坂口憲二、俳優としての転機は「IWGP」 「父と共通項を見つけられた気がした」

坂口憲二
坂口憲二 - 写真:杉映貴子

 原泰久の人気漫画を山崎賢人(※「崎」は「たつさき」)主演で実写映画化したシリーズの第5弾『キングダム 魂の決戦』(7月17日公開)で、今作から初登場する秦(しん)国の将軍・桓騎(かんき)を演じる坂口憲二。その役づくりや、今回の役にも通じるという2000年放送のドラマ「池袋ウエストゲートパーク」で演じた、俳優として最初の転機になった役柄について振り返った。

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 七つの大国が覇権を争う紀元前の中国春秋戦国時代を舞台に、天下の大将軍になる夢を抱く主人公・信(山崎)と、中華統一を目指す秦国の若き王・エイ政(吉沢亮/※エイ政のエイは、上に亡、中に口、下左から月、女、迅のつくりが正式表記)を描く本シリーズ。今回は、秦以外の六国が手を組んだ総勢50万の“合従軍”が攻めて来たことから、国家存亡の危機に瀕した秦は、国門・函谷関(かんこくかん)に20万の軍勢と名立たる将軍たちを集結させる。その将軍の一人が、元野盗という異色の経歴を持ち、原作漫画でも王騎将軍にも匹敵するほどの人気を誇る桓騎だ。

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1年をかけて向き合った役づくり

『キングダム 魂の決戦』より坂口憲二演じる桓騎 (C) 原泰久/集英社 (C) 2026映画「キングダム」製作委員会

 病気療養のため芸能活動を休止し、コーヒーに関する仕事を中心に働いていた坂口。本作への出演オファーは、CMで久々に芸能活動に復帰した2023年夏頃で、大役の重責に悩んだものの「こんなにいい役をいただけるのは最後かもしれない」「素直にやってみたかったし、後悔したくない」との思いで出演を決めたという。

 「僕は不器用なので、また俳優業に戻れた時は、以前と違って時間をかけて役と向き合える作品をやりたかった」という坂口にとって、自身の撮影まで約1年の準備期間があったことも大きかった。クランクインが近づくと不安で眠れない日もあったが、桓騎が部下たちに自信満々で語る「全部上手くいく」という名台詞を自身に言い聞かせ、自分を信じることを大切にしつつ、「準備できることはすべてやろうとした」と振り返る。

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 「フィジカル的には乗馬や殺陣をひたすら練習し、適度な筋トレもしたけれど、桓騎はあまり身体を大きく見せるタイプではないので、まだ暑い時期の長期撮影を乗り切れる体力作りを重視しました。メンタル的には、原作を何度も読み、映画もアニメ版も繰り返し見ました。自室の机の上に桓騎のフィギュアを置いたり、スマホの待ち受け画面も桓騎の顔にして(笑)、常に忘れず頭の中で考えていましたし、自分の身体に染み込ませるような役づくりをしつつ、1年過ごしました」

桓騎の群れない感覚を大事に

 「いつもより特に思い入れが強い役かもしれない」とも語る坂口は、桓騎の一番の理解者になろうと、そのキャラクター像も考え抜いた。

 「桓騎には他の将軍らしい将軍たちと違い、トリッキーなところや異物感がある。それは元野盗という経歴もそうですし、戦い方も違う。正統派ではないダークサイドの人で、例えば『スター・ウォーズ』のダース・ベイダーや『バットマン』のジョーカーなど、主人公の信とは真逆のダークヒーローみたいな立ち位置かなと。癖が強く陰もあって、目的のためには手段を選ばず、かなり残酷でエグいこともやるから、人が離れていきそうなのに、人を惹きつける魅力もあって。メチャクチャ矛盾しているのが桓騎なので、言い表すのはすごく難しい」

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 演じる上では「常に乾いている感じみたいなものを出せたら」とイメージし、以前とは違う現場での過ごし方も心掛けた。

 「佐藤信介監督からもあまり群れないような感覚を大事にして欲しいと言われました。部下たちや周囲は騒いでいても、一人だけ違うことを考えているような。ですから、撮影現場ではカメラが回っていない時もずっと一人でいました。以前は撮影の合間に共演者の方々と喋ったり、食事に行ったりもしていましたが、今回は一切やめてみようと。孤独でいることが桓騎の感覚に繋がるのかなと思ったし集中できたので、それが自分的にはすごく新鮮な経験でしたね」

父親との共通項を見つけられたことが転機に

 出演が発表された際は、自身にとって過去最大級の反響に、改めて桓騎の人気ぶりや責任の重大さを痛感しつつ、「もう撮影は終わっているし、賛否両論あってもいいと覚悟しました。ただ本音を言うと、坂口で良かったと言われたい」と苦笑する坂口。予告映像などの反響も「ハマリ役」「ピッタリ」と好評で、「割とダークヒーロー的な役やワルの役を演じると、喜ばれることが多いみたいです」と手応えも感じている。それは、坂口の代表作のテレビドラマ『医龍』シリーズ(2006・2007・2010・2014)で演じた主人公・朝田龍太郎や、俳優としての転機となった役にも通じるようだ。

 「もともと俳優になろうと思っていたわけではなく、20代中盤にモデルから俳優へという流れに乗っかってみたものの、下地がないからうまくいかなかった。そんな頃、3作目のテレビドラマ『池袋ウエストゲートパーク』で、凶暴なドーベルマン山井(山井武士)役に選ばれ、見た目もキャラクターも初めて自身と全く違う役を演じて吠えてみた時に、すごく周りが楽しんでくれたのが気持ち良くて、演じることの快感みたいなものを覚えた。僕はプロレスラーだった父(世界の荒鷲と称された坂口征二)にずっと憧れがあり、半裸で対戦相手と向き合うプロレスラーには、身一つでお客さんを喜ばせたり感動させる究極の表現みたいなことをやっている点で、俳優の仕事や演じることに通じるものがあるかもしれないなと。親父と自分に共通項を見つけられた気がして、もう少しやってみたいと思えたからこそ、今があるんですよね」

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 テレビドラマ「最後から二番目の恋」シリーズ(2012・2014・2025)で演じた長倉真平は「自分の延長線上みたいな役」である一方、桓騎やドーベルマン山井や朝田のような役は「自分自身と遠い存在」だからこそ、「現実ではできないことを演技として入り込んでやれるのが楽しくて、陰がある人物やワルの役も好きなんです」と語る坂口。コーヒーの焙煎士と、カフェやショップの経営にも携わる坂口は、「コーヒーの仕事をやったことで、自分のペースみたいなものが一つできた。根底がすごく不器用で、頑張りすぎて空回りすることも多いから、自分なりのペースの範囲内で、芸能の仕事もやっていきたいですね」と、それぞれの仕事に丁寧に時間をかける現在のスタンスを大事にしていることが窺えた。(取材・文:天本伸一郎)

ヘアメイク:北清輔(337inc.)/スタイリスト:石橋修一

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