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清原果耶「おかえり」がキーワードの2作で真骨頂

「おかえりモネ」第45話より
「おかえりモネ」第45話より - (C)NHK

 現在、連続テレビ小説「おかえりモネ」が放送中、映画『護られなかった者たちへ』が公開中の清原果耶。くしくも「震災」をキーワードにした2作を通し、快進撃が続く彼女の魅力に迫る。(文:轟夕起夫)

【写真】“菅波先生”こと坂口健太郎とのカップリングも好評

 晴れている日に聴きたい曲は、曽我部恵一の「碧落(へきらく)」。雨が降っている日は YEN TOWN BAND の「Swallowtail Butterfly ~あいのうた~」。

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 何とも素晴らしいセレクトではないか! 選んだ清原は、現在19歳。付言するまでもなく朝ドラ「おかえりモネ」のヒロインで、これは公式HPのワンコーナー「果耶れたー」内にて本人が視聴者からの質問に答えたものだ(以下、引用する彼女のコメントはすべて、同公式HPより)。

 その「おかえりモネ」がいよいよ最終章、第3部「気仙沼編」へと突入した。清原の、“表現者”としての評価を一層高めながら。初めに明らかにしておくと、本稿の目的は愛称モネ、永浦百音(ながうら・ももね)というキャラクターを身に纏い、「私はいつも、自分の役のいちばんの理解者でありたい、いちばんの味方でありたいと思っている」と、確かな血を通わせ続けている彼女の魅力を改めて、考えることにある。

 まず、冒頭に示した2曲は、清原の素顔と共に19歳とは思えぬセンスを垣間見せている。当然、感受性の鋭さは演技面に生かされ、しかも各作品が求める色にも染まり切るわけで、それはまるで液体、固体、気体の間を行き来する“水”のごとし。朝ドラに関してはすでに2度、13歳の時に「あさが来た」(2015~2016)、17歳で「なつぞら」(2019)と助演ながら忘れがたい足跡を残してきた。ちなみに、名バイプレイヤー・三宅弘城に助けられつつ互角に渡り合い、ドラマ上、夫婦(めおと)となって授かった娘まで演じた「あさが来た」は役者デビュー作。「私の芝居の原点」と彼女は語っている。

 今回の「おかえりモネ」の主人公・永浦百音は、罪悪感を抱えた難しい役柄だ。宮城県の気仙沼湾沖の島で生まれ育ったが東日本大震災に遭遇した折、津波に襲われた地元にはたまたまおらず、「あの日、自分は何もできなかった……」と家族や知人、直接の被災者たちに後ろめたさを感じているのだ。高校卒業後、とにかく島を出たく登米市の森林組合に就職するも、そこでの生活で「誰かのために役立ちたい」と強く思うようになり、一念発起。気象予報士を目指し始め、そして3度目の試験挑戦で合格して、新天地・東京へ。紆余曲折を経て3年の月日が流れる中、百音は地元に戻ることを決断し、険しくも不退転の覚悟でのぞむ第3部「気仙沼編」に至る。オリジナル脚本を担当したのは、清原がドラマ初主演を飾り、作品ともどもさまざまな賞に輝いた「透明なゆりかご」(2018)の安達奈緒子。「私が言うのもおこがましいのですが、安達さんの台本は、行間に大切なものを詰めた“役者に芝居させてくれる台本”」と述べる通り、彼女は行間を深く読み取って、繊細極まりない表現に落とし込んでみせる。

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 このドラマには詩的かつ、抽象的な描写が多々あり、そのニュアンスを体現していることこそが清原の魅力。ではどうアプローチしているのか。「小学生のころは合唱クラブに入るほど歌が好きだったので、歌手か、そうじゃなくても“歌う人“になりたいなぁと思っていました」との証言もある彼女はまるで、役を歌っているかのように見える。台本を音符代わりにして。モネは百音、百の音を奏でるのだ。そもそも音楽=ミュージックの語源はギリシア神話のミューズ(女神)。だから「役を歌う」という表現を使ってみたい。撮影現場においては照明、美術、衣装、メイクなど、あらゆる要素が反映されて役者の演技が出来上がっていくのだが、演出家のもと、念入りにチューニングをしてステージに立ち、全身全霊で役の微細な心の動きを歌い分け、その旋律を我々は聴く。いや、見る。メジャーからマイナー、メジャーセブンスと刻一刻と変わっていくコード進行の流れを、凝視する。あるいは、自分のカラダを丸ごと楽器として用い、つまりは役を演奏(プレイ)しており、必然的に共演者とのセッションもまた立体音響化し拡がっていく。

 急いで付け加えておこう。むろん、こうした資質は彼女だけが体得しているものではない。俳優ならば皆、有しているであろう才能だ。でも人一倍、際立っていることは強調しておきたい。例えば、かの渥美清が『男はつらいよ』シリーズで披露した“ひとり語り”の長ゼリフを、山田洋次監督やスタッフは「寅のアリア(独唱)」と呼んだが、「おかえりモネ」にも“モネのアリア”がある。すぐに思い出したのは第45話。ついに気象予報士試験に合格し、上京するにあたって百音は登米から気仙沼に一度帰り、正座をして、涙をこぼしながら訥々と家族に胸の内を打ち明ける。「家族に思いを伝えるシーンは、ここまでの一つの集大成。私なりに準備をしたうえで、テストなしの、いきなり本番でぶつけさせてもらいました」とは、清原の弁だ。これを「テストなしの、いきなり本番」でやってのけてしまうなんて全く恐るべし。

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映画『護られなかった者たちへ』より (C) 2021映画「護られなかった者たちへ」製作委員会

 そしてもう一作、言及すべきは「おかえりモネ」と同じく「震災」がキーワードの、公開されたばかりの映画『護られなかった者たちへ』だ。連続餓死殺人事件の容疑者である主人公を佐藤健、彼を追う刑事を阿部寛が演じ、人気作家・中山七里の小説を瀬々敬久監督が映画化したヒューマン・ミステリー。彼女に託された役は、仙台市の保険福祉センターで働く“円山幹子”で、生活困窮者に手を差し伸べ、「誰にでも護られる権利はある」との強い意志を行動原理にしている。実はこちらも気仙沼が主要舞台で、しかもあの大震災から10年目の物語。偶然ではあるがどこか、「おかえりモネ」と連動しているのが驚きである。元々は2020年4月にクランクイン予定だったが、緊急事態宣言の発出によって延期になり、撮影は6月20日~7月23日までの約1か月にわたって行われた。続いて9月末より朝ドラの現場に。昨年からずーっと背負っていた“気仙沼”への思い。その心情はこれから、もしくは「おかえりモネ」終了後に明らかになるのであろう。どちらの作品も言わば、容易には正解の出ない難題へと取り組んでいるのだが、共に“おかえり”という言葉に関する重要な役を清原が担っている。『護られなかった者たちへ』がそうであるように、「おかえりモネ」のタイトルの真意もまたきっと、最終的にこの「役を歌う」ミューズによって大きく書き変えられ、表れる予感がする。

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