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大盛況の「ハリー・ポッター」舞台手話通訳付き公演はこうして行われた!

「ハリー・ポッターと呪いの子」舞台手話通訳付き公演より
「ハリー・ポッターと呪いの子」舞台手話通訳付き公演より

 舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」の舞台手話通訳付き公演が5月17日、24日に行われ、両公演とも舞台手話通訳対象席が完売する盛況を見せた。

【画像】「ハリー・ポッターと呪いの子」舞台手話通訳付き公演の様子

 本作の舞台手話通訳付き公演の実施が決まったのは2024年7月。舞台手話通訳を務める田中結夏江副悟史、手話監修の森田明と打ち合わせを重ね、約3か月の準備・稽古を経て、本番を迎えた。舞台手話通訳は、講演会等の通常の手話通訳とは表現方法が異なり、登場人物の性格や雰囲気、演技を手話通訳に反映させることが求められる。台詞を手話で表すのみでは伝わらないため、観客が感情移入できるような表現の工夫が必要となり、すべての台詞を訳すと時間が足りない場合は、複数人のシーンにおいては1人のセリフの通訳に絞りながら、相手のセリフを受けているようなリアクションなども取り入れる「ミラー通訳」という手法を使用することも。

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 また、役の名前についても指文字で表現するだけではなく、役によってはサインネーム(手話で表現するあだ名)を設定。主人公ハリー・ポッターの場合は、額の傷を表すような仕草がサインネームとなる。さらに魔法や架空の物の名前の表現についても検討を重ね、5月に入ってからは通し稽古を複数行い、本番に備えた。

台本には付箋がたくさん!

 ロビーや客席では手話通訳スタッフが案内をサポートし、場内アナウンスの際も手話通訳を実施。字幕機器の貸し出しスペースも設け、筆談ボードやコミュニケーションボードも追加設置して対応。本番中は、舞台に向かって左側のエリアに舞台手話通訳対象席を設け、客席エリアに設置した台の上で舞台手話通訳を行った。通訳者はキャストが着用している衣裳と同じグリフィンドールのローブを着用。また、舞台手話通訳対象席の一部に設けた“抱っこスピーカー対象席”では、持参したスピーカーを音響機器と接続し、音の振動も楽しめるようになっている。

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 カーテンコールでは、ハリー・ポッター役の吉沢悠が手話で通訳者を紹介し、最後は出演者全員が手話で挨拶した。観客からは「臨場感があって楽しめた」「字幕機器だけだと感情を追えないので、舞台手話通訳のおかげで感情移入できた」などの感想が寄せられたという。

 舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」は、小説「ハリー・ポッター」シリーズの作者であるJ.K.ローリングが、ジョン・ティファニージャック・ソーンと共に舞台のために書き下ろした「ハリー・ポッター」シリーズ8作目の物語。小説の最終巻から19年後、父親になった37歳のハリー・ポッターとその息子・アルバスの関係を軸に描かれる。世界中で多くの演劇賞を獲得し、国内でも第30回読売演劇大賞の選考委員特別賞、第48回菊田一夫演劇大賞を受賞している。

 舞台手話通訳者のコメント全文は下記の通り。(石川友里恵)

田中結夏

 舞台手話通訳者・手話通訳士・俳優。これまでにミュージカル「SIX」、ミュージカル「アニー」など20作品以上の舞台手話通訳を担う

 「本作品の舞台手話通訳付き公演は日本では前例がないため、それぞれのキャラクターのサインネーム(手話で表現するあだ名)や、劇中で使用される固有名詞、呪文等のより良い表現を求めて、ペアである江副さんや手話監修の森田さんと共に何度も検討を重ねました。お客様の「ハリー・ポッター」シリーズの知識量には個人差があるので、マニアの皆様も初見の皆様にも楽しんでいただけるような翻訳のレベル感をチーム内で一致させることも重要なポイントでした。作品や出演者の皆様を好きになっていただきたい一心で通訳しているので、お客様のこれからの観劇体験に繋がるきっかけになればとても嬉しいです。2025年に入ってからは舞台手話通訳付き公演をご覧くださるお客様の人数自体が圧倒的に増えたことを実感じ、背筋の伸びる思いでいっぱいです。引き続き、より良い舞台手話通訳のかたちを追求し、お客様に心から作品を楽しんでいただけるようなアクセシビリティとなるよう、一つ一つ課題と向き合ってまいります。

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江副悟史

 俳優。日本ろう者劇団代表。株式会社エンタメロード代表取締役

 「ハリー・ポッター」はファンが多いので、呪文はどう表現するのか、それぞれのキャラクターをどう演じていくのか、本作品ならではの名言(教訓)もきちんと解釈を理解し、どう手話で表現していくか、田中さんと監修の森田さんと一緒にかなり悩みました。準備がとても大変だったので、終えた時はまず、「はぁ…楽しかったぁ」と思いました(笑)。お客様から多くの拍手をいただいた時は、舞台関係者皆の、「ろう者のお客様にも楽しんでもらいたい」という思いが一つの形になったことを実感し、感謝の気持ちでいっぱいになりました。今年、大きな舞台で相次いで舞台手話通訳が実現し、ろう者のお客様から「楽しかった!」「手話で見て楽しめるっていいね!」などの言葉をいただけて、幼い時、「(ろう者が)もっと楽しめる時代がいつか来ると信じて」と励まされた記憶を思い出しました。まだ障がいのある観客が100%楽しめる時代とは言えないと思いますが、ようやくスタートラインに立てたかなと思います。

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