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『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』はこうして作られた!『パディントン』ポール・キング監督の映画術

来日時のポール・キング監督
来日時のポール・キング監督 - (c) 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

 映画『パディントン』シリーズで名をはせたポール・キング監督が来日時にインタビューに応じ、脚本・監督を務めた新作『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』をどのように作り上げていったのかを明かした。

【動画】『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』予告編

 2度実写映画化されたロアルド・ダールの児童小説「チョコレート工場の秘密」に登場するエキセントリックな工場長ウィリー・ウォンカの、若き日を描いた本作。脚本を執筆するにあたっては、「チョコレート工場の秘密」に加えてダールの著作を全て読み、彼の魂とテイストに自分を合わせることから始めたという。

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 「『チョコレート工場の秘密』は子供の頃に大好きだった本で、ロアルド・ダールを知るきっかけになった本でもある。彼が書いたものは『Guide to Railway Safety(訳:鉄道安全ガイド)』まで全て読んだよ。退屈そうなタイトルだけど、やっぱりロアルド・ダールだからおかしくて、ワイルドで、アナーキー。安全用のしおりをあんな風に書けるのは彼だけだと思う(笑)。映画制作のプロセスの中で、一番良かった部分かもしれない。だって、ロアルド・ダールの物語を日がな一日読むことができたからね(笑)」

 脚本は『パディントン2』でも組んだサイモン・ファーナビーと共に書き進めていった。「サイモンとは一緒に仕事をしてもう何年にもなる。彼は優れたストーリーテラーにして素晴らしい喜劇俳優で、警備員役でこの映画にも出ているよ。彼とは互いにセリフを言い合い、演技しながらシーンを書いていくんだ。僕はひどい俳優だけど(笑)、サイモンはとても面白い。そういうわけで、脚本が完成する頃には、僕の頭の中では全てのキャラクターがサイモンの声になっている(笑)。だからいつも、他の俳優たちが初めてセリフを読む時は神経が磨り減るんだ。心のどこかで『どうかサイモンと同じくらい面白くありますように!』と願ってしまうから(笑)。もちろん、僕たちは幸運で、素晴らしいキャストたちが役をもう一段階高めてくれたわけだけどね」

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 そしてサイモンと最初のドラフトを読んだ時に、楽曲こそがこのストーリーを語るベストな方法だと理解したのだという。「僕は監督でもあるから、書いている時にもビジュアル的な瞬間のことを考えている。例えば『パディントン2』で飛び出す絵本のシークエンスを書いたのは、あれを監督したいと思ったから(笑)。本作では“ここには楽曲(ミュージカルシーン)があるはずだ”というところで、歌詞を書こうとしたんだ。ロアルド・ダールはいつも韻を踏んでいるから、僕たちもそれをやったらどうだろう? とね。そしてソングライターのニール・ハノンに歌詞を渡して、彼がうまいこと楽曲を完成させてくれたんだよ」

ポール・キング

 キャスト陣が“実写版クマのプーさん”と表現する通り、インタビューでも物腰が柔らかく、愛らしさすら感じさせる温かい人柄のキング監督だが、映画制作においては完璧主義者だ。それは演技、撮影、衣装、美術、音楽の全てが温かく美しいストーリーと完璧に調和した『パディントン』シリーズの完成度を見れば明らかかもしれないが、本作においてもウィリー・ウォンカの衣装一つとってもそこにはバックストーリーがあり、細部までこだわりが詰まっている。

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 「ウィリーの衣装を決めるのは、長いプロセスだった。素晴らしい衣装デザイナーのリンディ・ヘミングとは、そうした洋服がどこから来たのかという話をいつもしていた。彼はマジカルなキャラクターで時にマジシャンのように描かれるから、多分“チョコレートが魔法”ということなんだろうけど、僕は文字通り、昔ながらのマジシャンのような見た目にしたいと思っていた。トップハットとフロックコートは本や映画の中でも描かれているものだけど、本作の彼は若い。彼は世界になじみたいと思ってその服を着ているけど、ハットもコートもちょっとボロボロ。何者かになろうとしているけど、まだ自分自身を知らない。そうしたことを衣装で表現するのは、すてきなチャレンジだった」

 チョコレート組合の妨害を受けたウィリー・ウォンカが隠れてチョコレートを販売するべく、カフェ店員、トラムの車掌、美容師などに次々と変装していくシーンにも裏話が。「本編には入れられなかったんだけど、宿屋にいるコメディアンのラリーがそうした全ての衣装が入っているトランクを持っているという設定があって。彼がウィリーの衣装を変えていっているんだよ(笑)」

 そして実際の撮影でも、「これぞ」という瞬間を確実に手にするために何度もテイクを重ねていく。「テイクはたくさんやるから、時にみんなをイラつかせているかも。僕は“何が僕を笑わせたのか”ということについての記憶力がいいんだ。リハーサルもたくさんやるんだけど、僕を笑わせたり、感情がこみ上げたりした時のことをよく覚えているから、撮影日になって『なぜあれが感じられないんだ!』と思うこと以上にフラストレーションを感じることはない。良かった時に感じた気持ちをはっきりと覚えているから、今何が足りないのかと突き詰めることになる。あれはストレスだね……。とにかく、良いものを確実に得るために、十分な数のテイクを撮るのが好きだよ。特にこういう映画では、オーガニックでおもしろく、自然発生的であるのと同時に、ダンスシーンなどはとてもコントロールされ、正確でなければならないという技術的な側面があるから」

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 時には想像通りにするためにがむしゃらになってしまうようなアイデアがあることもあるものの、キング監督を真に満足させるのは、俳優陣とカメラの後ろのアーティスト、技術者たちと共に働くことで、自分の想像を超えるものが出来上がった時なのだという。「そうでなければ、僕は間違った人たちを雇ってしまったことになるからね(笑)。僕が思うに、監督は“(映画の)トーンの管理人”なんだ。たくさんの人々がそれぞれのアイデアを持っていて、監督が物事を考え付くのを助けてくれる。だけど『イエス。それはこの世界に属しているね』、もしくは『本当にラブリーなアイデアだけど、これは違うかな』と言うのは、監督次第。全ては監督というフィルターを通して出来上がるんだ」。彼はまさしく、その“トーン管理”が極めて秀でた監督といえる。(編集部・市川遥)

映画『ウォンカとチョコレート工場のはじまり』は公開中

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