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動画配信戦国時代を勝ち抜くには「観たい」を満足させる独自コンテンツが鍵

国内外ともに熾烈な争いになっている動画配信サービス。勝ち抜くのはどのサービスか?
国内外ともに熾烈な争いになっている動画配信サービス。勝ち抜くのはどのサービスか? - Chesnot / Getty Images

 いつでもどこでも安価に動画コンテンツを楽しめる手軽さやコロナ禍における巣ごもり需要もあって、ここ日本でも急速に普及が進んでいる定額制動画配信サービス(SVOD)。GEM Partners の「動画配信(VOD)市場5年間予測(2022-2026年)レポート」によると、2021年度の市場規模は前年比19.9%増の3,862億円、これにレンタル型動画配信や動画配信販売なども合わせた動画配信全体となると、実に4,614億円(前年比19.0%増)という巨大市場へと成長している。既存の大手に加えて新規プラットフォームの参入が相次ぐ中、SVOD市場は今後どうなるのか? 海外の最新事情を踏まえつつ考察してみたい。(文・なかざわひでゆき)

 世界最大のSVODプラットフォームと言えばNetflixと Amazon Prime Video。しかし、その牙城も徐々に切り崩されつつある。今年の7月19日に発表された米Netflixの第2四半期(4月~6月)決算によると、会員数は前四半期から97万人減の約2億2,067万人。同社としては上場以来初めて、2四半期連続の会員数減少となった。また、今年2月にプライム会員の値上げを行ったAmazonも会員数が横ばいに(米 Consumer Intelligence Research Partners 調べ)。どちらも世界的なインフレによる消費者の節約志向が主な原因のひとつと考えられるが、しかしそれ以上に競合プラットフォームの増加は見過ごせない要因であろう。

 米国では、2019年11月にサービスを開始したディズニー傘下のDisney+(ディズニープラス)を筆頭に、ワーナー傘下の HBO Max やパラマウント傘下のParamount+(パラマウントプラス)など、大手コンテンツホルダーが独自のSVODプラットフォームを開設。当然ながら、当初Netflixや Amazon Prime Video に提供していた自社コンテンツも引き上げていく。それでもNetflixはどちらかというとオリジナル作品の方が主力だったわけだが、しかしこの分野でもアップル社の巨大資本をバックにオリジナルの映画やドラマを配信するApple TV+が登場。日本では劇場公開された(現在は Amazon Prime Video で配信)アカデミー賞受賞作『コーダ あいのうた』(2021)も、実はApple TV+のオリジナル映画である。

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 こうした強力なライバルたちが、ここ1~2年で目覚ましく躍進。Disney+は今年の7月時点で全世界の会員数が1億5,000万人を突破したと発表し、Apple TV+も2021年1月~2022年8月の間に29%も業績を伸ばしているという。そんな中、Netflixは看板ドラマシリーズ「ストレンジャー・シングス」の最新シーズンを投入し、11月1日からは広告付きの定額プランを北米を始め複数の国で導入することに。Amazon Prime Video も、ドラマ史上最高と言われる巨額予算を投入したオリジナル新作シリーズ「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」の配信をスタートし、さらにユニバーサル映画とコンテンツの独占配信契約を結ぶなど、両者ともに懸命な巻き返しを図っている。このように、海外の動画配信市場は既に戦国時代の様相を呈していると言えよう。

 振り返って日本はというと、Netflix、Amazon Prime Video が強く、Hulu、U-NEXT、Disney+が追随している。3年連続でシェア1位のNetflixは前年比3.1%で拡大を続けており、日本発のU-NEXTも会員数を順調に増やしている(GEM Partners 「動画配信(VOD)市場5年間予測(2022-2026年)レポート」より)。その一方でdTVやTELASA、Paraviなどの競合サービスも徐々に増えており、中でもDisney+は売り上げで前年比86%増の伸びを示している。まだ海外ほどの激戦状態とは言えないかもしれないが、日本のSVOD市場もこれから生存競争がますます厳しくなっていくことは避けられないように思う。

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 そんな来るべき動画配信戦国時代を勝ち抜いていく鍵は、当たり前かもしれないが「コンテンツ力」に尽きるだろう。Netflixが国内外で強いのも、質の高いオリジナル作品を世界中から集めているから。アカデミー賞を席巻した『ROMA/ローマ』(2018)や『アイリッシュマン』(2019)、『シカゴ7裁判』(2020)、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021)などのオリジナル映画は言うに及ばず、世界的なブームを巻き起こした「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や「イカゲーム」などのオリジナルシリーズはNetflix最大のセールスポイントである。

 また、Amazon Prime Video やU-NEXTは、洋画も邦画も新作だけでなく旧作も充実。SVODサービスが普及し始めたころ、どこも新作・準新作がメインで旧作が少ない! 特に往年の名作がほとんどない! というのが映画ファンの強い不満だったが、この両社がようやくそのあたりをカバーしてくれるようになった。さらに、Amazon Prime Video は「ロード・オブ・ザ・リング:力の指輪」などのオリジナル作品にも力を入れているし、U-NEXTはワーナーとの独占契約でHBOと HBO Max のオリジナル作品(ドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」の前日譚シリーズ「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」など)を国内向けに配信している。一方、日本テレビが国内事業を継承したHuluは、その強みを生かしたオリジナル作品を含む国内ドラマやバラエティーに注力(もちろん2023年春配信予定の木村拓哉が出演するドラマ「THE SWARM(ザ・スウォーム)」などの海外映画・ドラマもラインナップ)。それぞれがユーザーの「観たい」を満足させる独自のコンテンツをそろえることで、他社との差別化を図っているのだ。

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 なので、Disney+が急速に躍進している要因も、ディズニー作品や20世紀スタジオ(旧:20世紀フォックス)作品などの新旧コンテンツはもちろんのこと、『スター・ウォーズ』の実写ドラマ「マンダロリアン」や「オビ=ワン・ケノービ」、マーベルの実写ドラマ「シー・ハルク:ザ・アトーニー」や「ロキ」などのオリジナルシリーズ、実写版『ピノキオ』や『プレデター:ザ・プレイ』などのオリジナル映画の充実ぶりと関係があるように思う。やはり、ここでしか観られないスペシャルなコンテンツは大きな武器だ。そういう意味で、アジア発のドキュメンタリーばかりを配信するアジアンドキュメンタリーズや、インディーズ映画に特化したDOKUSO映画館など、ニッチなマーケットを狙った専門性の高いプラットフォームも、固定ユーザーを囲い込んで細く長く生き残るには有効なビジネスモデルかもしれない。

 インプレス総合研究所が今年6月に発表した「動画配信ビジネス調査報告書2022」によると、従来型のテレビ視聴の利用率が大きく下がる一方、有料動画配信サービスの利用率は前年比で3.3ポイント増加して全体の28.9%に成長。国内のSVOD利用者が着実に増えていることを裏付けている。おのずと、これからプラットフォームもコンテンツもどんどん多様化していくはずだ。われわれユーザーにとっての問題は、選択肢が増えすぎて選びきれなくなることだろうか。なんともぜいたくな悩みではある。

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