声優・野沢雅子、孫悟飯とピッコロの絆は親子以上「生半可じゃない」
アニメ「ドラゴンボール」シリーズで主人公・孫悟空の声を担当する声優の野沢雅子が、劇場版最新作『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』の公開を前に、本作で満を持してメインを張る悟空の息子・孫悟飯と、厚い信頼で結ばれたピッコロとの師弟関係について語った。
2018年公開の『ドラゴンボール超 ブロリー』から4年ぶりとなる新作映画。しかし野沢は「今年はなくても、必ず来年には新作があると思って待っているんです。悟空は奥に引っ込んでるような人じゃない。平和のためには、どんな所にでも行くような人だし、私も悟空と一緒に生きてますから」と準備万端だったようだ。
ただし、本作では、悟空よりも息子の悟飯がメイン。かつて悟空の活躍で壊滅した悪の組織・レッドリボン軍の意志を継ぐ者たちが生み出した、人造人間ガンマ1号とガンマ2号を相手に、悟飯の本気が炸裂する。
一心同体で悟空を演じてきた野沢にとっても、悟飯は息子のような存在。それだけに「悟飯がメインになるって聞いた時は、やった！ 悟飯の番が来た！ って思いました。いつか絶対に来ると思っていましたし、それは、悟空もすごく喜ぶことですから」と笑みを浮かべる。「悟飯くんのことは自分の家族、息子のような気がしてるんですよ。もちろん演技には出しませんが、どこかで見守っているような気持ちがあるんだと思います」
父親と正反対の性格で、幼いころは、泣き虫で甘えん坊だった悟飯。そんな悟飯を厳しく指導し、たくましく成長する手助けをしたのがピッコロだ。固い絆で結ばれた師弟コンビの共闘も本作の見どころ。野沢は「2人の絆って、誰が見ても生半可なものじゃないことがわかりますよね。悟飯くんにとって、ピッコロさんは親以上の存在なんだと思うんです。ピッコロさんにとっても、悟飯くんは大切な宝物。自分の分身ぐらいに思っているんでしょうね」と語る。
ただ、かつての悟飯の修業シーンでは、ピッコロのあまりの厳しさに、演じる古川登志夫に文句を言ったこともあったという。「だって、悟飯くんはまだあんなに小さいのに、あんまりに厳しいもんだから。『ちょっと古川くん、冗談じゃないわよ。相手は子供よ？ 何なのあの態度は』って言ったら、古川くんも『いや僕もわかってます。大丈夫ですよ。ピッコロもわかってますから』って（笑）。私のなかで、ピッコロさんと古川さんはイコールですからね」
「でも私ね、置いてきぼりになって、おなかをすかせている悟飯のそばに、ピッコロの置いてくれたリンゴがあるシーンがすごく好きなんです。あ、これがピッコロっていう人なんだって思って、それから好きになりました。それと、悟飯に危険が迫った時、身を挺して守ってくれた時ですね。ああ、ピッコロは悟飯のために命を捨てても惜しくない、捨て身で守ってくれる人なんだって。もちろん、悟飯もそう思ってるはずです」
常に、自分のことのように演じるキャラクターについて語り「悟空を演じるんだったら、やってる間は悟空でいなければダメ。自分を出しちゃダメですよ。私じゃなくて、この人（役）がしゃべってるんですから」という野沢。そこには、役者として貫く姿勢が関係しているようだ。「私はただ自然体でやっているだけ。作るのは嫌なんです。私は（役に）命を与える人ですから、自然体でいて、表に出てくれれば一番良いなって、それだけ。収録でも大変な思いをしてるとは思うんですけど、絶対に『疲れた』なんて口に出したことはありません。そう言ったとたん、役から離れちゃうでしょう。スタジオにいる間は一体化していたいんです。だから敵役の人のこともすっごく憎らしくなっちゃうんですよ。声を入れているのは仲間なのに、頭にくる人だなぁって。終われば普通なんですけどね」
「でもね、仕事が終わったら悟空からは抜けたいんです。役者として、そうでなくてはダメだと思うんです。ちょっとでも次の作品に役を引きずったら、ダメになってしまう。自分の作品でそれは、許されないと思ってるんですよ」
そんな野沢には、若手声優との間にも垣根は存在しない。「遠慮しているようなら、だめだよって言いますね。やりにくいこともあるらしいんですけど、それはだめだよって。バトルのシーンで恐縮なんかされたら困ります。音が落ちちゃうでしょう。だからね、もしちょっとでも感じたら、私と思わないで、悟空と思ってよ！ って言うと思います」（編集部・入倉功一）
映画『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』は6月11日全国公開
