「べらぼう」禁断の恋を貫く理由 井之脇海&小野花梨が語る

横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほかで放送中)。女郎の恋は御法度とされる吉原で、惹かれ合う浪人・小田新之助と女郎のうつせみ。2日放送の第9回では二人がついに駆け落ちするさまが描かれ、新之助を演じる井之脇海と、うつせみ役の小野花梨が二人の関係や、逃走劇の裏側を語った(※一部ネタバレあり)。
本作は貸本屋から身を興し、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎(横浜)を主人公にしたストーリー。第9回では蔦重(横浜)と花魁・瀬川(小芝風花)、新之助とうつせみという2組のカップルを通し、吉原のシビアな恋愛事情が描かれた。
井之脇にとって、大河ドラマへの出演は「べらぼう」と同じく森下佳子が脚本を手掛けた「おんな城主 直虎」(2017)や、「平清盛」(2012)、「いだてん~東京オリムピック噺」(2019)に続いて4作目。小野は本作が初となる。吉原では女郎の恋は御法度とされているが、井之脇は、新之助とうつせみの禁じられた関係について「キャストが多いので出番が少ない中も、二人の親密さを見せつけていかないといけない。そんな中、フィジカルコンタクト……例えば手を握るとかいうものをどれくらい見せていくかを監督と話し合ったりしました。8回までの少ないシーンで二人の関係をいかに作り上げ、9回に繋げていくかを考えていました」と撮影を振り返る。
うつせみを連れての逃走シーンは9回の印象的なシーンの一つだが、井之脇いわく、このシーンがクランクイン初日の撮影。「話を聞いたときは“嘘でしょ?”って(笑)。なんでいきなりこのシーン? って思いました。でも、ポジティブに捉えて演技をしました。勢いでいった感じです。腹をくくって演技をしました」と回顧。新之助が刀を抜き、追っ手に立ち向かうシーンでは「見つかってダメだと思っている。それでも立ち向かわないといけない、せめてうつせみだけでも逃がしてやりたい。めちゃくちゃ怖いし、頭ではダメだと分かって震えもある……。みっともなく演じようとしたわけではないけど、結果そう見えていたらいいなと思いました」と芝居の狙いを説明。
また井之脇は「勢いで、がむしゃらに演技をすることで、二人の暴走のような恋を純度高く表現できると思っていました。見てくださる人が応援したくなるような二人に見えたらいいなと思っていました」と話す。小野もうつせみを演じる上で、9回の逃走劇に繋げるため、8回までの演技が重要だったと振り返り「(見つかれば)罰を受けることが分かった上で、ああいう行動に出る。切羽詰まった感じ、藁にもすがる感じを8回まででいかに伝えられるかが大切だと思いました」と話す。
小野は、新之助との恋を貫こうとするうつせみの心情に「吉原っていう光と闇を凝縮したような空間で生きているうつせみの行動は、全く理解できないものではないと思っています。吉原で生きていく中、出会った新様という存在がうつせみにとって、とても大きな存在だったというのは理解できます。その新様に光を感じて、どんな仕打ちを受けようが共に生きていくという覚悟を持つうつせみの気持ちに共感できました」と思いを巡らせる。
連れ戻されたうつせみは松葉屋の女将であるいね(水野美紀)から折檻を受ける。このシーンに対して小野は「(ああいうことは当然)あるだろうなと思いました。花魁は命をかけていますからね。花魁を管理する人たちももちろんそうです。だって明日食べるために生きているんです」と述べ、水を浴びらせられたうつせみの心情についても「(水を浴びせられた時の)感情は一つじゃないと思います。悔しさもあると思いますけど、分かっていてやった部分もあるので、うつせみは(あの間中)たくさんの感情を抱えていたと思います」と分析した。
小野は初共演となった井之脇に刺激を受けたようで「クランクインがあのシーンといっても、不安はなかったです。今まで海さんのお芝居や作品を見させていただいていたので信頼がありました。逆に今後、自分が作品を続けていく中、(井之脇のような信頼できる)お仕事を続けていかないといけないと思いました。今回のように、初めての共演で大事な芝居をしないといけないとなった時に小野花梨のこれまでの仕事を見ているから安心できると言ってもらえるようなお仕事の仕方をしていきたい」と笑顔をみせる。
撮影初日が過酷なシーンから始まったことについても井之脇と同様、ポジティブに捉えているといい、「肉体的に大変なシーンを先に終わらせて、あとは精神的に大変なことを積み重ねられる。そんなに悪いことじゃないと思いました」と理解を示す。また、井之脇の生み出す新之助像についても「新之助を見ていて、海さんの人柄がこんなにも役に溢れ出るんだと感心しました。うつせみがなぜ新之助さんに惹かれたんだろうという部分は言葉にできるもの、言葉で説明できるものではないんです。新之助さんの佇まいとか、言葉にならない部分に惹かれたんだというのが(新之助を見ることで)わかっていただけると思います」と話していた。(取材・文:名鹿祥史)


