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「青天を衝け」渡航断念から始まったパリ撮影の裏側 デジタルとアナログを織り交ぜリアリティーを

徳川昭武(板垣李光人)がナポレオン三世と謁見するシーン
徳川昭武(板垣李光人)がナポレオン三世と謁見するシーン - (C)NHK

 日本資本主義の父と呼ばれた渋沢栄一の生涯を描く大河ドラマ「青天を衝け」(NHK総合ほかにて放送)。約260年続いた江戸幕府もいよいよ終焉を迎えるなか、栄一はパリで開催される万国博覧会への渡航を命じられる。本来、パリに赴きロケを行う予定だったというが、世界的に猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で断念。最新のVFX技術を駆使した映像で当時を再現するというチャレンジが、11日放送の第22回「篤太夫、パリへ」からお披露目される。パリを舞台にした22回から24回の演出を務めた田中健二が、撮影の裏側を語った。

【写真】加工前のナポレオン三世謁見シーン

 武蔵国・血洗島(現在の埼玉県深谷市)の農家の息子として生まれた、吉沢亮演じる渋沢栄一。その好奇心旺盛な性格から、草莽の志士として倒幕を目指すが、ひょんなことから一橋家当主・一橋慶喜(草なぎ剛)の側近・平岡円四郎(堤真一)と出会い一橋家の家臣となる。さらに慶喜が江戸幕府第15代将軍となったことから幕臣となり、パリ万国博覧会の使節団の一員としてフランス行きを命じられる。

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 栄一にとって、このパリ渡航の際の見聞と出会いが、後の人生を大きく左右することになる重要なエピソードだ。当初“パリ編”はフランスでのロケを予定したというが、コロナ禍でフランスも大きな被害が出ている状況だった。

 それでも田中監督は「去年の10月ぐらいまでは『行けるのなら行きたいね』と話をしていたんです」とギリギリまで諦めていなかったという。しかし「10月末にフランスでは1日で5万人ぐらいの感染者が出ている状況で、11月にはロックダウンになってしまった。さすがに無理だということで、現地に行かずパリ編を撮るという決断になったんです」と経緯を説明。

 そこから、まずは現地に行かないとできないこと、行かなくてもできることの洗い出しから始まり、VFXでどこまで表現できるのかを想定し、脚本の大森美香とすり合わせをしていくこととなった。年内には、主な舞台設定とカット割りを決めた。ウェブ上でロケハンした候補地をあげ、フランスのプロダクションに撮影可能かどうかのジャッジを仰ぐ作業を行った。

 「ロケ地が決まると、カット割りはこちらで精密に組んで渡しました。例えばナポレオン三世への謁見シーンは、徳川昭武(板垣李光人)が宮殿内を歩く速度や歩数などは、1秒間に何歩歩くのか……というところまで計算し、映像で送りました。それをもとに、現地スタッフに同じスピードで歩いてもらいながら撮ってもらうなど、相当細かくシミュレーションをしました」

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 フランスで撮った撮影素材や、CGで作った映像と、グリーンバックで演技をした俳優たちの芝居を重ね、異国の地で躍動する栄一らが画面に映し出される。田中は「VFXが注目されますが、あくまで中心は役者さんのお芝居。デジタル的になりすぎないように、こちらで作れるもの、例えばエレベーターのシーンなどは、セットを組んでアナログ的に撮りました。アナログとデジタルを織り交ぜることで、どちらもリアリティを上げる工夫をしました」と語る。

 グリーンバックでの芝居については、より俳優たちが想像力を掻き立てられるようにできることを施した。「絵コンテをはじめ、VFXチームがCGの人物を入れた映像を作り、セットにも当時の写真を置くなど、用意できる具体的なイメージは、できるだけ事前に(俳優に)共有しました」

 将軍・徳川慶喜の名代として派遣された弟の昭武が、ナポレオン三世と謁見するシーン。板垣は「ナポレオン三世との距離感や、目線の位置などがわからない」と言っていたという。そこで「ナポレオンの目の位置を示して、その距離感を意識してもらいました。普段役者さんは、相手のお芝居を受けて自分の動きや間を合わせていくものなので、相手がいないなかでの芝居というのは、とてもストレスだったと思います」と慮る。

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 一方、吉沢については「彼も本当に大変だとは思いましたが、こちら側から見ていると、そんな状況も楽しんでやっているように感じました。かなりイマジネーションを広げてくれて、思い切った芝居をしてくれました。やっぱりすごいですね」と称賛していた。

吉沢亮演じる渋沢栄一のパリでのシーン

 血洗島の百姓だった栄一は、草莽の志士として攘夷を唱えて国を飛び出した。そんな彼がパリで躍動するというのは、ある意味で大きな矛盾だ。田中も「栄一の入口は攘夷の志士。そんな彼が、外国人を認めていくのがパリ編。演出的にも、新しいものを飲み込む能力、人間を理解する力というのはしっかりと際立たせてもらっています」と演出意図を語る。

グリーンバックでの撮影

 栄一にとって大きな出会いとなった円四郎の「おかしれい」の精神。それをしっかり受け継ぎ、パリという異国の地で実践する栄一。「円四郎の思いに共鳴したからこそ、渋沢栄一という男がこんなにも大きくなっていくのだ……そんなことを感じていただけるように演出しました。吉沢くんも意図を汲んで、ビビットに演じてくれています」と放送への期待をあおっていた。(取材・文:磯部正和)

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