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石坂浩二「べらぼう」忠臣蔵オマージュで「元禄繚乱」吉良の最期思い返す

第6回より松平武元(石坂浩二)の「忠臣蔵パロディー」と話題を呼んだシーン
第6回より松平武元(石坂浩二)の「忠臣蔵パロディー」と話題を呼んだシーン - (C)NHK

 横浜流星主演の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」(毎週日曜NHK総合よる8時~ほか)で徳川幕府の老中首座・松平武元を演じた石坂浩二。劇中では、渡辺謙演じる側用人・田沼意次と対立するさまが描かれたが、2人の対峙シーンで特に注目を浴びたのが第6回(2月9日放送)で「忠臣蔵」を思わせる場面。「忠臣蔵」とゆかりが深い石坂が本シーンの裏側を語った。

【画像】「忠臣蔵パロディー」と話題を呼んだ第6回

 大河ドラマ第64作となる本作は貸本屋から身を興し、喜多川歌麿、葛飾北斎、山東京伝、滝沢馬琴、東洲斎写楽らを世に送り出し、江戸のメディア王として時代の寵児となった蔦屋重三郎(横浜)を主人公にしたストーリー。石坂にとって大河ドラマへの出演は、「江~姫たちの戦国」(2011)以来、14年ぶり10度目。「天と地と」(1969※上杉謙信役)、「元禄太平記」(1975※柳沢吉保役)、「草燃える」(1979※源頼朝役)の3作で主演を務めている。

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 ストーリーは主に吉原と江戸城をメインの舞台に展開していったが、石坂演じる松平武元は、徳川吉宗、家重、家治(眞島秀和)の将軍三代に仕え、家治からは「西の丸の爺」と呼ばれ信頼された老中首座。上野国館林藩主でもあり、その官位から「右近将監(うこんのしょうげん)」様とも呼ばれるエリートだ。対して、意次は足軽出身の出自から遠江相良藩(現在の静岡県牧之原市)の五万七千石の大名に上りつめた叩き上げ。意次は米による幕府の財政運営に限界を感じ、金を動かす政策に転換しようとするも、保守派の武元はそうした考えを嫌う。

 第6回では、武元が意次の反対を押し切って「上様のご威光を世に知らせる」ためと莫大な費用の掛かる日光社参を執り行うことを決めてしまう。その際、武元は「しかし、田沼のご家中は馬には乗れるのか? 武具、馬具、兜はどこであつらえるのか知っておるか」と意次に嫌味を言い、意次は苦々しい表情で「仰せの通り、右近将監様には高家吉良様よろしく、ご指南願えればと存じます」と嫌味で返す。それに対して、武元は「ほう、これは……一本とられたのう」と笑い飛ばす。石坂が1999年放送の大河ドラマ「元禄繚乱」で吉良上野介を演じたこともあり、SNSは「忠臣蔵」オマージュかと大いに沸いていたが、石坂は本シーンの撮影を「一番思い返したのは、『元禄繚乱』でわたしが演じた吉良が討ち取られるシーン、そしてそこに至るまでの経緯です」と振り返る。

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 「忠臣蔵」は、47人の赤穂浪士たちが藩主・浅野内匠頭の仇を取るために吉良邸に討ち入りをした「赤穂事件」を描くストーリー。この事件はたびたび映画やドラマ、歌舞伎の演目で取り上げられ、事件が発生したのが(旧暦)12月14日とあって毎年、年末になると恒例行事のようにドラマや映画が再放送されている。「元禄繚乱」は、舟橋聖一の「新・忠臣蔵」が原作。浅野内匠頭が殿中で吉良に切りかかり赤穂藩が取り潰しになった事件には、5代将軍・徳川綱吉の側用人だった柳沢吉保の思惑が絡んでいた……という展開だった。吉良は多くの作品で浅野内匠頭を追い詰めた憎々しい悪として描かれてきたが、石坂が演じた吉良はそれとは異なる趣向だった。

 「私としては、吉良は腹の中でずっと本当のことを知っていていいんじゃないかと。この前に同じ元禄ものとして『元禄太平記』の主演(柳沢吉保役)をやらせていただいているのですが、綱吉の時代になると幕府としては高家(※江戸幕府の儀式や典礼を司る役職)がいらなくなるんですよね。高家というのは天皇に拝謁しては位をもらっていたわけですが、一番偉いのは徳川という風にならなければいけない流れの中で、幕府からすると『赤穂事件』は高家を排除するチャンスと見たのではないかと。47人もが夜中に江戸をどかどか歩けば気づかないはずがないと思うんですよね。そうした時に、シナリオをお書きになった中島丈博先生が提案されたのは、吉良が死ぬ時に大石内蔵助に“本当に仇と思ったのか”と聞くのがいいと思うとおっしゃったので、僕も“それはいいと思います”と。そうしてあのようなシーンになったんです」

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 討ち入りの日、四十七士に取り囲まれた吉良は自ら「大石内蔵助に会わせてほしい、聞きたいことがある」と言い、内蔵助に「みどもをまことの敵と思うてか。まことのかたきと……」と問うて毅然と死を受け入れた。そして話は「べらぼう」に戻る。

 「“吉良”と言うけど、大変だったんだよと思いました(笑)。ただ一つ残念だったのは、あそこで駄洒落として『一本取られたなって』ってそれまで全然触らなかった眉毛の中から毛を1本抜いたんですけど、オンエアではアップで使われなくて。監督が『面白いからアップで撮ります』とおっしゃっていたのに! 眉毛1本損したなって(笑)」と愛嬌たっぷりに恨み節も口にした石坂。これまで犬猿の仲として描かれてきた武元と意次だが、第15回では世継ぎである徳川家基(奥智哉)の死の真相を巡って共闘関係に転じた。意次に「足軽上がり」と辛らつな態度をとってきた武元だが、石坂自身、二人の関係をどう見ていたのか。

 「意次が検校を取り締まり幕府の凋落を防ごうとしたことから変わった、という見方もできるかもしれませんが、私はそれだけではないと思っています。武元は再三、“足軽上がり”と言っていますけど、それはそういう仕組みの中なんだと。意次に反発しているのではなく、言いつのって彼に教えているというか。第15回で武元が意次に最終的に言いたかったのは志は一緒なんだと。今回の事件でよくわかったということが言いたかった。ただ、そこに至るまでにこれまでの(確執の)経緯を語るので、一貫して流れないんですよね。凝った脚本だと思います。森下さんには“第15回楽しみにしていますから”とプレッシャーをかけられましたので一生懸命やりました(笑)。これまでは大体、意次と同等にしゃべっていたのですがこのシーンでは意次はあまりしゃべらないので謙さんは“私は楽ですよ”とおっしゃっていました(笑)。あまり怯えてはいかないつもりだともおっしゃっていて、事前にそうした打ち合わせをしました」

 印象に残っているシーンは、やはり意次と対峙する場面で、武元が長い火鉢に字を書くシーンを挙げた。「意次が“世の中は金だ”というようなことを言った時に、武元が嫌みとして火鉢の中に大きく“金”と書いているんです(笑)。別のシーンでは“馬”と書く場面もあってそこはカットされましたが、私と謙さんだけ勝手にウケていました」と笑い、渡辺との絆をうかがわせた。(編集部・石井百合子)

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