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「xxxHOLiC」を今、映画化する意味 蜷川実花監督が10代の若者に向けた思い

メイキングより蜷川実花監督、神木隆之介、柴咲コウ
メイキングより蜷川実花監督、神木隆之介、柴咲コウ - (C) 2022映画「ホリック」製作委員会 (C) CLAMP・ShigatsuTsuitachi CO.,LTD./講談社

 クリエイター集団CLAMPのコミックを、神木隆之介柴咲コウのダブル主演で実写映画化する『ホリック xxxHOLiC』(4月29日公開)でメガホンをとった蜷川実花監督が、原作の魅力、映画化の意図について語った。

妖しく美しい…『ホリック xxxHOLiC』場面カット

映画化実現に10年

どんな願いもかなえる“ミセ”の女主人・侑子(柴咲コウ)と高校生・四月一日君尋(神木隆之介)

 本作は、人の心の闇に潜む“アヤカシ”が視える能力に苦悩する高校生・四月一日君尋(わたぬき・きみひろ/神木隆之介)が、対価と引き換えにどんな願いもかなえるという“ミセ”の女主人・侑子(ゆうこ/柴咲コウ)と出会い、不思議な事件の数々に遭遇しながら成長していく物語。蜷川組初参加となる神木と柴咲のほか、松村北斗玉城ティナ磯村勇斗吉岡里帆ら豪華キャストが集結した。蜷川監督いわく、映画化の企画が浮上したのは10年前になるというが、なぜ実現するまでに10年かかったのか。

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 「本当は『ヘルタースケルター』(2012)の後に撮りたかったんです。原作を読んだのは2012年。何といってもビジュアルが圧倒的に美しく、ぜひ映画化させていただきたいと思い立ち開発に入ったものの、脚本がとにかく難しくて。原作への思い入れも強かったですし、ファンの方が多い作品なので何を芯にすればズレないのかというのを定めるのに時間がかかってしまいました。原作は19巻あって、『カードキャプターさくら』『ツバサ-RESERVoir CHRoNiCLE-』などCLAMPさんの別作品とのリンクもある壮大なスケール。モコナ&モドキ(架空の生物)をどうするのかという問題もありました。あとは侑子さんが感情が大きく動くキャラクターではないので、四月一日くんを中心にして2時間で成立させるにあたって、物語のうねりを作るのが難しかったですね」

 実写映画のキーになっているのが、四月一日の「死にたい理由は特にない。生きていたい理由はもっとない」というオリジナルのセリフ。自身の特殊能力ゆえに人との関りを避け孤独に生きてきた四月一日がある日、不思議な蝶に導かれて“ミセ”を訪れると、主人の侑子はアヤカシが視えぬようになりたいという彼の願いを見抜く。このセリフはどういった経緯で生まれたものなのか。

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 「これはわたしが書いたセリフなんですけど、以前二十歳ぐらい下の友人がこういったことをボソッとつぶやいたことがあって、これだなと。映画を作るときって『なぜ今なのか』といったことが重要になりますが、それが見えた瞬間でもありました。四月一日くんが今の若い人たちの代弁者というか、共感できる存在になるにはどうしたらいいかなと思っていたときに、これはリアリティーのある言葉だなと思えたんです。わたしの息子が14歳になるんですけど、それぐらいの世代に伝わるメッセージを込めた映画にしたいという思いがありました。加えて、この映画は一回目の緊急事態宣言が終わってすぐにクランクインしたのですが、コロナの影響で2か月撮影が延びたんです。その間にスタッフと話し合う時間を設けて脚本も直せましたし、世界が変わっていく最中にどんな思いを込めたらいいのか、今映画化する意味をあらためて再認識することになりました」

こんな時代だからこそポジティブなメッセージを

自身の特殊能力に苦しむ四月一日

 映画は、この「死にたい理由は特にない。生きていたいい理由はもっとない」という四月一日のネガティブな言葉から幕を開けるが、そんな彼に侑子が投げかける言葉は名言多数。生に後ろ向きで受動的な四月一日に対して、侑子は「世界は自分で作るもの」「未来はそれぞれの選択の先にある。選択することで変えられる未来もある」と能動的な言葉を放つ。見終えた後にポジティブな気分になれるように、というのも蜷川監督が意図することだ。

 「この作品に限らず、見終えたあとに不思議な爽快感というか、『頑張ろう』という気分になってほしいと願いを込めながら撮っているんですけど、この映画はなおさらでした。コロナ禍で先の見えない時代だからこそ前を向いていきたい。何を糧に前に進んでいけばいいのかというのを、皆がしっかりもてたらという思いがあって。侑子さんの『未来はそれぞれの選択の先にある。選択することで変えられる未来もある』というセリフには、わたし自身も背中を押されました。撮影が始まった時はコロナ初期で混乱していたこともあり、だからこそ今このメッセージを伝えるために作っていこうね、とスタッフ間で意識を共有していました」

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 なお、原作では四月一日が願いをかなえてもらう代わりに“ミセ”で働く設定だが、映画では四月一日が「自分の最も大切なもの」がわからないために“ミセ”で働きながらそれを探す展開にアレンジされている。

 「自分にとって何が大切なのか。失ってから気づくことはたくさんあると思うんですけど、日ごろは意外とわからないもの。だけど、それが何なのかと立ち止まって考えることって実はすごく重要なのではないかと。わたし自身、この映画をつくりながら『なるほど、これがわたしにとって大事なことなのかも』と新たな発見がありましたし、観ていただく方にとって、この映画がそれを考えるきっかけになったらうれしいです」

冒頭に原作ビジュアルを挿入

蜷川実花監督

 ところで、映画の冒頭に四月一日、侑子、百目鬼(どうめき)らの原作ビジュアルが登場するが、これにはどんな意図があるのか。「これはプロデューサーのアイデアなんですけど、まず原作に対するリスペクトを入れたかったというのはあります。制作過程では後半につくったもので、原作と比較しても遜色ない仕上がりになったと自信を持てたので、危ういチャレンジとも思いましたが、ある意味、決意表明として入れさせていただきました」

 美しく強く、母性も感じさせる魔女のような存在の侑子と、自身の特殊能力に苦しみながらも侑子との出会いを経て成長していく四月一日。演じる柴咲コウと神木隆之介は、ともに映画では蜷川監督と初タッグとなった。柴咲については「とにかく難しい役だけど、それが成立したのはコウちゃんだったから。二人で衣装やメイクなどディテールを話し合って役を定めていったような感覚がありました。コウちゃんの芝居はほとんど直していません」と蜷川監督。一方、神木に対しても「現場で彼がどんどんわたしの求める四月一日像を学習して提案してくれて、『本当にそう! よくわかるね』と感動していました。前髪の目のかかり方ひとつにしても『こういうのが好きですよね?』『はい好きです!』って(笑)」と惜しみない賛辞を送っていた。(編集部・石井百合子)

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