『そこのみにて光輝く』監督×脚本家コンビの新作『ふつうの子ども』公開決定

国内外の映画祭で数多くの賞を獲得し熱烈なファンも多い『そこのみにて光輝く』を手掛けた、監督・呉美保×脚本家・高田亮のコンビによる完全オリジナルストーリーの映画『ふつうの子ども』が、9月5日に全国公開されることが決まった。
【画像】色褪せない名作…綾野剛&池脇千鶴&菅田将暉『そこのみにて光輝く』
本作は、いたってふつうの10才の小学生男子・上田唯士が、“環境問題・意識高い系女子”の三宅心愛に恋をしたことから始まる、子ども同士の人間ドラマを描いた物語。唯士は心愛に近づくため、共に“環境活動”に取り組み始めるが、そこにちょっぴり問題児のクラスメイト・橋本陽斗も加わり、3人の活動は思わぬ方向に展開していく。主人公・唯士を演じるのは、『LOVE LIFE』『ちひろさん』などにも出演している嶋田鉄太。唯士が恋する心愛役に、本格的な芝居は初めてだという瑠璃。2人と共に“環境活動”をする陽斗を味元耀大が演じる。
呉監督と脚本の高田がタッグを組むのは、『そこのみにて光輝く』『きみはいい子』に続き3作目。「ずっと前から子ども同士の人間ドラマを書きたいと思っていた」と言う高田は、本作を執筆するために小学校への取材を重ねてオリジナルのストーリーを書きあげた。また、呉監督も「ありのままの子どもを思いっきり描きたい!」と長年願っていたという。
プロデューサーの菅野和佳奈は本作を企画したきっかけに、先日オスカーに輝いたショーン・ベイカー監督が6才の少女の視点で描いた作品『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』の存在があったと明かし、「子どもがいるいないに関係なく、老若男女、今の日本の子どもたちから何か見えてくるものがあると思う」と語っている。3人のコメント全文は以下の通り。(加賀美光希)
呉美保(監督)
3年前の夏、菅野和佳奈プロデューサーから「子どもの映画を作りませんか?」とプロットを手渡されました。
奇しくも過去2作でご一緒した脚本家、高田亮さんによるオリジナルストーリーで、
天馬行空でありながらも泰然自若、久しぶりに味わう高田節にほくそ笑みながらも読了後には、
長年願い続けてきた私の夢「ありのままの子どもを思いっきり描きたい!」を叶えられるじゃない。
と奇跡の巡り合わせに武者震いせずにはいられませんでした。
子どもって、目の前のことに夢中で周りなんか見れなくて、ゆえに大人の想像を悠々と裏切ってくれるんですよね。
短絡的で狂熱的で、それこそが子どもである証。
今この瞬間だけ、を生きる子どもの姿にかつての自分を重ねてハッとさせられることもあります。
そんなありとあらゆる子どもの喜怒哀楽をスクリーンに詰め込みたい。
実はこの10年、私には「映画館に映画を観に行けない」という悩みがありました。
平日は仕事や家事に追われ、休日に映画館に行くのは我が子たちが観たい子ども向け映画、
それはそれで嬉しい時間ですがどこか物足りなさもあり。
かといって自分が観たい映画を子どもたちが楽しんでくれるとも思えず、映画館での鑑賞を諦めていました。
ふと思ったんです。子どもも大人も、共に楽しめる映画を作ればいいんだと。
子どもはワクワクドキドキできて、大人は愛しくも身につまされて、
願わくばあれこれ語り合えるような、ありそうでなかった子ども映画を。
今回、何度ものオーディションを重ねて、
嶋田鉄太、瑠璃、味元耀大をはじめとするたくさんの素晴らしい才能に出会えました。
キラキラと光輝く宝物のような子どもたちを、早く観てもらいたい!
これまでの映画作りで、最も自由に、何かを解き放つことができたかもしれません。
高田亮(脚本)
ずっと前から、子ども同士の人間ドラマを書きたいと思っていました。
見たいのは、日々ストレートな暴言を言い合い、大人からの小言に耐え、ほんの少しの時間でも楽しみを見つけようとする人間の強烈なパワー。子ども時代の恐怖。無邪気の危険性。
感情乱高下の中で生きる彼らの濃密で貴重な時間だ。
呉美保監督の映画には、それら全てがあり、全てが輝いているように見えました。
本当は、子どもに見えるものは大人にも見える。と思える映画です。
菅野和佳奈(企画・プロデューサー)
観た後に、思考が大きく広がり、社会のことまで延々と考えてしまう映画がある。私にとって、ショーン・ベイカー監督の『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』がそうだった。
主人公たちの生きる世界は厳しいが鮮やかで、映画が放つエネルギーのなんと眩しいことか!ステレオタイプな価値観の押し付けをせず、子どもたちの目線から見える世界を描いているだけなのに、心がざわつき最後にはガシっと掴まれた。なんだろうこの心のざわつきは?と考えてしまうのだ。あぁこんな映画をいつか日本でできたら──。
が、実現してしまった。
高田亮氏のオリジナルストーリーで呉美保監督が手がけた本作は、今の日本の子どもたちが持つエネルギーと危うさも含めた可能性を一切の偏見を入れず映し出した。このエネルギーをどう活かすのか?彼らの未来はこのままちゃんと輝いているんだろうか。
私には子どもがいないが、撮影でひと夏を子どもたちと過ごし、彼らの持つエネルギーに圧倒され、惹かれてしまった。子どもがいるいないに関係なく、老若男女、今の日本の子どもたちから何か見えてくるものがあると思う。


