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「どうする家康」脚本・古沢良太、批判も覚悟した築山殿事件の解釈に込めた思い

第25回「はるかに遠い夢」より瀬名(有村架純)と家康(松本潤)
第25回「はるかに遠い夢」より瀬名(有村架純)と家康(松本潤) - (C)NHK

 松本潤が徳川家康役で主演を務める大河ドラマ「どうする家康」(毎週日曜夜8時~NHK総合ほか)の脚本を手掛けた古沢良太が、本作でキーパーソンとなった有村架純演じる家康の正室・瀬名に込めた思いと、息子・松平信康(細田佳央太)と共に死に至った“築山殿事件”の解釈を明かした。

【画像】築山殿事件、涙の名場面集

 瀬名は、今川家家臣・関口氏純(渡部篤郎)の娘で家康にとって初恋の女性。家康の妻となり、信康と亀姫(當真あみ)を授かる。築山殿事件とは、信康の妻・五徳(久保史緒里)が父・信長(岡田准一)に送った訴状がきっかけとなり、瀬名と信康が命を落とした事件。信康は自害とされ、瀬名は処刑、自害など諸説あり、その背景には二人が武田と通じていたとの見方もある。しかし本作では瀬名が家康と恋愛結婚し、聡明で心優しい女性として描かれていたこともあり、放送初期からこの事件がどのように描かれるのか注目を浴びていた。古沢は二人を恋愛結婚とした理由、そして本作における瀬名の役割を以下のように語る。

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 「恋愛結婚といえど、今川義元(野村萬斎)の意志で結婚しているし、家康と瀬名が互いをどう思っていたのかというのは解釈次第なので、そこまで史実と相反することではないかなと。なおかつ恋愛結婚とした方がロマンチックだと思ったので、そういう展開にしました。そして、 このドラマでは瀬名がすごく重要な人物です。家康を大きく変え、彼が成し遂げなければならない宿命みたいなものを残していくポジションのキャラクターにしたかった。戦のない世を作るというのは、当時としては信じがたいようなことだったと思うんだけど、その夢、目標を家康に最も強烈に託していく人物は誰かと考えると、それは家康にとって最愛の人でなければならないと僕は思ったので」

 本作における築山殿事件は、瀬名が争いを避け、他国から奪うのではなく与えあう“慈愛の心で結び付いた国”を創る計画を推し進めた結果として描かれた。家康はそんな瀬名の思いを受け止め、一度は武田勝頼(眞栄田郷敦)をも動かしたが最終的には勝頼が裏切り、瀬名は家康の行く末を案じて自ら命を絶つ選択をした。瀬名が慟哭する家康の目の前で命を絶つ第25回「はるかに遠い夢」は前半の山場となり、多くの涙を誘った。その道筋を考えるうえで、古沢は「人間を一面的に解釈する歴史観がすごく嫌だった」と明かす。

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 「築山殿事件は現在だと瀬名と信康が密かに織田と手を切り武田と通じて新しい軍事同盟を作ろうとして、それが家康に知られることとなって、結果的に処刑なのか自害なのか諸説ありますけど、二人が命を落とすことが史実です。ですから、ドラマでも起こっている出来事は変えていなくて、ただ瀬名が何を思ってそうしたのかとか、 何を目指していたのか、ということの解釈を変えているんですね。従来だと瀬名が悪女だったからだとか、家康と仲が悪かったからとかいう解釈が多いですけど、そういうふうに人間を一面的に解釈する歴史観が僕はすごく嫌で。僕らの日常生活で、会ったこともない人のことを“あの人はこういう人”だと断ずる人がいたら愚かな話じゃないですか。でも、歴史上の人物に対しては多くがそれをやりたがる傾向にある。どんな人だったかなんて僕らにはわからないよ、歴史っていろんな解釈ができるから面白いんだよっていうのが、僕が提示したかったことなので反論、異論もたくさんあるだろうということも覚悟の上でこの筋書きを考えました。でも解釈が成り立つのか成り立たないのかみたいな議論が白熱してくれたら、それは一番僕が望んでいたことで。ドラマも盛り上がるし、歴史の解釈の面白さを知って歴史好きの人が増えるんじゃないか、といった期待もありました」

 11月27日にNHKホールで開催された、主演の松本をはじめ大森南朋山田裕貴杉野遥亮ら12名のキャストが集結したイベント「どうする家康」ファン感謝祭では、「ファンが選んだもう一度見たいあのシーンベスト10」で、「瀬名の最期」が1位に選出された。事件の展開への解釈に賛否はあるかもしれないが、多くの人の心を揺さぶったことは確かだ。(取材・文:編集部 石井百合子)

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