実写版『リロ&スティッチ』スティッチのキュートな動きに日本人アニメーターの貢献

実写版『リロ&スティッチ』(公開中)でキャラクターアニメーターを務めたインダストリアル・ライト&マジック(ILM)の島田竜幸がインタビューに応じ、CGのスティッチをはじめとした人気キャラクターたちにどのように命を吹き込んでいったのか、そのこだわりを明かした。
撮影ではリロ役のマイア・ケアロハはスティッチのパペットなどを相手に演技をしているが、パペットなどをCGのキャラクターに置き換え、そのCGを動かしていくのが島田らキャラクターアニメーターたちの仕事だ。実写とCGのハイブリッド作品ということで、もともとの2Dアニメーションのスティッチらしさを受け継ぎつつ、実写から浮いてしまわないようにする必要があった。
島田は「動物みたいなリアル寄りの動きにするのか、それともアニメーション作品の時のようなカートゥーンっぽい、すごくキビキビした動きを残すのかというそのバランス具合を探るのが面白いところでもあり、難しいところでもありました」と振り返る。「アニメーターは動きを研究するのも仕事」だといい、子犬や猫、ねずみといったリアルな動物の動きも確認しながら、“完璧な丸”にもなるスティッチならではの動きや表情、耳の角度などはオリジナル版のアニメーション映画を参考にバランスを探っていった。
「俳優さんたちはリアルな人間で、舞台もリアルな世界。ライティングによってルックとしてはすごくリアルに見えるCGのキャラクターたちも、あまり誇張しすぎると、俳優さんたちの動きとの違いが大きすぎてちょっと浮いてしまうんです。“画的にはマッチしてるけど動きが浮いてしまう”ということが起こり得るので、そこのバランスを見るのが難しい挑戦でした。でも結果的には、割とカートゥーンっぽい動きをキープできました。個人的にはそっちに寄せたかったので、よかったです。せっかく元の作品がすごくいい作品なので、あまりリアルな動きに寄せちゃうっていうよりは、元のオリジナルな動きをキープしたいと思っていたので」
スティッチのカートゥーンっぽい動きを再現するにあたっては、テスト段階での島田の貢献もあった。「スティッチがくるっと丸まって玉になる瞬間も、2Dアニメーションだったらただ丸を描けばいいのですが、CGのキャラクターには関節も手足もある。関節を丸めていってもなかなかきれいな丸にはならないので、それをCGで表現できるのかが微妙なところだったんです。ですが、僕がこのプロジェクトに入った段階で、ちょっと遊びで作ってみたものをチームやスーパーバイザーで見せたら、『この表現ってCGでもできるんだな』って言ってもらえた場面があって。もう関節をぶっ壊して中に押し込んじゃうって感じの、“変形させる”っていう作業をしました。結果的に(本編での)そのショットは僕が担当したわけじゃないんですけど、テストの段階でこういう動きができるっていうのを探るのも面白い時間でした」
島田はスティッチだけでなく、プリークリーやジャンバといったCGキャラクターも担当している。「最後の方、スティッチが宇宙に帰らなきゃいけないけど……という場面でのプリークリーのショットをいくつか担当しています。飛んだり跳ねたりわちゃわちゃうるさいキャラクターなので(笑)、それをそのままCGにしたらちょっと激しすぎるんじゃないかというのがあり、一旦落ち着いてリアルな感じになったんです。ですが、最終的にはやっぱりもっと動きを強調して、元々のアニメーションの作品にあったような生き生きしたカートゥーンっぽい動きにしようとなり、そうして作ったショットがいくつかあるので、そこは見てほしいです。跳んだり跳ねたり、くねくねしてます(笑)」と日本の観客にアピールした。
幼い頃に父親とビデオで観た『スター・ウォーズ』によってSFジャンルが好きになり、小学生の頃には『ジュラシック・パーク』や『トイ・ストーリー』の1作目が公開されて、すっかりCGの世界に魅せられたという島田。『スター・ウォーズ』や『ジュラシック・パーク』を手掛けたILMには「何度も挑戦してやっと入った」のだという。そしてこのインタビュー時に取り組んでいたのは、『ジュラシック』シリーズ最新作の『ジュラシック・ワールド/復活の大地』だ。「すごく、すごくうれしいです」と顔をほころばせた島田の、夢の職場での活躍はまだまだ続く。(編集部・市川遥)


