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尾上松也、失敗を恐れない人生観

映画初主演作『すくってごらん』が公開中の尾上松也
映画初主演作『すくってごらん』が公開中の尾上松也 - 撮影:高野広美

 歌舞伎俳優としての活躍はもちろん、映画やドラマなど現代劇でも強い存在感を示す尾上松也。映画初主演となった『すくってごらん』では、些細な失敗によって片田舎に左遷され、深く心を閉ざしてしまうメガバンクのエリート銀行員・香芝誠を演じた。本人とは真逆のようなキャラクターに感じたが、松也は「20代は失敗しかしていなかったですよ」と苦笑いを浮かべる。

【動画】尾上松也「ベースは全部歌舞伎」幅広い活動への思いを語る

 劇中、演技はもちろん、歌にダンスにさまざまな表現を見せつけている松也。昨年社会現象にもなったTBSの日曜劇場「半沢直樹」でIT企業の社長・瀬名洋介を好演するなど、歌舞伎俳優としてだけではなく、マルチな活躍を見せる。容姿端麗でもあり、失敗とは無縁のように感じられるが「若いころは前に進むことしか頭になかったので、いろいろな方からお叱りを受けましたね」と苦々しい表情を浮かべる。

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 特に印象に残っているのが、芝居での失敗というよりは、伝統的なしきたりや礼儀礼節。「若いころ、歌舞伎のお仕事を始めたとき、自主公演なども積極的にやっていたのですが、未知の世界過ぎて、誰に話を通したらいいのか、どういう順番で許可を取ったらいいのか、まったくわからない。そんななかで進んでいったので、山ほどトラブルが起きてしまったんです」

 その都度、厳しいお叱りを受け「この世から消えてしまいたいと思うぐらい落ち込みました」と当時を振り返るが、逆にその失敗があったからこそ「見えていない部分が見えてくるなど、気づくことがたくさんあった」と得るものも大きかった。

 そして、傷つくことも多かった分、より周囲への目もクリアになっていく。「対人関係を学ぶことで、次に活かせる。上手くいったことってあまり覚えていないのですが、失敗したことは忘れない。決して失敗したいわけではないのですが、失敗から学ぶことって本当に多いと思うんです」

 こうした若かりしころの経験が、いまにも活きている。「あまり失敗したことのない人生だと、どこか安定志向になってしまいますが、失敗を恐れないと、自然と視野が広がりますよね」と経験談を語る松也。安全で失敗のない人生よりも、失敗する可能性があっても、自分の知的好奇心を満たしてくれるようなチャレンジは、人を大きく成長させてくれるというのが持論だ。だからこそ、臆することなくいろいろな挑戦ができる。

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すくってごらん
映画『すくってごらん』より - (C) 2020映画「すくってごらん」製作委員会 (C) 大谷紀子/講談社

 主演を務めた映画『すくってごらん』も、そんな松也のチャレンジ精神が刺激されるような作品だった。「いきなり歌い出したり、ラップになって、それが英語だったりと、いい意味ですごくトリッキー。観ていただいた方の賛否が分かれるかもしれない。でも、きっと記憶に残るような、誰かのなにかに影響を与えられるような作品になっていると思うんです」

 松也は本作を「体感してほしい」とアピールしていた。この言葉通り、体全体で映像や音、芝居を感じることができるエンターテインメント作品が生まれた。(取材・文:磯部正和)

映画『すくってごらん』は公開中

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