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出すあてなく17年…笑福亭鶴瓶を追い続けたドキュメンタリー公開の理由

監督が「まったく飽きない」という笑福亭鶴瓶 - 『バケモン』より
監督が「まったく飽きない」という笑福亭鶴瓶 - 『バケモン』より - (C) DENNER systems

 落語家・笑福亭鶴瓶に約17年間にわたり密着したドキュメンタリー映画『バケモン』が7月2日から公開される。鶴瓶が「死ぬまで世に出したらあかん」と言っていた映像はなぜ世に出ることになったのか。誕生の背景にある、主演映画から連なる大きな縁について、山根真吾監督と、鶴瓶のマネジメントを手掛ける、株式会社デンナーシステムズの千佐隆智社長が語った。

笑福亭鶴瓶に17年密着!映画『バケモン』予告編

 鶴瓶が取り組んできた上方落語の傑作「らくだ」の時代ごとの変化を通じて、落語家・笑福亭鶴瓶の過去、現在、未来をすくい取る映画『バケモン』。山根監督が撮りためた映像は、約1,600時間にも及んだが、鶴瓶からは「俺が死ぬまで世に出したらあかん」と念を押されていたという。その言葉を「逆に言えば死ぬまで撮っていいということだ」と解釈したのが山根監督。“17年撮り続けた”という言葉は強烈なインパクトを及ぼすが、本人は「それが長いという気もまったくしていなくて。17年といっても毎年変わっていくので、飽きないんですよね」とこともなげに語る。

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 さぞかし鶴瓶の大ファンなのかと思いきや、苦笑いを浮かべた山根監督は「僕は鶴瓶さんが得意ではない。どちらかというと苦手なんです」と意外な言葉を発する。「もちろん嫌いというわけではなく、僕は人見知りの方なので、あの人のことがよくわからんのです。だってあの人は、街でふと出会った人の子の結婚式に出るような人なんですから。僕にはそれが理解できない。だから苦手なんです」と理由を明かすと、「鶴瓶さんからは、ものすごく親しげな電話がかかってくるんですけど、基本的には出ません。何を話したらいいのかわからないので」とキッパリ。

 そんな彼はなぜ、鶴瓶を撮り続けるのか。それは、鶴瓶が2004年に初演した古典落語「らくだ」がきっかけだった。そこで、底知れなさに魅せられた山根監督は、密着を決意する。だが、映画にも使われていない膨大な映像はどこに行くのか。「17年ぐらいやるともう、これ(映像)にどういう風に落としどころをつけるのだろうかと思うわけです。もちろん山根さんの中には考えがあるんだろうけど、僕の中では見失ったままの状態なんです」と語るのは、鶴瓶のマネジメントを手掛ける、デンナーシステムズの千佐社長だ。

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 ちょうどそんなとき、山根監督の密着映像とは関係なく、鶴瓶主演の映画『ディア・ドクター』(2009)を配給したアスミック・エースから、コロナ禍の日本を元気にするような、ドキュメンタリーのような形で鶴瓶の映画を作ることができないか、という打診がある。

 そこで千佐社長は「あらためてそんなことやらなくても、こちらには17年間撮り続けている素材が山ほどあるから、これでドキュメンタリーを作ったらどうだろうか。その代わり、配給手数料を0%にする覚悟はありますか?」とダメ元でぶつけてみた。それでもいいとの返事に驚きを隠せなかったという千佐社長だが、「でも実を言うと、0%と言ったのは僕自身が覚悟を決めたかったということでもあるんですよね」ということで、映像をドキュメンタリー映画としてまとめる覚悟が決まったという。

 一方、「俺が死ぬまで世に出したらあかん」と語っていた鶴瓶は、映画になることに、どのような思いを抱いたのだろうか。「これは説得力がないかもしれないですけど、たぶん今の段階でも決断はしていないですね。僕は鶴瓶本人に『映画にしてもいい?』『ええよ』と確認をとるような会話はしていない」という千佐社長。ほとんど事後承諾のような形で「コロナなのでこれこれこういう事情で映画にしようと思います」と告げると、鶴瓶は「わかった」とだけ返答したという。

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 そうした経緯で制作された本作は、上映にかかる映画上映料をとらずに、売り上げた興行収入はすべて映画館に渡すことになる。かつ、いつでも上映可能なDCPデータ(上映データ)を寄贈することで、時期を問わず、映画館が上映したいと思った時に、いつでも映画をかけられるようにした。その理由を千佐社長は「やはり『ディア・ドクター』ですよね」と語る。2009年に公開された同作は俳優・笑福亭鶴瓶にとってのターニングポイントとなり、本作のPRを通じて「映画を観客に広めるのは映画館の方たちだ」という思いを強くするきっかけとなった。だからこそコロナ禍で苦しむ映画館に「何か力になれることがあれば」という考えに至った。ナレーションを務めるのは『ディア・ドクター』で鶴瓶と共演した香川照之。当時、雑誌「キネマ旬報」に香川が寄稿した鶴瓶の記事を読んだ山根監督が「この人はすごい。鶴瓶さんのことをここまでわかっているのか」と感銘を受けたことから、ナレーションをオファーした。

「とある目的」のため、山根監督の密着は継続中だ(C) DENNER systems

 このように、『ディア・ドクター』の縁で誕生した作品とも言える『バケモン』だが、もうひとつ付け加えるならば、山根監督も同作のメイキング監督として現場についており、「笑福亭鶴瓶が生まれた理由(わけ) “もうひとつの、ディア・ドクター”」というドキュメンタリー作品を発表している。「仮に全体を10章と考えるならば、これ(メイキング)が第1章で、今回の『バケモン』は第7章みたいなものですね」と語る山根監督。その言葉通り、映画が完成した後も「とある目的があって」鶴瓶の密着撮影は継続中とのこと。今後の展開も楽しみだ。(取材・文:壬生智裕)

映画『バケモン』は東京・ヒューマントラストシネマ渋谷、大阪・シネ・リーブル梅田ほか公開中 全国順次公開予定

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