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伊藤英明、ガッカリ企画が広げてくれた振り幅 イメージ破壊に挑む気概

『KAPPEI カッペイ』で観客に笑いを届ける 伊藤英明
『KAPPEI カッペイ』で観客に笑いを届ける 伊藤英明 - 写真:高野広美

 俳優の伊藤英明が約5年ぶりに映画主演を務めた新作コメディー『KAPPEI カッペイ』。「デトロイト・メタル・シティ」などで知られる若杉公徳のギャグ漫画を実写化した本作で、伊藤は「人類滅亡の危機を救う」という目的を失い、東京でシティライフを満喫する終末の戦士・勝平を演じた。昨年、『燃えよ剣』で新選組初代筆頭局長・芹沢鴨を豪快に演じ好評を博した彼が、なぜこんなにもぶっ飛んだ役を受け入れたのか。オファーが来た時、「正直、ガッカリした」という伊藤が、気持ちを切り替え、徹底した役づくりに臨んだ経緯、そして俳優としての“振り幅”について思いを語った。

【動画】伊藤英明×山本耕史×大貫勇輔×小澤征悦『KAPPEI カッペイ』爆笑座談会!

 本作は、「1999年7の月、人類は滅亡する」というノストラダムスの予言を信じ、来たる終末の世に備えて幼い頃から厳しい修行に人生を捧げてきた戦士たちの物語。2022年になっても世界は一向に滅亡せず、活躍の場を無くした彼らは、東京で遅すぎた青春を謳歌する。『かぐや様は告らせたい』シリーズなどを手掛けてきたプロデューサー・平野隆が初監督を務め、大貫勇輔山本耕史小澤征悦古田新太西畑大吾なにわ男子)、そして紅一点、上白石萌歌ら豪華俳優が名を連ねた。

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オファーには戸惑いも

勝平は「とにかく真っすぐなところがいい」

 まさか新選組の豪傑から、ギャグ漫画のヒーローにシフトするとは、誰が予想できただろうか。伊藤本人もオファーを受けた際、戸惑いを隠せなかったという。「20代のころからご縁のあった平野監督が、『この胸いっぱいの愛を』以来、約15年ぶりに声をかけてくださったので、すごく嬉しかったのですが、満を持していただいた企画が本作と聞いて……最初は正直、ガッカリしました。『え? もっとほかにあるでしょ!』って(笑)」。ただ、一人の俳優として、コロナ禍で不自由な生活を強いられている人々に、束の間、心の底から笑える作品を届けることも意義あるものと考えた伊藤は、主人公・勝平に共感ポイントを見つけ出し、役者魂を奮い立たせる。

 「勝平やその仲間たちのいいところは、とにかく真っすぐなところですよね。何事にも熱を持って向き合うところ、拳法を極めようとしている男らしさ、自分一人になっても人類滅亡を何とかしてやるという気概がある。恋に対しても、友情に対しても、すごくピュアで、意外と日常の小さな幸せを見つけるのが得意。人間を超越している存在ではあるけれど、こういう人たちが世の中にあふれていたらいいですよね」。勝平の本質を理解し、あくまでも大真面目に作品に取り組むことを決意した伊藤は、「出演者、スタッフみんながこだわりを持って、いい空気感、いいテンポ感、いいライブ感を大切に撮影すれば、きっと面白いものができるはず」と信じて撮影に臨んだ。

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原作を再現するだけの映画にしたくない

 まずは、肉体改造から始まった。「ずっと体を鍛えてなくて、ジムにも10年近く行ってなかったので、どうしようかと。本当は2年、3年かけて、ボディビルダーのような体にすれば面白かったかもしれませんが、コロナ禍もあって正味1か月くらいしか時間がとれず、あの体が精一杯でした」と短期間集中で仕上げたことを告白。お笑いコンビ・オードリーの春日俊彰やスギちゃんを参考にし、動きや外観にもこだわった。「髪はちょっと不自然さを出すためにブルース・リー風のカツラをかぶっているんですが、あの風変わりな衣装は何着かあって、時系列によって汚しや馴染みの風合いを変えているんです」。

(C) 2022 映画『KAPPEI』製作委員会 (C) 若杉公徳/白泉社(ヤングアニマルコミックス)

 セリフの加減にも工夫を凝らしたという伊藤。「例えば、萌歌ちゃん演じるハルが先輩と仲良く歩いている姿を見つけた勝平が、『二人は付き合っているのか!』と走り寄るシーン。二人の間に入り込むタイミングとか、言い方の強弱とか、微妙なニュアンスがすごく難しかった」と述懐する。「漫画を実写化する場合、ヴィジュアルのうわべだけすくってそれっぽく観せる、というのが一番あってはならないこと」と語る伊藤。「絶対に変えてはいけないところは守りつつも、セリフ回しや編集、音楽などに映画ならではの想像性を盛り込んで、新たな命を吹き込むこと。それでなければ意味がない」と強調する。

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 役の振り幅を広げ、イメージをつねに破壊し続ける姿勢は、まさに伊藤の真骨頂。「僕たちは役をいただく側なので、振り幅は製作者の方につけていただくと言っても過言ではありません。ただ、その役をいただいて、自分の人生を投影したり、経験したことを生かしたりするのは俳優の仕事。それが一つにつながった時、役の振り幅がいい方向へと広がっていくんでしょうね。今回は“ガッカリ”からスタートしましたが(笑)」と持論を述べた。

芸達者たちが変なおじさんを熱演!

 若手の西畑(なにわ男子)が等身大の大学生を演じる一方で、輝かしいキャリアを積み重ねてきた俳優陣が全力でオバカキャラを演じているのも、本作の見どころの一つ。普段は観られない衣装に身を包んだ“変なおじさん”たちがそろった現場は、当然のごとくカオスだった。「待ち時間にあの格好で真面目な話をしているから、周りから観たらカオスですよね。(山本)耕史くんなんかお腹出して、馬の顔が付いたパンツを履いているし、(小澤)征悦くんは髪の毛立っているし、大貫くんなんかはほぼ上半身裸、サスペンダーで乳首を隠すきわどい衣装でくつろいでいる。男ばかりなのに妙なエロティシズムが漂っているんですよね」と苦笑い。

 そんな現場で、勝平が想いを寄せるハルを演じた上白石にも注目する伊藤。「一見、勝平たちが周りを振り回しているように見えて、実はハルが周りを振り回しているんですよね」。ある意味、本作のキーパーソンとなる彼女のチャーミングな魅力に伊藤は、逆に心配を募らせる。「どこかの記事で、『この作品が上白石萌歌の当たり役になることを祈っている』って書いてあったのを読んで、これはまずいぞと。この作品が萌歌ちゃんの代表作になっちゃ絶対にダメでしょ。だって、『KAPPEI カッペイ』ですよ!(笑)」。裏を返せば、それくらい上白石の女優としてのポテンシャルを認めている証しといえるだろう。(取材・文:坂田正樹/写真:高野広美)

映画『KAPPEI カッペイ』は全国公開中

伊藤英明×山本耕史×大貫勇輔×小澤征悦『KAPPEI カッペイ』爆笑座談キェェェェェイ!!!!! » 動画の詳細
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