没2020」として全世界で配信される。本作を手がけたアニメーション監督・湯浅政明が、作品の舞台裏、世界情勢が揺れる今、本作を届ける思いについて語った。

【動画】『日本沈没2020』予告編

主人公を普通の家族に変更

 2度の映画化(1973、2006)をはじめ、テレビドラマ(1974)やコミックなどメディアを越えて人々に衝撃を与えてきた「日本沈没」。ビッグタイトル初のアニメ化の打診を受けた湯浅監督は、「すごいスペクタクルだし、アニメにするのは厳しいと思いました。ただし僕は初めてのことに挑戦するのが好きで、あの物語をどう表現できるのかトライしたいという思いも沸きました。まず考えたのは、派手さより物語のつながりで感情を盛りあげていく作品。最初の段階から原作のままでなく、日常的な家族に視点を振って構わないというお話だったので、柔軟に考えながら新しい方向性を探っていく感じでした」と振り返る。

[PR]

 精力的に長編アニメを発表する一方で、Netflixオリジナルアニメシリーズ「DEVILMAN crybaby」(2018)やNHKの「映像研には手を出すな!」(2020)などアニメシリーズも手がけている湯浅監督。「日本沈没2020」でチャレンジしたのは“普通のお芝居”だったという。「人々が懸命に生きようとする姿を、日常描写を積み重ねて描こうと思いました。だからお芝居もリアルな立ち居振る舞いにこだわったんです」と湯浅監督。しかし、それは思いのほかハードルが高い作業でもあった。「どちらかというと、リアル志向の作品をあまりやってこなかったせいか、自然な芝居を表現するのに手間取りました。それに派手な身振りやしゃべり方をしない“普通の立ち居振る舞い”は、絵で表現するのが難しいんです。そんな芝居を、シリーズを通し統一するのが大変でした」

母親を外国人に設定した理由

日本沈没2020
ヒロインの武藤歩と母

 本作の主人公は、陸上に打ち込む高校生の武藤歩(声:上田麗奈)とその家族。「歩は特別に優等生でもいい子でもない普通の女の子で、弟と両親がいる仲のいい4人家族。それぞれ個性はありますが、家族という一つの塊としての部分を重視しました」と語る湯浅監督は、母親を外国人に設定した。「ナショナリズムの作品にしたくない、という思いからです。日本で生まれ育った人と、たまたまこの国で暮らしていた人では災害に対して感じることが違うはず。そんな人たちが家族として、また周囲の人々と関わる中で何を感じ、どう行動するのかを考えました。家族の一員として、国民として、何に守られ、何に縛られ、そして何によって前向きになれるのか。どんなに近い存在でも完全には分かり合えない家族という集団が、災害を通じ繋がっていく姿を描きたかったんです」

日本沈没2020
地震発生後の様子

 日本列島の沈没という未曾有のスペクタクルを描く本作。湯浅監督は激しい崩壊スペクタクルより、間接的な描写で恐怖を高めている。「突然ふりかかるのが災害の怖さ。ドラマ仕立てに予兆させるのではなく、あえて突発的なタイミングで何かが起きたり、惨劇もあまり見せないよう心がけました。目の当たりにしないことで不安にさせようということです」。あっけなく人々が死にゆく姿も、たびたび挿入された。「ほんのわずかな行動が生死を分ける。人の生死もあまり盛り上げたくはなかった」と語る湯浅監督は、命のもろさや儚さと同時に、誰かが手を差し伸べることで希望が繋がれるさまも繰り返し描いている。

[PR]

体感から共感に変化

湯浅政明
湯浅政明監督

 日本全土が大災害に見舞われる本作。図らずも、コロナ禍での配信となった。本作について「危機的な状況の中でどうあるべきか、どうありたいかを考えてもらうきっかけになってくれればと思った」と語る湯浅監督。「コロナに直面し、身勝手な人が多く出てくるだろうと思ったら、たくさんの人々が協調し、我慢しながら頑張っていた。こうあるべきだと感じてもらう作品を目指したのですが、実際には皆がそれを実践していたんです。コロナ禍を経験したことで感じてもらうのではなく、共感してもらえるアニメに変わるかもしれません」

 パーソナルな視点に徹することで、これまでのパニックものとはひと味違う臨場感やリアリティーを持った「日本沈没2020」。未曾有の災害に直面したキャラクターひとりひとりの行動に、自分だったらどうするか自問しながらのめり込んでしまう人も多いだろう。「難しそうな題材だからこそ、逆に面白そうだと感じた」と語る湯浅監督。アニメーションらしい自由な動きや表現にこだわってきた湯浅監督が、あえて“リアル”と“普通”を武器に挑んだ新境地となっている。(神武団四郎)

Netflixオリジナルシリーズ「日本沈没2020」(全10話)は7月9日より全世界独占配信

» 動画の詳細
  • mixiチェック
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • ツイート
  • シェア

楽天市場

[PR]