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『るろうに剣心』から『G.I.ジョー』へ 谷垣健治が求めたギリギリを避けるアクションの面白さ

『るろ剣』より怖いものはない!アクション監督・谷垣健治『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』インタビュー » 動画の詳細

 映画『るろうに剣心』シリーズなどで知られるアクション監督・谷垣健治がリモートインタビューに応じ、最新作『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(公開中)で演出したアクションや、撮影でこだわったスタントマンの人数について語った。

【動画】『るろ剣』完結後の心境も!谷垣健治アクション監督にインタビュー

 ハズブロの人気フィギュアから派生したテレビアニメをベースに、国際機密部隊G.I.ジョーと悪の組織コブラの攻防を描いた『G.I.ジョー』シリーズ。最新作は、G.I.ジョーの最強戦士スネークアイズが主人公となり、日本の秘密忍者組織・嵐影に入門したスネークアイズが三つの試練を乗り越え、悪の抜け忍集団とコブラの連合軍との忍者大戦に身を投じていく。

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 谷垣は、2018年頃から『るろうに剣心 最終章』2部作や『Raging Fire(原題)』の撮影などで多忙だったため、本作のオファーを2度断っていた。しかし、プロデューサーを務めるジェフ・G・ワックスマンからは、「アクション関することは全部やってほしい」と谷垣のもとに再三連絡があったという。「ジェフは『ジョン・ウィック』第2弾と第3弾のプロデュースも担当していたので、以前から交流があった(『ジョン・ウィック』監督の)チャド・スタエルスキから、僕の名前が出たと聞きました。チャドは『ケンジに任せれば大丈夫』というようなことを言ってくれていたみたいです」

 結果的に予定していた次回作が延期となり、谷垣は本作にアクション監督/セカンドユニットディレクターとして参加することとなった。メガホンを取ったロベルト・シュヴェンケ監督は日本映画に造詣が深く、監督が参考にした作品には谷垣も知らないようなタイトルも含まれていた。「ロベルトと最初に会った時は、三隅研次や小津安二郎の話をしましたね。僕はひたすら聞いてるだけでしたけど(笑)。彼は深作欣二監督のファンでもあるので、オープニングでは『仁義なき戦い』のテイストも入れたいと言っていました。(日本映画が)本当に詳しくて、僕も知らないことをたくさん知っていますし、面白かったですよ。アジア映画に造詣が深い監督だったので、僕らが普段どんな仕事をしているかということも見ていて、こういう人とタッグを組むと面白くなるかなという感触はありました」

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基本に忠実なアクションで魅せる!- (c)2021 Paramount Pictures. Hasbro, G.I. Joe and all related characters are trademarks of Hasbro. (c) 2021 Hasbro. All Rights Reserved.

 人を斬れない刀=逆刃刀で戦う『るろうに剣心』の主人公・緋村剣心とは対照的に、『G.I.ジョー』の主人公・スネークアイズは日本刀を巧みに操り、迫り来る敵を次々と斬っていく。それぞれ作法は違うものの、谷垣は「ギリギリを避ける攻防の面白さ」を強調し、本作のアクションを構築していった。

 「僕らアクション部がいつも言っていることは、パンチだろうが武器だろうが、『顔なら顔を狙う。何もないところを狙うんじゃない』ということ。頸動脈なら頸動脈を、手首なら手首というように、打撃の狭いポジションを狙っていく。目的意識を持って攻めていくことは、どの映画にも共通することです。もう一つは、『当たり前のことを当たり前にやる』。現場ではいろんな事情でいろんなことが変わっていきます。その時に自分たちの理屈で変えてしまうとお客さんはそれを敏感に感じとる。だから時間がかかろうが面倒くさかろうが、劇中その状況で起こりうるであろう当たり前のことから逃げずに当たり前にやろうねという意識です」

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 本作のアクションシーンでは、日本のアクション映画のような「一人対複数人」の構図が見られる。映画の序盤で展開する波止場でのアクションでは、スネークアイズとストームシャドーに無数の敵が襲いかかったり、クライマックスでも、何十人もの忍者をスネークアイズが一人で相手する。プロデューサーのロレンツォ・ディ・ボナヴェンチュラは、茨城(ワープステーション江戸)の撮影現場で「ケンジは、いつも『スタントマンがもっと要る』と言い続けていた。10人くらいのアクションシーンにも『25人必要です』と答えた。こうして生まれたアクションは、アメリカのスタッフの目には非常に斬新に映ったんだ」とも語っていた。

 (日本人の)スタントチームを要求したことついて、谷垣は二つの理由を挙げた。一つは、裏方を含むスタッフワークを考慮したこと。「アメリカ映画だと、アクション部以外の部署がセッティングなどを担当したりしますが、日本ではアクション部が他の部署とのスタッフワークを手伝ったり、クロスオーバーすることが多いです。これは日本に限らずアジア映画全体に言えると思いますけど。今回も日本ロケでは、画面手前のスモークなんかはアクション部がやったりしています。スモーク、って言ってもパウダーでパタパタやってるだけですけど(笑)。海外では職域を侵すとして問題になる可能性がありますが、日本ではそっちの方が早い。僕はセカンドユニットの監督だったこともあり、撮影現場では『時間がかかるので、こちらでやります』と言っていたりしました。時間がかからない=コストがかからない、ということですからプロデューサーはこういう提案には乗ってきます(笑)」

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 もう一つは、ファーストユニットとセカンドユニットでスタントマンの人数が分かれていたから。「カナダで初日から4日間かけてオープニングを撮影した際、ファーストとセカンド合わせてのべ50人近くは必要なシーンに、30人位のスタントマンで取り掛かっていました。つまり、ファーストユニットで人数が足りないと、セカンドから人が引き抜かれてしまう。そうすると、2週間前から決めていたことが全部崩れてしまいますよね。人の配置とか。結果その場で演出を変えざるをえないんです。僕は『2週間前からわざわざトロントとかからアジア系のスタントマンを呼んでリハーサルしてたのに、これ意味ないよね?』と怒りまして……。ファーストとセカンドで人を兼任させるのはおかしいよね、という話が始まりでした」

ヘンリー・ゴールディングと谷垣アクション監督、撮影外でも仲良し!

 主演のヘンリー・ゴールディングは、本作までアクション映画の経験がゼロだったが、谷垣は「アクション未経験とはいえ、ヘンリーは最初からうまかったですよ」と評価。「ヘンリーのアクションは、つい見入っちゃうんですよね。彼がやると振り付けが振り付けに見えないというか、とても生っぽくていいですね。ちゃんと自分のスタイルもあるし」と見るものを惹きつける才能があると分析する。また、アクションが得意なライバル役のアンドリュー・小路の存在も大きかったそうで、「彼はアクションの経験もかなりあるので、そういう人がいると全体のレベルが自然と上がっていきますよね。それは『るろうに剣心』で佐藤健さんがいたから、周囲のレベルが上がったことと同じ。アンドリューがいたから、周りも引き上げてもらって上達していました」と振り返っていた。(取材・文:編集部・倉本拓弥)

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