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『新幹線大爆破』実は樋口監督もチラ見え 不可能を可能にした伝統のアナログ技術

そのままでは撮れない画角を実現させた“伝統芸能”
そのままでは撮れない画角を実現させた“伝統芸能”

 伝説的パニック映画としていまだ多くの映画ファンに支持されている傑作をリブートした樋口真嗣監督作『新幹線大爆破』がNetflixで配信中だ。爆弾を仕掛けられた新幹線を舞台にした本作は、車内で繰り広げられる緊迫の人間ドラマと大爆破のスペクタクルを盛り込んだ正統派のパニック映画。伝統的な職人技から最新テクノロジーまで多彩なテクニックが盛り込まれている。アナログとデジタルを組み合わせた映画の裏側を樋口監督が語った。(取材・文:神武団四郎)

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 新青森発東京行きのはやぶさ60号に、時速100kmを下回れば爆発する爆弾が仕掛けられていることが発覚した。やがて事態は公になり、車内はパニック状態に陥っていく。車掌の高市(草なぎ剛)や藤井(細田佳央太)、運転士・松本(のん)らが対応に追われる中、事件は大きく進展する……。

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 JR東日本の特別協力のもと製作された本作は、実際のはやぶさの車両で撮影が行われた。本物ならではのリアルさを持つ一方で、壁を外すなど自由度の高いセットと違って撮影には苦労もあったという。特に制作チームが頭を悩ませたのがキャラクターの動線。劇中では人々が頻繁に通路を行き来するが、多くの撮影機材が持ち込まれた車内での動線確保は大きな課題だった。「座席の回転機能を利用したんです。たとえばエキストラさんがフレームから外れたら、グリップ(特機部)さんが通り抜けしやすい角度まで瞬時に椅子を回すんです。現場では伝統芸能と呼んでいます。『これ伝統芸能でやるから』という感じですね」と樋口監督。ほかにもスクワットのような体勢で何もないところで座ったふりをして、カメラを振ったら移動する“空気椅子”も多用した。

 もうひとつ問題になったのが監督の居場所。俳優やエキストラの動線のほか、監督が立つ場所が確保できない。通常はセットの外に置いたモニターにカメラの映像を映して確認するが、細かい指示を出すために樋口監督は座席に座ることにした。「仕方ないので、スクリプター(記録係)の女性とふたりで、映り込んでもよいように扮装して座席でモニターや芝居を見てました。カチンコを持った助監督も誰だかわからないよう変装して紛れてましたが、みんなしっかり画面に映っています(笑)」

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 スリルを織り上げるため車内シーンには移動撮影も取り入れられた。「座席の上の荷物棚にレールを作り、通路をまたぐようにアームを張り出したカメラ台を作って、座席の上を移動撮影しています。ただしレールがあるためトランクなど大きい荷物が乗せられないことに途中で気づき、お土産の紙袋など小さい荷物でごまかしました」と樋口監督。「映画の現場は意外とハイテクじゃないんですよ」と工夫で乗り切った舞台裏を明かしてくれた。

 オリジナル版ではイメージ映像として使われた新幹線の爆破シーン。特撮監督出身でスペクタクル描写に定評のある樋口監督らしく、今作では新幹線など列車の爆発がドラマに組み込まれ、迫真のスペクタクルが味わえる。「破片がわかる爆破カットはミニチュアだと思ってください。爆破は基本ミニチュアを使っています。新幹線の併走シーンもミニチュアを撮影して加工したり、CGのみで作るカットもリファレンス(参考資料)のために大部分は撮影しました」と樋口監督。ミニチュアは1/6スケールという破格のスケールで、その迫力も本物級だ。

 ミニチュアを爆破するアナログ手法とデジタルを組み合わせたアプローチについて、樋口監督は完成形からの逆算で決めるという。「欲しい画を手に入れるためなら、手段は選ばないということです。最新技術を使いたいとかアナログが好きという考え方もあると思いますが、自分の中ではどんな画が欲しいかを先に決めてやり方は何でも良い、という部分はありますね。もちろん予算には限りがありますから、現実的な落としどころの中で、これはCGで大丈夫だろうとか、そういう判断はこれまでもずっとしてきてますからね」。イメージに合わせ最善の手法を使い分ける樋口監督のスタンスが、スペクタクル映画として蘇った『新幹線大爆破』に一層のリアリティをもたらしたようだ。

Netflix映画『新幹線大爆破』は世界独占配信中

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