池田エライザ「幸せな時間だった」映画初監督で学んだこと

『夏、至るころ』で映画初監督に挑んだ池田エライザ
『夏、至るころ』で映画初監督に挑んだ池田エライザ

 女優をはじめ、モデル、歌手、エッセイストなど、マルチな才能を発揮する池田エライザが、映画『夏、至るころ』でついに監督デビューを果たした。自らを「裏方気質」と公言する彼女にとって、作品の全てにたずさわる監督業は、まさに悲願。「とても幸せな時間でした」と笑顔を見せる池田が、本作に込めた思いとともに、映画作りを通して学んだ“監督業の醍醐味”について真摯(しんし)に語った。

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 本作は、映画24区が主催する「地域」「食」「高校生」をテーマにした青春映画制作プロジェクト「ぼくらのレシピ図鑑」シリーズ第2弾。福岡県田川市のある田舎町を舞台に、親友同士の男子高校生・翔(倉悠貴)と泰我(石内呂依)が、初めて自分の人生の岐路と向き合い、それぞれが次の一歩を踏み出すまでの日々を描く。二人が打ち鳴らす和太鼓の力強いリズム、不思議な少女・都(さいとうなり)が奏でるギターの旋律、青空を突き抜ける蝉の声……命の鼓動が鳴り響く美しくも力強い映像世界に、池田監督の感性がほとばしる。

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導かれるように舞い込んだ監督依頼

 2018年5月、出演した映画のインタビューで「ゆくゆくは、自分の作品を監督したい!」と将来の夢を熱く語っていた池田。ところが、チャンスは意外なほど早くめぐってくる。ちょうどその頃、本作の企画を立ち上げ、福岡出身の若い才能を探していたプロデューサーの三谷一夫(映画24区)が偶然、その言葉を目にして池田の映画作りに対する並々ならぬ情熱に心を動かされたのだ。「実は、将来のために映画監督の勉強は密かに始めていたのですが、こんなに早くお声がけいただけるなんて思ってもみなかった」と池田自身も予想外の展開に驚くばかり。まさに運命的なタイミングだった。

夏、至るころ
(C) 2020「夏、至るころ」製作委員会

 同年12月、晴れて“池田組”となったプロジェクトは、映画の舞台となる田川市を訪れた。そして、シナリオ・ハンティングや演技のワークショップを実施する中で、本作の物語が紡ぎ出される。「ある日、中学生を集めた座談会で、将来の夢を聞いてみたのですが、みんな大きな夢を語る中で、一人だけ『公務員になりたい』と答えた子がいたんです。この年代でやけに地に足がついているなと思って、もう少し深く話を聞いてみたら、『お母さんが喜んでくれるから』という純粋な気持ちと『安定した生活がしたい』という現実的な思いがいつの間にか“夢”として自分の中で根付いていたと言うんです」

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 夢を持つことすら難しい昨今、このバランス感覚に大きな感銘を受けた池田は、その夜、ホテルに帰って一気にプロットを書き上げた。「彼の言葉をきっかけに生まれたのが、堅実で真面目な泰我というキャラクター。対照的に、夢を持とうともしない現代の縮図のようなキャラクターが主人公となる翔。人生の岐路に立った時、この二人の関係性がどうなっていくのか、それを映画の中で描きたくなった」と目を輝かせる。ただ、「とても静かな映画になる」と予感した池田は、和太鼓をシーンにとり入れることを提案する。「田川にいると、静かだけれど、何かドクドクッと燃えたぎるマグマのような野望や情熱を感じたんですよね。これは絶対に和太鼓が合うと思ったので、スタッフに聞いてみたら、ジュニアコンクールで2度全国優勝している『和太鼓たぎり』というチームがあると。映画のイメージがこれで決まりました」

作品に0から100までたずさわる幸せ

 プロフェッショナルなスタッフたちのおかげで「平和で楽しく、演出にとことん集中することができた」と振り返る池田。女優としての経験を生かし、「現場はつねにフラットな状態に保ち、各俳優のスキルや役柄を鑑みながら最善の演出ができるよう務めた」と自信をのぞかせる。逆に女優業に還元できた経験もあった。「今まで人見知りのせいで撮影現場からすぐいなくなったり、クランクアップまで本番以外全く話さない共演者がいたり……。でも、監督をやってから変わりましたね。例えば、翔一家が縁側で戯れたり、鳥に話しかけたり、撮影でない時もまるで本物の家族のように過ごす姿を目の当たりにして、『この空気感、温度感が全て映し出されるのが映画なんだ』ということに改めて気づかされたんです」

夏、至るころ
(C) 2020「夏、至るころ」製作委員会

 新人もベテランも関係ない。一人の映画監督として、決して甘やかされることなく、全てをまかせられたことに感謝する池田。「初めて作品に0から100までたずさわらせていただきましたが、とても幸せな時間でした。俳優たちが自分の殻を破り、今まで知らなかった『新しい自分』に出会う瞬間に立ち会えたことも素晴らしい経験でしたし、何より『池田組』として、伝えたい思いをみんなが共感し、みんなが同じ方向に向かってクリエイトすることが本当に楽しかった。監督に向いていない人がやると大変な仕事ですが、その大変さに全く気づかなかった」と声を弾ませる。

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 監督デビュー作を撮り終えたばかりだが、池田は「またチャンスがあったら、監督をやりたい」と即答する。ただし、「今、いろんなことに挑戦させていただいていますが、器用貧乏にはなりたくない。どんなお仕事も倒れるくらいまでやり切らないと気が済まないので、時には取捨選択する勇気も持たないと」と自身の有り余る好奇心を戒める。女優としても華がある。ランウェイを颯爽と歩くモデル姿も、昭和歌謡が似合うムーディーな歌声も、実に魅力的だ。そこに参入してきた映画監督という新たな顔……。さて困った、池田にとってもファンにとっても、うれしい葛藤が当分続きそうだ。(取材・文:坂田正樹)

映画『夏、至るころ』は全国順次公開中

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