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指名手配犯・桐島聡描く映画で“世界を沈黙させるようなジョーク”

桐島聡容疑者を演じる毎熊克哉
桐島聡容疑者を演じる毎熊克哉

 俳優の毎熊克哉が5日、新宿武蔵野館で行われた映画『「桐島です」』(公開中)公開記念舞台あいさつに出席し、劇中で発したギャグが「世界一つまらないジョーク」と共演者の甲本雅裕にいじられるひと幕があった。この日は毎熊と甲本のほか、北香那海空高橋伴明監督も来場した。

【画像】高橋伴明監督の孫・海空も登壇!

 本作は、1970年代に発生した連続企業爆破事件に関与した疑いで指名手配され、約半世紀にわたる逃亡の末、2024年1月に死亡した桐島聡容疑者の足跡をたどる実録ドラマ。映画上映前、ステージに現れた毎熊は「撮影から1年がたちまして。いよいよ公開が始まりました。この映画、言い方が難しいんですが“めっちゃ面白いから観に来てよ”っていうような映画ではない……と言ったら失礼かもしれないんですが、この映画がどんな風に観られていくのか。出た僕ですらまったく想像がつかないので。ドキドキしながら過ごしていました」と語ると、満席の観客を見渡し「(初日から)2日間、こうやって満席で。ちらほら『良かった』といった声も聞こえたような気もしていたので、ちょっと安心しつつ。この映画がどういう風になっていくのか、すごく楽しみにしています」とあいさつ。

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 本作の予告編でも使用されているシーンとして、銭湯で桐島がジョークを発し、それに対して甲本演じる“隣の男”が何ともいえない表情でリアクションする、というやり取りがあった。そのシーンに対して甲本は「役者ですから、シーンに入る前に色んなことを考えて現場に行くんですけど、シナリオでは毎熊くん演じる桐島と対峙(たいじ)して話をしている時に『笑えないな』って言葉で返すはずだったんです。でもそのジョークを聞いてる時に、何かとてつもなくつまらないジョークというのは、世界を沈黙にするんだと思って。それでちょっと声も出さず、ただうなずいたんです」と述懐。

 シナリオと違う流れになったことに対して高橋監督はどう言うのかと思ったところ、ジーッと毎熊たちを見た上で「この男はもうしゃべらないから。そのしゃべらない彼を見て、桐島がリアクションしてくれ」と演出をしたという。「ホッとしました。『お前、なんでセリフを喋らないんだ』って言われたらもう、えらいことになるんで。でもその辺は監督が本当に見てくださってたんで。伝わってよかったと思いました……ただ桐島は、本当に世界を沈黙させるような、つまんないギャグを言うんですよ」としみじみとたたみかけた甲本に会場は大笑い。

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 対する毎熊は「世界を沈黙させるようなつまらないジョークだったかどうかは、聞いた人が決めるなと思って。あれは『つまらないな』という言葉よりも、つまらなかったんだろうなと。だから甲本さんのリアクションで生まれたものなんだろうなと思います」と述懐。甲本は最後まで「桐島は本当に面白いと思って言ってたのかな……?」と首をかしげることしきりで、会場を大いに沸かせた。

 本作では、高橋伴明監督、高橋惠子夫人の孫となる海空が俳優デビューを果たしている。出演の経緯について海空は「まず、わたしに俳優を目指したいなという気持ちがあって。その話を聞きつけた祖父からは『ちょっとこういう役があるんだけど出てみない?』と言ってもらったんですが、わたしの心境としては、事務所にもまだ所属してない状態でしたから。そこをスキップして出演するのは申し訳ない気持ちもあるし、ちゃんと俳優として(キャリアを)積み重ねて。立派な俳優になれたら作品に出たいですと。丁寧に断りを入れたんです」と説明。しかし、それでも高橋監督はあきらめることなく、海空に対して3回ほどにわたって猛烈なオファーを出し続けたといい、海空は「それを聞いて、単に家族だからオファーしてくれているんじゃないんだな、というのも感じたのですが、わたしの心がつかまれたというか、やらなきゃと思った理由が、『俺はいつまで生きてるかわからないから』と祖父から脅されたこと。じゃ先延ばしにしちゃだめだ、と思って。そこで決心をつけました」と出演に至るまでを振り返った。

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 劇中では、桐島に「桐島くんさ、時代遅れだと思うよ」と言い放つヨーコを演じる海空だったが、それは若き日の高橋監督が、当時の恋人から実際に言われた苦い思い出も投影されていることが明かされた。海空も「それはまったく知らなくて、今ここで初めて知りました。もともと晩酌を一緒にしていて。昔の恋バナとかをけっこう聞き出したいタイプなので、祖父がどんな風に告白したとか、そういう時代の話は聞いていたんですけど、その“時代おくれ”というワードは初めて知りました」と驚いていた。(取材・文:壬生智裕)

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