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『侍タイムスリッパー』安田監督、映画も農業も「真心をこめる」快進撃に疲れなし「毎日がしあわせ」

『侍タイムスリッパー』安田淳一監督と主演の山口馬木也
『侍タイムスリッパー』安田淳一監督と主演の山口馬木也

 第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞した映画『侍タイムスリッパー』の安田淳一監督と主演の山口馬木也が15日、千代田区の日本外国特派員協会で行われた記者会見に出席し、外国人記者からの質問に答えた。

【動画】たった1館から奇跡のヒット!『侍タイムスリッパー』予告編

 本作は、現代にタイムスリップした会津藩士・高坂新左衛門(山口)が、時代劇撮影所で“斬られ役”として生きる姿を描いた人情時代劇。映画の上映が終わると、会場から自然と拍手がわき起こるなど、外国人記者たちにも受け入れられた様子だった。

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 昨年8月17日の公開以来、現在も異例のロングランヒットを記録中。第48回日本アカデミー賞で最優秀作品賞を獲得するなど、快進撃が続いている本作。そんな状況について、司会者から「疲れはないか?」と尋ねられた安田監督が「疲れはありません。驚く日々が続いてる感じで、毎日しあわせな気持ちでおります」と語ると、山口も「僕も監督同様、疲れはないです。ずっと夢の中にいるような気がしています。本当に今日もそうですが、この映画を通じて大勢の方とつながることができて、毎日、夢のように思っております」と続けた。

山口馬木也「毎日、夢のように思っております」

 山口には「新左衛門は泣き虫だが、海外映画祭の映像を見ると山口さんもすぐに泣いていた。これは山口さんに近いのか、それとも新左衛門を演じることで近づいたのか?」という質問も。それには山口も「どちらなのかはわからないですが、“感動しい”です。悲しいことで泣くことはないですが、感動して泣くことは多い気がします。それは新左衛門に近づいたのか、僕が近づいたのかはわからないですが、やっている時は新左衛門と同化したような気がしています。結果、僕は泣き虫なんだと思います」と返した。

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 また、映画がヒットした理由を聞かれた安田監督は「僕には『カメラを止めるな!』というお手本がありました。数年前にヒットしているのを見て、インディーズ映画もここまで大きくなれるんだと思い、作品について、プロモーションについて研究しました。つくり手に情熱があるのは当たり前。そこに論理的思考と戦略を立ててやりました」と返答。一方の山口は「まったくわからない、というのが正直なところです。お客さんによく聞くんです。なんでこんなに足を運んでくださるんですかと。多くの方が言うのは、またキャラクターに会いたくなるということなんです。それがどういうことなのか、僕にはわからないけど、映画館に来て、泣いて笑って。小さい宝物をポツポツと開くのが楽しい映画になったらいいなとは思っていました」と続けた。

 会見中、記者からは「新左衛門がテレビで時代劇を観るシーンで、伊丹十三監督の映画のVHSテープが置かれていたが、あれはどういう意味?」という質問も。司会者がすかさず「3回観たけど気付かなかった!」と反応して会場が大いに沸くなか、安田監督は「インディーズ映画ということで美術は自前で用意しないといけなかった。テレビの横にはなんらかのVHSテープを置こうと思い、自分の好きな映画を3本持っていきました。よく伊丹十三リスペクトと言われますし、実際にリスペクトをしています。伊丹作品には知らない世界を見せてくれるという面白さがある。この映画も斬られ役の世界や、映画がどのように作られているのか、というところを描いているので、遠からず伊丹監督の描いた世界観に似ているかと思います」と明かした。

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米農家の現状についても語った安田監督

 米農家も営む安田監督には「農業からインスピレーションを受けることは?」という質問も。それに安田監督は「日本の米作りは状況が厳しくて。ひと袋つくるたびに1,000円の赤字なんです。映画も自費で、たくさんのお金を使ったので、ヒットしなかったら農業を辞めなければならなくなるほどのピンチでしたが、なんとか映画もヒットして。これから何年かは、安心してお米を作っていける」と返答。さらに「映画も農家も丁寧に作ることが大事。真心をこめて、というと抽象的ですが、手を抜かず、じっくりと作るのは似ていると思います」と付け加えた。

 また、その質問に付随して、政府が備蓄米を放出しているにもかかわらず、米の販売価格がなかなか下がらない現状について意見を求められるひと幕も。安田監督は「国の政策によって、米農家はずっと振り回されてきた結果、今の状況があるので。農家の自助能力ではどうにもならないので、国政による大展開が行われないといけない。これは(自分が監督した)『ごはん』という映画でも描いたんですが、時給でいうと1円から12円の間。うちは1.5ヘクタールくらいで作っていますが、年間でいうと数十万円の赤字。主食を担う現場のすべてがそういう状況」と訴える。

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 さらに「『ごはん』という映画は……その解決策を描いてないということで批判もありましたけど、お父さんが頑張ったから、わたしたちもその思いを受け継いで頑張るということで終わるんですが、僕自身も父やおじいちゃんが一生懸命守ってきた米作りを守るためにやってきた……」と語るや、思わず感極まって涙ぐむ安田監督。「僕自身は映画がヒットして、何年かお米作りができるようになったということで、個人的な百姓一揆に成功したような気持ちです。百姓のせがれが侍をネタにして農地を守ったような気持ちがあります」とその思いを語るひと幕があった。(取材・文:壬生智裕)

映画『侍タイムスリッパー』は全国公開中

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