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青梅・シネマネコ動員1万人!さらに人に優しい映画館を目指す

2021年度グッドデザイン賞を受賞したシネマネコ。
2021年度グッドデザイン賞を受賞したシネマネコ。 - (写真:中山治美)

 昨年6月4日、東京・青梅に約50年ぶりに開館した映画館・シネマネコが、今月にも観客動員1万人を突破する見込みとなった。コロナ禍で映画興行はどこも苦戦し、シネマネコも当初は昨年5月2日にオープン予定だったが緊急事態宣言が発令されたことで1か月延期になり出足からつまずいたが、それでも映画館過疎地帯の西東京地域に誕生した新たな文化施設への期待と、都内唯一の木造建築映画館という希少さも相まって、着実に地域に根付きはじめている。

 4月上旬にシネマネコを訪れると愛らしい水色の外観の周りに散りはじめた桜が舞って、美しい風景画を見ているかのような感覚に陥った。それもそのはず。国登録有形文化財である昭和初期に建てられた旧都立繊維試験場をリノベーションした同館は、昨年10月に発表された2021年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)の「商業のための建築・環境」分野で受賞した。

カフェ
大きな窓から降り注ぐ日の光が優しい気持ちにさせてくれるカフェ。(写真:中山治美)

 さらに館内に入ると、併設された「きんちゃんとぎんちゃんのシネマカフェ」には近所の方がランチを楽しみ、映画上映前後には、鑑賞に来た人たちが一服するために立ち寄り、にぎわいを見せる。人の熱気や体温が宿ってこそ、建物が息づくのだと改めて実感する。

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 シネマネコの菊池康弘代表は「開館する時、他の劇場の方から“経営は厳しいよ”という話ばかりをうかがっていたので覚悟していたのですが(苦笑)、僕的にはそうでもなかったかなという感想です。平日でも毎回コンスタントに10人前後の来場者があり、土日はカフェが忙しくなるほど。特別ネコ会員も目標の1,000人には届きませんでしたが630人となり、うれしい想定外の滑り出しとなりました」とこの1年を振り返る。

エントランス
現在のエントランス。高さのある階段と手すりがないのが高齢者や障がいを持つ人にはネックに。(写真:中山治美)

 「人と映画と文化を紡ぎたい」との思いで、地域に根ざしたイベントも行ってきた。ドキュメンタリー映画『カンパイ! 日本酒に恋した女たち』(2019)上映時には、地元の小澤酒造と福生市の田村酒造から女性社員2人を招いてのトークと利き酒のコラボレーションイベントを開催。地元恒例の青梅宿アートフェスティバル2021にも参加し、映画『グレイテスト・ショーマン』(2017)の無料上映を元織物加工工場のさくらファクトリーで開催し、約110人が来場した。

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簡易のスロープ
車椅子での来場者には簡易スロープで対応。(写真提供:シネマネコ)

 同時に課題も見えてきた。来館者は年齢層が高い。すると来場者アンケートで「エントランスにスロープを作ってほしい」や「手すりをつけてほしい」という要望が増えてきた。映画館をリノベーションした時、トイレをはじめさまざまな箇所をバリアフリーにしたが、予算の都合上、どうしても手がつけられなかった箇所だという。現在、車椅子での来場者には簡易スロープで対応しているが、傾斜があるため補助が必須だ。

工事後の完成図
バリアフリー工事後の完成図。スロープの設置に合わせて障がい者用の駐車場も設ける。(提供:シネマネコ)

 バリアフリー補助金制度を探したが、商業施設は対象外となることがほとんであることから、クラウドファンディングに望みをかけることにしたという。目標金額は改修工事費用258万5,000円のうちの200万円。ただしロシアのウクライナ侵攻の影響で建築資材が届かず、価格も高騰していることから費用がかさむ可能性が出てきたという。

 菊池代表は「当初は6月の1周年に間に合うように改修できればと思っていたのですが、2、3か月着工に遅れが出そうです」と明かす。

 座席数63席の小さな映画館にも届いた世界情勢の波。誰もが心から映画を楽しめる日が来ることを願いつつ、シネマネコは全ての人に優しい映画館を目指すという。(取材・文:中山治美)

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