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「罠の戦争」人気の理由は?50代間近の草なぎ剛だからこその魅力

「罠の戦争」5話より
「罠の戦争」5話より

 草なぎ剛主演のドラマ「罠の戦争」(カンテレ・フジテレビ系、毎週月曜よる10時~放送)が好調だ。視聴率は冬ドラマの中で上位に位置し、SNSでもタイトルが国内のTwitterトレンドで初回から4話まで連続1位となる強さをみせている。草なぎ剛にとって6年ぶりの連続ドラマ主演となる本作は、「銭の戦争」(2015)、「嘘の戦争」(2017)に続く「戦争」シリーズの第3弾(脚本はいずれも後藤法子が担当)。前2作と比較しつつ、「罠の戦争」の何が視聴者を惹きつけるのかを考えてみたい(※5話までのストーリーに触れています)。

【画像】草なぎ剛の演説シーン話題に!5話場面写真

テーマは「復讐」

重症を負った息子の泰生(白鳥晴都)に何が起きたのか……?

 草なぎ演じる主人公の鷲津亨(わしづ・とおる)は、長年にわたって内閣府特命担当大臣・犬飼孝介(本田博太郎)に尽くしてきた有能な第一秘書。しかし、ある日、愛する息子の泰生(白鳥晴都)が歩道橋の上から何者かに突き落とされて意識不明の重体に。真犯人を探そうとした鷲津だったが、なぜか犬飼から事故として処理するよう命じられてしまう。

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 誰かが事件を隠蔽しようとしている--。疑念を深めた鷲津は、手始めに犬飼の懐刀でパワハラ常習犯の政策秘書・虻川(田口浩正)を追放。大臣秘書官なのにまったく仕事をしない上、暴力癖がある犬飼の息子・俊介(玉城裕規)も警察に連行させる。そして犬飼の収賄の証拠を掴んだ鷲津は、犬飼を失脚させることに成功する。

 しかし、犬飼は事件の真相を知らなかった。政界のボス、鶴巻幹事長(岸部一徳)と世襲議員の鷹野(小澤征悦)は、犬飼の後釜として鷲津の選挙擁立に動き出す。鷲津は事件を隠蔽しようとする権力者たちと戦うため、国会議員になって永田町に乗り込むことを決意する。はたして真犯人は誰なのか、事件の真相は? 敵対する強大な権力者たちに対して、鷲津は次々に罠を仕掛けていく。

スピーディで予測不能な展開

総理大臣の竜崎(高橋克典)は白か黒か……

 「罠の戦争」は、1話の尺が長くて話数の多い韓国ドラマなどと比べても、かなり展開がスピーディーだ。1話ごとに倒すべき相手が登場しては鷲津が罠を仕掛け、一人ずつ倒していく展開になっている。

 韓国ドラマのリメイクだった1作目「銭の戦争」も復讐がテーマだったが、復讐の対象は人というより「金」であり、主人公の白石(草なぎ)が父親の仇・赤松(渡部篤郎)と協力関係になるなど、ひねりの効いたストーリーだった。「嘘の戦争」は主人公の一ノ瀬(草なぎ)の復讐の対象がニシナコーポレーションという巨大企業であり、末端の関係者に復讐を果たしても本丸にたどり着くまでに時間がかかった(その分、終盤はカタルシスがあった)。

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 「罠の戦争」は展開がスピーディーだが、隠蔽の泥沼がどこまで続いているのかわからないため、今後のストーリーは予測不能だ。幹事長の鶴巻は隠蔽に関与しているのか、総理大臣の竜崎(高橋克典)は敵か味方か、犬飼と因縁のある鷲津の秘書見習い・蛯沢(杉野遥亮)はどうストーリーに関わっていくのかなど、気になるポイントは多い。

円熟味を増した草なぎの演技

 6年ぶりの民放連続ドラマ主演となる草なぎ剛の演技はますます円熟味を増している。かつてはドラマ「いい人。」(1997)に代表されるような優しく穏やかな人物を演じることが多かったが、そんなイメージをかなぐり捨てたタイトルの一つが「戦争」シリーズだった。

 「銭の戦争」では、相手が誰だろうと恐れずに悪態をつくような、不敵でギラついたダークヒーローを演じてみせた。「嘘の戦争」で演じたのは、目的を着実に遂行するクールな詐欺師でありつつ、家族の仇と相対すると怒りを爆発させるような復讐の鬼。どちらも40代前半の草なぎによく似合っていた。

 「罠の戦争」で草なぎが演じるのは、脂の抜けたような静かな男だ。鷲津は有能な秘書として、政治家のどんなトラブルも無表情で処理してきた。彼のたたずまいからは、どこか諦念のようなものが滲んでいる。だが、息子の事故をきっかけに、内面でふつふつと怒りを溜めはじめ、後半にかけて怒りを徐々に表現するようになっていく。50代にさしかかろうとする今しかできない演技を見せている。

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徹底した「弱者」の視点

鷲津がいち早くパワハラ被害に気付いた秘書の蛍原(小野花梨)

 鷲津は「弱者」という言葉を繰り返し口にする。重傷を負わされた子ども、パワハラ被害に遭う女性秘書、過労死する中小企業の社長、認知症の老女と家庭で虐げられる主婦など、ドラマでは一貫して弱者の姿が描かれ続けている。

 その一方で、汚職を繰り返し、都合の悪いことは隠蔽して、平然と弱者を踏みつけるような政治家たちはのさばっている。ドラマは現実とも地続きだ。第2話で秘書の蛍原(小野花梨)が言った「家宅捜索されて慌ててパソコンのハードディスクをドリルで壊しまくった議員」というセリフはかつて実際にあった事件を連想させる。偶然だが、政治家ジュニアの秘書官が騒動を起こしているのも同様だ。クリーンな大臣を演じる片平なぎさは、ドラマ出演に際して「現実はドラマのようにはいかない! かもしれませんが、悪事はいつか暴かれ、裁かれる!! と信じたくなるドラマです」とコメントを出している。

 腐った権力者たちに戦いを挑もうとしている鷲津は弱者の代表だ。善悪のコントラストがくっきりしているので、「復讐もの」としてのめり込んで観ることができる。だが、今後の展開も一筋縄ではいかないだろう。「力」を欲して国会議員に当選した鷲津が、権力に染まってしまう可能性だってある。後半の展開から目が離せない。(大山くまお)

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