『パディントン』女優がまさかの狂気…A24の寵児『ブリング・ハー・バック』監督が引き出したダークサイド

A24配給で北米公開された長編デビュー作『TALK TO ME/トーク・トゥ・ミー』(2023)で、世界中の映画ファンの注目を浴びたオーストラリアの兄弟監督ダニー&マイケル・フィリッポウ。A24と本格タッグを組んだ最新作『ブリング・ハー・バック』が日本公開を迎える兄弟が、名女優の起用で描いたリアルな人間の怖さと、“実物”にこだわったゴア表現へのこだわりを語った。
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『トーク・トゥ・ミー』のスマッシュヒットで、一躍ハリウッド注目のクリエイターに踊り出たフィリッポウ兄弟。その後、米レジェンダリー・ピクチャーズなどが製作する実写版「ストリートファイター」の監督に就任したが降板し、待望の長編2作目となったのが今回の『ブリング・ハー・バック』だ。
降板は主にスケジュールの問題だったと明かしたダニーは「『ストリートファイター』の映画化には本当に興奮していて、レジェンダリーも僕らのスタイルを歓迎してくれていたんです。実現できなかったのは少し悲しいですね」と苦笑。そのうえで、『ブリング・ハー・バック』について「キャラクターに至るまで、全てを僕らがコントロールするパーソナルな作品になりました。少し怖い決断でもあったけど、今はそれが正しかったことを願っています」と振り返る。
本作は、父親を亡くしたある兄妹が、里親のもとで恐怖に直面するホラー。兄のアンディと視覚障害のある義理の妹パイパーは、親切な里親ローラと暮らし始めるが、パイパーに向けるローラの異様な愛情に違和感を覚えたアンディは、徐々に秘められた“恐ろしい願い”と“禁断の儀式”に迫っていく。
里親のローラを演じるのは、『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)などで知られる名女優、サリー・ホーキンス。『パディントン』シリーズのブラウン夫人役など、優しく親しみやすい役柄で知られるサリーだが、フィリッポウ兄弟は、ローラ役の筆頭に彼女の名前を挙げていたという。
「ローラ役にはどうしても、実力のある性格俳優が必要でした。サリーなら申し分ないし、本格的なスリラーやホラー映画をやっていなかったこともエキサイティングでした。彼女のダークな側面を引き出すことができるんですから。優しくて、いかにも母親という感じの人が、イメージを裏切る怖さを見せるというアイデアも気に入っています」というダニー。マイケルも「それと、ローラは実際に母性あふれる女性でもあるんです。そこがうまくサリーにフィットしたと思います」と語る。
その言葉の通り、心優しい母親にしか見えないローラが、ふと見せる狂気に背筋が凍る本作。一方で、ホラー映画の醍醐味であるゴア描写も本格派だ。もともとフィリッポウ兄弟は、登録者数696万人以上を誇るYouTubeチャンネル「RackaRacka」で、体を張ったスタントや特殊メイクを駆使した過激な映像を投稿し、絶大な支持を得たクリエイター。それだけに、暴力描写にもリアルさを求めている。
「微調整のためにデジタルに頼ったけど、ゴア表現は基本的に実物を使って撮影することにこだわりました。スクリーンに圧倒的な生々しさをもたらしてくれるし、実際に流れる血や、それに対する俳優の反応や芝居は、絶対にデジタルで補正することはできませんからね。僕らにとって極めて重要な要素です」とダニー。マイケルも「僕らは映像作りを始めた子供のころから、ずっとこのスタイルですよ。それは今でも変わりません(笑)」と同意する。
一方でダニーは「もちろん、キャラクターやテーマに結びついた、必要不可欠な描写であることが重要です」と、ただ残酷なだけではだめだと注意。「僕らの映画におけるゴア表現は、何を表現したいかを明確に理解して、必要性があるものでないといけない。ただ衝撃を与えることに価値を見出すのではなくてね」とダニー。それに対してマイケルは、その意見に同調しながら「まぁ、とはいえ、やっぱりとことん残虐にやらないとだめだよね!」と笑みを浮かべた。
メジャーの大予算と引き換えに、自分たちのスタイルを貫いたフィリッポウ兄弟。ゲームクリエイターの小島秀夫監督との交流でも知られ、前作の来日時にコジマプロダクションを訪れたことが、日本での「最もクレイジーな出来事だった」と振り返る。「最高でしたよ。隠し部屋や奇妙(ビザール)なものがたくさんあって、まるで未来なんです。小島監督は本当にクールで、彼を“友人”と呼べるなんて信じられないです」(ダニー)
そんな2人は、小島監督の大ヒットゲーム「DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH」内に「ミスター・インポッシブル」というキャラクターとして出演を果たす、奇跡のコラボも実現させた。「DEATH STRANDING」は、A24製作による実写映画化プロジェクトが進行中だが、これに参加したかったか尋ねると2人はご機嫌な笑顔。ダニーが「できたら最高ですね! 映画を撮るときは、僕たちを“ミスター・インポッシブル”として復帰させてほしいですね」と語ると、マイケルも「俺たちのスピンオフを作ってほしいくらいだよ!」と切望していた。(編集部・入倉功一)


