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シャイア・ラブーフ、ブレイクからの逮捕…壮絶なキャリア振り返り

“スピルバーグの秘蔵っ子”として知られるシャイア・ラブーフ
“スピルバーグの秘蔵っ子”として知られるシャイア・ラブーフ - John Phillips / Getty Images

 俳優にとって、30代というのは脂が乗り切った時期であり、最も活躍が期待される年齢である。現代ハリウッドには、演技に定評のある30代俳優が数多く存在しているが、中でも注目したいのがシャイア・ラブーフ(34)だ。

【画像】『トランスフォーマー』から13年…現在のシャイア・ラブーフ

 自身の経験を基に脚本を執筆した新作『ハニーボーイ』(公開中)で、脚本家としての才能を開花させたシャイアは、世間では“お騒がせ俳優”として認知されているかもしれない。しかし、数々の映画で魅せてきた情熱的な演技は唯一無二のものがある。プライベートでの度重なる逮捕劇や奇行などが取り沙汰されてしまっているが、彼こそ実力派俳優と呼ぶに相応しい俳優なのだ。ここでは、シャイアがこれまで歩んできた、壮絶なキャリアを振り返る。

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家族を支えるため、俳優の道へ

 シャイアは1986年6月11日、米カリフォルニア州・ロサンゼルスでフランス系の父とユダヤ系の母の間に生まれた。幼い頃に両親が離婚したことから、彼の生活は決して恵まれたものとは言えなかった。ある日、シャイアは友人がテレビで活躍している姿を見て、自身もテレビ出演を目指すようになる。子供ながらにスタンダップコメディアンとして活動し、近所の公衆電話から、あらゆるエージェントにアプローチをかけ続けた。シャイアは、自らのマネージャーであると名乗り電話をかけていたといい、その心意気と根性に惹かれたエージェントによって見いだされ、見事ハリウッドへの切符を手にした。そして「X-ファイル」「ER 緊急救命室」といった人気ドラマへのゲスト出演後、ディズニー・チャンネルで放映されたコメディードラマ「おとぼけスティーブンス一家」(2000~2003)で主演を務め、お茶の間の人気者となった。

 俳優として順調な滑り出しを見せたシャイアだったが、私生活での苦労は絶えなかった。撮影現場への送迎とマネージャーを兼任していた父には前科があり、度々シャイアに虐待まがいの指導を繰り返していた。父が撮影現場で問題を起こすこともあったが、シャイアは父の生活を支えるために、日々俳優としての仕事をこなしていった。ディズニー映画『穴/HOLES』(2003)、ウィル・スミスと共演した『アイ,ロボット』(2004)、DCコミックス原作の『コンスタンティン』(2005)などへの出演で、めきめきと頭角を現していったシャイアは、後に巨匠スティーヴン・スピルバーグ製作の超大作映画で主演を務めることになる。

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スピルバーグの秘蔵っ子として大ブレイク

『トランスフォーマー』
『トランスフォーマー』で一気にブレイク! - Paramount Pictures / Photofest / ゲッティ イメージズ

 2007年、シャイアはスピルバーグ製作、マイケル・ベイ監督による超大作『トランスフォーマー』に主人公サム・ウィトウィッキー役で出演。もともとスピルバーグは、娘と共にシャイア出演のドラマ「おとぼけスティーブンス一家」を視聴しており、早くから彼の才能に惚れ込んでいたのだ。『トランスフォーマー』後も、シャイアは『ディスタービア』(2007)、『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008)、『イーグル・アイ』(2008)といったドリームワークス作品に続々と出演。次第に“スピルバーグの秘蔵っ子”として知られるようになり、ハリウッド期待の若手俳優として脚光を浴びた。

 順風満帆な俳優生活を送るシャイアだったが、プライベートでは大きな問題を抱えていた。ハリウッドで熱視線を浴び始めた2007年のこと。シカゴのドラッグストアに不法侵入したとして逮捕されてしまう。翌年には2度にわたって逮捕され、アルコール問題を抱えていることが明らかになる。2008年の2度目の逮捕時は、『トランスフォーマー/リベンジ』で共演したイザベル・ルーカスが同乗していた車を運転中に事故を起こしてしまい、車は横転。シャイアは左手の指を2本失ってしまう大怪我を負った。

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キャリア最盛期にPTSDと診断

 プライベートでの騒動が大きく取り沙汰されながらも、俳優としての仕事は意外にも絶えることはなかった。これは、シャイアは問題行動の多い人間であるも、その実力は計り知れないものがあるという証拠なのだ。2009年のオムニバス映画『ニューヨーク、アイラブユー』ではアンソニー・ミンゲラ脚本、シェカール・カプール監督による一編に出演し、『ウォール・ストリート』(2010)ではオリヴァー・ストーン、『欲望のバージニア』(2012)ではジョン・ヒルコート、『ランナウェイ/逃亡者』(2012)ではロバート・レッドフォード、『ニンフォマニアック』(2013)ではラース・フォン・トリアーといった名匠たちとタッグを組み、名実ともにハリウッドNo.1の実力派俳優として名を上げていく。

 そんなシャイアのキャリア最盛期に、再びアルコールという悪魔が彼を襲う。2017年、シャイアは『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』の撮影中に、公共の場で泥酔し、乱暴な態度を取ったとして逮捕されてしまう。この逮捕が原因で、新作の公開が危ぶまれる事態にまで発展し、共演者でダウン症の俳優ザック・ゴッツァーゲンから「僕のチャンスを台無しにされた」との言葉を投げかけられてしまう。シャイアは自らの行動を改めるため、リハビリ施設に入所。そこで、心的外傷後ストレス障害=PTSDと診断されている。

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リハビリ治療がきっかけで名作誕生

『ハニーボーイ』
『ハニーボーイ』でのシャイア。出演に加えて脚本も担当した - (c) 2019 HONEY BOY, LLC. All Rights Reserved.

 シャイアは子役時代に経験した父との関係性がトラウマとなっており、それによりアルコールに頼ってしまう傾向があった。リハビリ施設で治療の一環として、父との関係をノートにしたためる暴露療法を行うことになったシャイアは、この経験談を映画にできないものかと思いつき、すぐに親交のあったドキュメンタリー監督のアルマ・ハレルとやり取りを開始する。

 こうして完成した作品が『ハニーボーイ』だ。シャイア自身が投影された子役俳優オーティスを軸に展開される同作は、2019年のサンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞するなど、各映画祭で喝采を浴びた。シャイア自身もトラウマの原因となった父親を熱演しており、シャイア・ラブーフの人生を思い浮かべながら鑑賞すると、非常に心を揺さぶられる一本となっている。なぜ、彼は“ハリウッドの異端児”になってしまったのか? その理由が浮き彫りになり、シャイア・ラブーフという俳優を理解するきっかけとなる作品だ。

 多くの映画ファンが、シャイアをお騒がせ俳優と思っていることはわかっている。それも、シャイアが歩んできた人生の証であろう。だが、彼の魅せる情熱的な演技は、誰にも真似ができるものではなく、その実力は折り紙つきだ。ひとりでも多くの映画ファンがシャイア・ラブーフの実力を知り、彼を理解してくれる日がやってくることを願っている。(文・構成:zash)

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