妻夫木聡、生放送中に号泣…映画『宝島』とは?

28日に放送されたNHKの情報番組「あさイチ」(総合あさ8:15~)「戦後80年 妻夫木聡のもっと知りたい沖縄」では、沖縄戦を描いた一枚の絵画にゲストの妻夫木聡が号泣する一幕があり、大きな反響を呼んだ。同番組内で紹介されていたのが、妻夫木が主演を務める映画『宝島』。約1か月半後に公開を控える本作の内容をあらためて振り返ってみた。
26歳の時に主演を務めた映画『涙そうそう』(2006)など、沖縄とゆかりの深い妻夫木。現在放送中の連続テレビ小説「あんぱん」では日本軍の八木上等兵を演じたこともあり、戦争のこと、そして大きな犠牲を払った沖縄について学び、多くの人に伝えたいと考えるようなったという。番組内では『涙そうそう』の撮影時に知り合った人たちと再会する様子、沖縄市のコザ名物のソウルフードや、伝統の踊り「エイサー」に親しむ様子が映し出されたが、とりわけ反響を呼んだのが宜野湾市の佐喜眞美術館を訪れたときのこと。
妻夫木が見入ったのが丸木位里さん、俊さんが沖縄戦を描いた連作絵画の一枚で横幅7メートルの「チビチリガマ」(1987)。アメリカ軍の上陸を恐れて洞窟に逃げ込んだ住民たちの様子を描いたもの。米軍に捕まると殺されると信じた人たちが集団自決に追い込まれ、絵画には毒薬を注射しようとする看護師、愛しい我が子の命を奪おうとする母親らの姿が。85人が犠牲となり、その半数が子供たちだったという。
美術館で妻夫木は、声をつまらせながら「初めてこの絵をみたとき、本当に知っていないといけないことを知ったというか、本当の意味で声を聞いたというか。文献をみて知るだけじゃダメなんだなっていう。こういうことがあったと見ていると感じてわかっていたつもりになっていたんじゃないか、自分が……」と沖縄戦で犠牲になった人々に思いを馳せ、スタジオでコメントを求められた際にも涙した。
「沖縄の親友が…」と切り出そうとするものの涙で言葉にならず、「連れて行ってくれたんですけど、沖縄戦の図は戦争の現実なんですよね。実際に。親が子を、夫が妻を……若者が年寄りを手にかけて……。そういうことがつい80年前まで起こっていた。絶対知っていないといけないし、忘れちゃいけないし、これからも考えていかなければならない。こんなこと二度とおこしてはいけない。初めて声にならない声を聞いてしまったんですよね。沖縄のことを学んでいくなかでどこか感じることを忘れていた自分がいて。どこかわかっているつもりになっていたんじゃないかって。絵に言われた気がして」と自身を戒めると同時に、視聴者に呼び掛けた。以降も涙が止まらない様子で、妻夫木の真摯な思いに心を揺さぶられた視聴者から多くのメッセージが寄せられていた。
番組内では、1970年12月20日にアメリカ施政権下の沖縄のコザ市で人々が怒りを爆発させた「コザ暴動」も登場する映画『宝島』にも言及。真藤順丈による直木賞受賞小説を、『るろうに剣心』シリーズなどで知られる大友啓史監督が実写映画化するサスペンスで、アメリカの支配下に置かれた沖縄を舞台に、“戦果アギヤー”(米軍基地に忍び込んで物資を奪う者たち)のリーダーで人々の希望の光だった英雄の失踪を軸にした物語が展開する。
広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら豪華キャストが集結し、妻夫木は失踪した英雄“オンちゃん”(永山)の行方を追う刑事のグスク役で主演。妻夫木は本作を多くの人に届けたい一心で、物語の舞台となる沖縄を皮切りに静岡、愛知、富山、長野、大阪、福岡・北海道、宮城・岩手、広島と全国を大友監督と共に駆け巡っている。(編集部・石井百合子)


