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【微ネタバレあり】名探偵コナン『隻眼の残像』の重要ポイント徹底解説

何度も観たい!
何度も観たい! - (C) 2025 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会

 2023年の第26作『名探偵コナン 黒鉄の魚影(くろがねのサブマリン)』でシリーズ初の興行収入100億円突破を成し遂げ、続く第27作『名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)』では最高興収となる158億円を記録した劇場版『名探偵コナン』シリーズ。4月18日に封切られた第28作『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』では、なんと初週3日間で34億円超という歴代ナンバーワンヒットスタートとなった。ゴールデンウィーク興行でさらなるヒット&盛り上がりを見せている『隻眼の残像』がもっと楽しめる! ファン目線の重要ポイントを“微ネタバレあり”で解説する。

【画像】コナンくんと一緒に“長野巡礼”

敢助と由衣の恋のシーンはコナン史上屈指の大人な雰囲気に

 近年の劇場版『名探偵コナン』シリーズの成功の要因の一つには、原作とのリンク強化に伴うキャラクターのさらなる掘り下げが挙げられる。しかもそのサービス精神が半端ではなく、『黒鉄の魚影』では灰原哀の過去が明かされ、『100万ドルの五稜星』では怪盗キッドの衝撃的な秘密が判明。原作者・青山剛昌が脚本から絵コンテまで密に関わっているためなせるワザだが(原作者描き下ろしの“青山原画”は本シリーズの風物詩。今回もかなりのカットを担当している)、本作では長野県警トリオにフォーカス。ある事件の捜査中に雪崩に遭い、隻眼&つえ必須になった大和敢助の“あの日”に踏み込む、原作の点と点をつなぐ話になっているのだ。しかも匂わせ程度でなく、がっつり過去エピソードとリンクする物語が展開される。ファンの期待にしっかりと応えてくれる濃密な内容になっている。

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 また、敢助の幼なじみ、上原由衣との複雑な恋模様も見逃せない。“劇場版コナン史上、最も大人なシーン”との呼び声高い、沈黙と間(ま)をたっぷり取った車中のやり取りは、実に新鮮だ。原作者・青山いわく「殺人ラブコメ」である『名探偵コナン』のラブ表現が新たなフェーズに入ったことを感じさせるが、クライマックスからフィナーレに至るまで2人の見せ場が何個も用意されており、しっとりした静と劇的な動の両面、さらに婉曲と直接のダブルの恋の駆け引きで魅せる。由衣の過去の覚悟と、とある人物の心情がリンクする演出も絶妙だ。

高明のかつてない表情、原作の過去エピを網羅する離れ業

 そして、敢助のライバル・諸伏高明も大活躍。水と油の関係に見えて実は無二の親友である両者の絆のドラマ(今回は口ゲンカはせず信頼感バッチリ)、さらには「高明といえば……」なシーンも網羅。常に冷静沈着でポーカーフェイスの彼がこれまで見せたことのないような表情をする姿も捉えており、先の由衣然り、ファンが望むものをそれ以上に盛り込んでくれているのだ。

 さらにコアなポイントを挙げるとするなら、高明と佐藤&高木刑事が遭遇した際のあいさつにも要注目。『名探偵コナン』シリーズは各キャラクターの関係性がキーの一つだが、劇場版でも細かい部分までケアが行き届いている。証人保護プログラムにまつわる灰原の描写や、蘭と高明の故事成語コンビ、蘭が園子に恋の軍略を授ける描写も同様で、原作の既出エピソードを見事に引用している。蘭の携帯電話や灰原のスマホのストラップ、風見裕也のコーヒーやスマホの待ち受けにも個別のエピソードがあり、一瞬しか映らない小道具にも作品愛が行き届いている。

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小五郎とコナンの“探偵同士の会話”にシビれる

 『黒鉄の魚影』で灰原が拉致されて阿笠博士がこれまでにないほど動揺し、大粒の涙を流すなど初期メンバーの新たな一面が見られるのもファンにはうれしいところ。今回は、やはり毛利小五郎の予想以上の獅子奮迅ぶりがたまらない。これまでも第2作『名探偵コナン 14番目の標的(ターゲット)』や第9作『名探偵コナン 水平線上の陰謀(ストラテジー)』ほか“小五郎回”はあったが、近作でも見せ場はあるものの全編出ずっぱりなのは久々。第25作『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』では灰原をかばった結果、負傷退場してしまうなど雄姿を見せていたものの、コアファンにとっては小五郎メインの本作は「待ってました!」状態であろう。

 詳細は観てのお楽しみということで簡単な説明に留めるが、「近しい人物が絡むと推理力が爆増する」特徴をしっかりと抑えつつ彼の新たな過去エピソードを絡め、アクションパートでも大車輪の活躍を見せる。これまで以上にコナンを保護者として守ろうとする部分も強調されており(「ついてくんな、遊びじゃねえんだ」のセリフはもちろん、雪山で後続のコナンが危なくないかさりげなく振り返るなど細部に至るまで徹底している)、とある対話シーンも普段とは一味違う「探偵同士のかけあい」の雰囲気が漂う。2人の本作ならではの関係性も胸を熱くさせる(余談だが、あるシーンのカット割りが『14番目の標的』と酷似している遊び心も……狙ってやっているとしたら最高である)。

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蘭と灰原、少年探偵団の歴史を感じる成長ぶり

 また、コナン&小五郎×長野県警トリオはもちろん、蘭×元太×光彦の3人が犯人と対決する珍しい組み合わせを拝めるのもうれしいところ。自分の身をかえりみずに他者を助けようとする姿は第6作『名探偵コナン ベイカー街(ストリート)の亡霊』とも重なるし、同じ雪山映画である第15作『名探偵コナン 沈黙の15分(クォーター)』では仲たがいしてしまいコナンにいさめられた元太と光彦が共闘するパートを用意しているのは、流石としか言いようがない。シリーズの歴史と照らし合わせた際の一貫性がしっかり感じられるのだ。

 さらにコナンが蘭と“共犯関係”を結んで一芝居打ったり、コナンと灰原の阿吽のコンビが今回も活躍したりするのもテンションが上がるポイントだ。第5作『名探偵コナン 天国へのカウントダウン』時点ではコナンや少年探偵団に対して遠慮があった灰原が、第24作『名探偵コナン 緋色の弾丸』ではコナンの頼もしい相棒に成長しており『黒鉄の魚影』に繋がったわけだが、そうした軌跡を見事に辿っている(蘭と灰原が談笑するシーンも然り)。なお、蘭がコナンに結んであげるマフラーの色は赤。トレードマークである蝶ネクタイとリンクさせる気配りはもちろん、第1作『名探偵コナン 時計じかけの摩天楼』を思い出したファンもいるはずだ。

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刑事もののツボを押さえたアクション×ミステリー

 キャラ描写のみならず、推理もの×アクションエンタメとしての見ごたえにもさらなる進化が感じられる。雪山が舞台といえば『沈黙の15分』とかぶるのでは? という心配は杞憂で、冒頭の雪崩シーンから映像のクオリティー&音響演出がすさまじい。敢助を狙うライフルの銃口のアップ、ワニこと鮫島警部がゴミを捨てる際のアングル、あえてスケボーの車輪部分に寄った煽りのカットなどなど、カメラの配置や構図においてもセンスが際立っている。カーチェイスと銃撃戦という刑事ものの武器を強めているのも印象的で、劇場版コナン史上最大規模で発砲シーンが多い作品となったが、各場面にそれぞれの刑事の癖がきっちり出ている。さらにクライマックスでは、天文台の巨大パラボラアンテナを使った超ド級のアクションが展開。コナン×アンテナという意味では第21作『名探偵コナン から紅の恋歌(ラブレター)』を想起するファンもいるだろうが、本作ならではの見せ場に仕上がっている。また、劇場版名探偵コナンシリーズといえば第3作『名探偵コナン 世紀末の魔術師』の頃から新たな探偵グッズが導入されるのもお家芸だが、今回はトレッキングシューズが登場。過去作からの踏襲と差異を両立させている。

 そこに絡んでくるのが、「相棒」「科捜研の女」シリーズも手がける脚本家・櫻井武晴ならではの捜査ものとしての面白さ。司法取引や証人保護プログラム、PIII(高度警察情報通信基盤システム)、他国との情報戦といったワードが入り乱れ、検察や公安(隠れ公安)、内閣情報調査室といったさまざまな組織の人間が次々に登場する分厚いストーリーが展開する。雪山で起こった事件が日本全土に影響する事態になっていき、罪に対するシリアスなドラマにも言及している。『ハロウィンの花嫁』では憎しみの連鎖をどこで断ち切るかが描かれたが、その部分も引き継ぎながら少年が武器を持った大人に立ち向かう恐怖心をさりげなく忍ばせているのも上手い。単に痛快な娯楽作で終わらない深みも、劇場版『名探偵コナン』シリーズが長く愛されている所以だろう。

 今回挙げた魅力は、あくまで『隻眼の残像』の一部分にすぎず、ほかにもさまざまな仕掛けが施されている。なお来年は、待望のあのキャラクターが劇場版初登場となる見込み。原作&テレビアニメ30周年を超え、コナンフィーバーはまだまだ上昇していくことだろう。(文・SYO)

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